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UH-60ブラックホークを無人機化したS-70UAS U-Hawk

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© 2025 Lockheed Martin Corporation.

ロッキード・マーティン社傘下のヘリコプターメーカーであるシコルスキー社は、2025年10月13日に開催された米陸軍協会の年次イベント「AUSA 2025」において、同社の主力商品であるUH-60Lブラックホークヘリコプターをベースにした新型無人ヘリコプター「S-70UAS U-Hawk」を発表しました。このU-Hawkは、操縦席を排除することで貨物スペースを25%拡大し、多用途の自律型無人航空機システム(UAS)として開発されました。

シコルスキー社のリッチ・ベントン副社長兼ゼネラルマネージャーは、「シコルスキーは、UH-60Lブラックホークを完全自律型多用途プラットフォームへと転換することで、21世紀の革新的なソリューションを生み出しています。このプロトタイプは構想から実現まで1年足らずで開発され、その改修は迅速かつ低コストで大規模に再現可能です。U-Hawkはブラックホークの伝統を受け継ぎ、UASとしての新たな可能性への扉を開きます」と述べています。

S-70UAS™ U-Hawk™ Fully Autonomous Helicopter

S-70UAS U-Hawkの主な特徴とスペック

  • 積載能力の飛躍的向上:
    • 操縦席の撤去により、機体前方には貝殻のように左右に開閉するクラムシェルドアと、車両や荷物の積み下ろしを容易にするための傾斜路(ランプ)が追加されました。これにより、貨物積載能力が25%向上し、これまでのブラックホークでは搭載不可能であった小型車両、無人車両、ミサイルといった長尺の荷物も運搬可能となりました。
    • 高機動ロケットシステムHIMARS用のロケットポッド(ロケット6発)や、最大4個のジョイントモジュラーインターモーダルコンテナを搭載できます(UH-60Lでは2個)。
    • ペイロード能力は、ブラックホークの約9,000ポンド(4,082kg)からU-Hawkでは10,000ポンド(約4,500kg)に増加しました。機内には7,000ポンド(約3,200kg)の貨物を積載でき、ブラックホークと同様に側面ドアからの貨物積み込み能力も保持しています。また、貨物フックを使用することで、ロープ吊り下げ式での荷物運搬も可能です。
  • 高度な自律飛行システム:
    • タブレット端末を使用して、起動から停止までU-Hawk機体を完全に制御できます。ボタン一つでクラムシェルドアが開き、ランプが下降して貨物の積み込みや車両の乗り入れを容易にします。
    • MATRIX自律システムを統合した第3世代の低コスト・フライ・バイ・ワイヤシステムを搭載。カメラ、センサー、アルゴリズムを活用して飛行計画を自動生成し、U-Hawk機を安全に目的地まで誘導します。
    • 自律飛行を含む航続距離は約2,963km、燃料補給なしで最大14時間の滞空・待機時間を想定しています。
  • 徘徊ドローン発射システム「Quiver launching system」:
    • 機体後部左右には「Quiver launching system」と呼ばれる矢筒型発射システムが搭載でき、数十機の徘徊ドローンを搭載し、展開することができます。これにより、偵察、監視、攻撃など、多様なミッション遂行能力を向上させます。
  • 高い互換性と運用性:
    • 機体はUH-60ブラックホークと95%の互換性があり、既存のメンテナンスや兵站システムへの負荷を最小限に抑えることで、運用と維持が簡素化されます。

S-70UAS U-Hawkがもたらすメリット

  • 人命損失のリスク低減: 乗員なしで飛行できるため、危険地域での人的損失を大幅に減らすことができます。
  • 運用コストの削減: 操縦員の訓練・配置、および操縦室装備が不要となり、整備・運用形態も無人機特有の簡素化が可能です。
  • 輸送・補給の柔軟性向上: 貨物搬送能力の向上により、物資輸送や前線への補給の柔軟性が増し、より迅速かつ効率的なロジスティクスが実現します。
  • 多用途性の拡大: 徘徊ドローン搭載能力や多様なペイロードオプションにより、偵察、監視、物資輸送、攻撃支援など、幅広いミッションに対応可能です。

S-70UAS U-Hawkの初飛行は2026年に予定されており、この革新的な無人ヘリコプターは、将来の軍事作戦における航空輸送および支援のあり方を大きく変える可能性を秘めています。ベースとなっているUH-60ブラックホークは、その堅牢性と多用途性から、世界で最も売れている軍用ヘリコプターとして知られています。日本を含む36か国以上で採用され、戦闘、捜索救助、医療搬送など、幅広いミッションでその能力を発揮してきました。ブラックホークの成功は、その信頼性と運用実績に裏打ちされています。

U-Hawkが実用化されれば、ブラックホークの成功に続き、多くの国で採用される可能性を秘めています。無人システムへの移行は、現代の軍事戦略において重要なトレンドであり、U-Hawkはその最前線に立つことになるかもしれません。U-Hawkの登場は、将来のヘリ輸送および支援のパラダイムを再定義することになるでしょう。

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