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ベネズエラ作戦で注目のRQ-170無人機!イラン鹵獲から15年、米軍“見えない翼”の現在

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SNSより

アメリカによるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領拘束作戦、通称「Operation Absolute Resolve」に投入されたと報じられたステルス無人偵察機「RQ-170 Sentinel(センチネル)」が、再び軍事関係者やメディアの注目を集めている。かつてはビンラディン急襲作戦での投入や、イランによる鹵獲事件で世界的に知られたこの機体は、その後、作戦への投入情報が途絶え、その存在と能力がベールに包まれていた。今回のベネズエラでの動向は、この「見えない翼」が運用配備中であり、現代の戦場に合わせて進化を遂げている可能性を示唆している。

ベネズエラ攻撃作戦への投入

1月3日未明に実行された、アメリカ軍によるベネズエラ攻撃およびマドゥロ大統領拘束作戦には、述べ150機以上もの航空機が投入された。その中で、公式の発表こそないものの、「RQ-170 Sentinel」が含まれていた可能性が高いと見られている。その根拠となっているのが、作戦終了後にプエルトリコの米軍基地に帰還するRQ-170の姿が地元住民によって目撃され、写真や動画に収められたことである。作戦のタイミングと場所を鑑みると、この機体がベネズエラでの高度な偵察任務に投入されていたと考えるのが、妥当だ。

RQ-170 Sentinelとは

SNSより

RQ-170センチネルは、アメリカの航空宇宙企業ロッキード・マーチン社の極秘開発部門である「スカンクワークス」が開発を担当した、先進的なステルス無人偵察機(UAV)である。2000年代半ばから運用が開始され、その存在は長らく秘匿されていたが、アメリカ空軍は2009年12月に初めてその運用を公式に認めた。最大の特徴は、その独創的な機体設計にある。

RQ-170は垂直尾翼を持たない、翼全体が揚力を生む「全翼機(フライングウイング)」の形状を採用している。この設計は、レーダー反射断面積(RCS)を極限まで小さくし、敵の高度な防空システムからの探知を困難にする。これは、大型ステルス爆撃機であるB-2や次世代ステルス爆撃機B-21といった、米軍の主要なステルス航空機に通じる設計思想である。
RQ-170は通常、兵装を搭載しない非武装機として運用される。その役割は、攻撃そのものではなく、敵の最も防御された地域深くに侵入し、「目」となって情報を収集することに特化している。RQ-170に搭載されているとみられるセンサー群は、以下のような高度な情報収集能力を提供する。

高解像度の電気光学/赤外線(EO/IR)センサー: 昼夜を問わず、高精細な画像・映像を収集する。
合成開口レーダー(SAR): 雲や煙を透過し、地上にある目標物の詳細なレーダー画像を生成する。移動目標の探知も可能とされる。
SIGINT(信号情報)/ELINT(電子情報)装置: 敵の通信信号やレーダー波などの電子信号を傍受・分析し、指導部の動向、防空網の配置、部隊の活動状況をリアルタイムで把握する能力を持つ。

これらの情報を統合することで、RQ-170は、高度な脅威環境下での戦況把握や目標設定において、比類なき価値を発揮する。しかし、航続距離、最大飛行時間、巡航速度といった具体的なスペックは、その軍事機密性の高さから一切公開されていない。

過去の作戦投入と鹵獲

RQ-170の歴史において、その存在が公に認識された作戦と、その能力が疑問視される事件が二つ存在する。

オサマ・ビンラディン殺害作戦(2011年)

RQ-170の投入が初めて公に疑われたのは、2011年5月に行われたオサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦(ネプチューン・スピア作戦)の前後のことである。ビンラディンが潜伏していたパキスタンの高リスク地域上空で、謎の無人機が目撃されたという報道があり、これがRQ-170であった可能性が高いと指摘された。事前偵察任務において、周辺の防空網やビンラディンの潜伏先の詳細な情報を収集したと考えられている。

イランによる鹵獲事件(2011年12月)

RQ-170の名を世界中に轟かせた最大の事件が、2011年12月のイランによる機体鹵獲事件である。イラン政府は、「自国領空を侵犯した米軍のRQ-170に対し、高度な電子戦攻撃を用いて、データリンクを乗っ取り、機体をほぼ無傷の状態で着陸させた」と主張し、鹵獲した機体を公開した。アメリカ側は詳細を認めなかったものの、機体を喪失した事実は認めた。この事件は、米軍にとって深刻な教訓を与えた。

米軍の最先端ステルス技術が無防備な形で他国(イラン)の手に渡ったという事実は、戦略的な打撃となった。当時まだ発展途上であったGPS妨害やデータリンクの乗っ取りといった電子戦技術が、実戦で最先端兵器に対して有効であることが証明され、無人機の運用における脆弱性が露呈した。

イランはその後、鹵獲機を解析し、「リバースエンジニアリングに成功した」と主張。実際に数年後、イランは「シャヘド171」や「シャヘド191」といった、RQ-170と酷似した外形を持つ国産無人機を発表した。これは、少なくともイランが無人機の外形設計や一部の技術要素を参考にした可能性を否定できない。

この苦い経験は、アメリカ軍のその後の無人機開発と運用戦略に大きな影響を与え、
・無人機の通信システムと航法システムの冗長性の確保。
・電子戦環境下における機体の自律性(自律飛行能力)の向上。
・機体が墜落・喪失した際に、機密情報が流出することを防ぐための自己破壊・情報消去対策。

これらが、以降の無人機開発における最優先事項として強く意識されるようになったと見られている。

ベネズエラ作戦における役割と進化の可能性

イランでの事件以降、RQ-170の作戦投入に関する情報はほとんど途絶えていたが、運用自体が停止されたわけではなく、電子戦対策を施した上で、より慎重な形で運用が継続されてきたと考えられている。今回のベネズエラでの作戦への投入は、RQ-170の初期任務の想定と完全に一致する。強固な防空網を持つ国家: ベネズエラはロシア製の防空システムなどを保有しており、通常のアメリカ軍機ではリスクが高い。
リアルタイムな動静把握の必要性: 指導者拘束という時間との戦いになる作戦において、敵の防空網、指導部の居場所、特殊部隊の進路をリアルタイムで把握する必要がある。
短期決戦の要求: 短時間で成果を求められる特殊作戦において、RQ-170のステルス性が最大限に活かされる。
これらの条件から、RQ-170が事前偵察や、作戦中の特殊部隊へのリアルタイム情報提供(ISR:情報・監視・偵察)支援のために投入された可能性が高い。

RQ-170が初飛行してから約20年が経過している。軍事技術の進化は目覚ましく、特に電子戦の分野は急速に進んでいる。今回のベネズエラでの作戦成功が示唆するのは、RQ-170が過去の教訓を活かし、現代の戦場環境に対応した大規模なバージョンアップが施されている可能性である。

耐電子戦能力の強化(Anti-jamming/Anti-spoofing): イラン事件で露呈したデータリンクやGPSの脆弱性に対し、強固な暗号化通信、周波数ホッピング、慣性航法システムとGPSの統合、あるいはAIによる自律航法技術が強化されている可能性が高い。
センサー能力の向上: より広範囲を、より高解像度で同時にカバーできるマルチスペクトルセンサーや、データ処理能力の向上が図られていると考えられる。

今回のベネズエラ作戦の成功裏な完了は、RQ-170 Sentinelが単なる過去の遺産ではなく、現在においてもアメリカ軍の特殊作戦における「切り札」として、その能力と秘匿性を維持し続けていることを改めて世界に知らしめる結果となった。

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