

米国の航空宇宙企業Stavatti Aerospaceはアメリカ海軍が2030年代以降の主力艦載戦闘機として開発を進めている「Next Carrier Air Dominance(NCAD)」、通称F/A-XX計画を巡り、極めて独創的な次世代戦闘機コンセプト「SM-39 Razor(レイザー)」と名付けられた艦載戦闘機のコンセプト発表した。
NCADは、F/A-18E/Fスーパーホーネットおよび電子戦機E/A-18Gグラウラーの後継を想定した計画で、単なる新型戦闘機ではなく、無人機との協働運用(CCA)、高度なステルス性、長大な作戦半径、そして中国やロシアのA2/AD(接近阻止・領域拒否)環境を突破する能力が求められている。この計画の主要候補と目されているのは、ボーイングやノースロップ・グラマンといった防衛大手だが、Stavattiはそれらとは一線を画す設計思想でNCADに挑戦状を叩きつけた形だ。


SM-39 Razor


SM-39 Razorで最も目を引くのは、その三胴式(トリプル・フュージラージ)構造である。中央胴体の左右に細長い補助胴体を配置することで、超音速・極超音速域で問題となる波動抵抗(ウェーブドラッグ)を低減し、高速巡航と航続距離の両立を狙うという。ステルス性を重視したブレンデッド形状と内部兵装庫の採用も想定されており、従来の艦載機とは全く異なるシルエットを持つ。
性能面では、最高速度マッハ4級という極めて野心的な目標が掲げられている。さらに、アフターバーナーを使用しない状態でマッハ2.5前後を維持する「スーパークルーズ能力」も構想されており、これは現行の第5世代戦闘機を大きく上回る水準だ。エンジンは可変サイクル型ターボファンの双発とされ、戦術作戦半径2200km以上の長距離侵攻、高速迎撃、制空戦闘を単一機体でこなす「艦載制空プラットフォーム」としての運用が想定されている。またStavattiは、SM-39を単座型だけでなく、複座型や無人運用型への発展も視野に入れていると公表している点も特徴的だ。これは米軍全体で進む「有人・無人チーミング」構想と一致しており、将来の空母航空団において、指揮・管制ノードとして機能する可能性を意識した設計といえる。
一方で、このSM-39 Razorはあくまでコンセプト提案段階に留まっている点には注意が必要だ。現時点でStavatti AerospaceがNCADの正式な開発競争に参加している、あるいは米海軍から研究契約を獲得しているという情報は確認されていない。提示されている性能値やコスト(1機あたり約8500万ドルとされる)についても、実現性には大きな疑問が指摘されている。それでもSM-39 Razorのコンセプトは、NCADが単なるF/A-18の後継ではなく、艦載航空戦力の概念そのものを再定義する計画であることを改めて印象づける。
