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日米豪物流協定締結で独と争う豪州のフリゲート艦受注に追い風!

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US Navy

日本、米国、オーストラリアの三国は、海軍間の物流における相互運用性を一層強化するため、画期的な「日米豪海上部隊物流協定」に署名しました。これは、3カ国間で締結された初めての三国間物流協定であり、インド太平洋地域の安全保障協力において重要な一歩となります。

Trilateral Naval Logistics Arrangement for Further Cooperation Signed

11日金曜、海上自衛隊の星直也海上幕僚監部装備計画部長、米海軍のジェフ・ジャブロン海軍作戦部副司令官中将、オーストラリア海軍のキャサリン・ローズ准将は、オーストラリアのブリスベン港を訪問中のUSSアメリカ(LHA-6)艦上で、新協定の調印式に出席し、「日米豪海上部隊物流協定」に署名しました。この協定の主な目的は、3カ国の海軍艦艇が相互に兵站支援を提供できるようにすることです。これにより、ミサイルシステムの再装填や柔軟な燃料補給といった協力分野において、各国の艦艇がより効率的かつ迅速に作戦行動を継続できるようになります。例えば、共同訓練や共同作戦中に、ある国の艦艇が燃料や弾薬を必要とした場合、近隣にいる他の国の艦艇が迅速にこれらを供給できるようになります。これは、遠隔地での長期にわたる展開において特に重要であり、各国の海軍の持続性を大幅に向上させることが期待されます。

この協定は、特定の脅威に対抗するというよりは、地域の安定と安全保障に貢献する汎用的な協力枠組みとして機能します。日米豪は、自由で開かれたインド太平洋の維持という共通のビジョンを共有しており、この協定はそのビジョンを実現するための実務的な連携を強化するものです。災害救援活動や人道支援活動においても、兵站支援の相互運用性が高まることで、より効果的な対応が可能となるでしょう。

また、この協定の締結は、日本にとってオーストラリアの新型フリゲート艦調達計画における追い風となる可能性が指摘されています。日本は、ドイツとの間でオーストラリアの次期フリゲート艦の受注を巡る競争を繰り広げていますが、今回の兵站協定の締結により、日本とオーストラリアの防衛協力関係がさらに深まることが期待されます。これは、将来的な防衛装備品の共同開発や共同生産の可能性も示唆しており、日本の防衛産業にとって新たなビジネスチャンスを創出する可能性を秘めています。

オーストラリアの次期フリゲート調達計画

オーストラリアは、現在、戦略的海洋国家としての地位を確固たるものとするため、艦隊の抜本的な再構築を進めています。この再構築は、Tier-1対潜フリゲートとTier-2汎用艦という二層構造を基盤としています。

Tier-1対潜フリゲート:Hunter級フリゲート計画(Project SEA 5000 Phase 1)

Tier-1に位置づけられる対潜フリゲートは、「Hunter級フリゲート計画(Project SEA 5000 Phase 1)」の下で推進されています。この計画では、イギリスのBAE Systemsが開発・建造し、既にイギリス海軍が採用している26型フリゲート艦をベースに、オーストラリア海軍の独自の要求仕様に合わせて改修・建造されることが決定しています。建造は、BAE Systems Maritime Australiaによって、南オーストラリア州アデレードのオズボーン海軍造船所で進められており、すでに1番艦の建造が開始されています。2032年には1番艦が納入される予定で、最終的に計6隻の建造が計画されています。Hunter級フリゲートは、最新鋭の対潜戦能力を備え、オーストラリア海軍の海洋安全保障における中核を担うことが期待されています。

Tier-2汎用艦:汎用フリゲート計画(General Purpose Frigate / SEA 3000)

Tier-2の汎用艦は、「汎用フリゲート計画(General Purpose Frigate / SEA 3000)」として、現在、日本とドイツが受注を巡って熾烈な競争を繰り広げています。当初、この選定には日本の「もがみ型護衛艦」、韓国の「大邱級フリゲート艦」、ドイツの「MEKO A-200型フリゲート艦」、スペインの「ナバンティア ALFA3000」の4隻が候補として挙がっていました。しかし、最終的には日本の「もがみ型」とドイツの「MEKO A-200型」の2隻に絞り込まれており、2025年中に最終決定が下され、2026年以降から建造が開始される予定です。建造数は7~11隻が予定されており、多目的な任務に対応可能な艦隊の中核を成すことになります。

「もがみ型護衛艦」の強み

画像:防衛省・海上自衛隊

日本の「もがみ型護衛艦」は、2022年から就役が始まったばかりの最新鋭艦であり、その先進性が高く評価されています。特に、最新のステルス設計と高い自動化技術が導入されており、乗員わずか約90名で運用可能である点が大きな特徴です。これは、人手不足に悩むオーストラリア海軍にとって、運用コストの削減と人員確保の面で極めて大きな利点となります。また、年間2隻という高い生産実績は、早期の艦隊増強を可能にし、1隻あたりの建造費も約450億円から500億円とされ、非常に優れたコストパフォーマンスを発揮します。ただし、これまでの輸出実績がない点が、選定における唯一の懸念材料とされていました。

「MEKO A-200型フリゲート艦」の強みと課題

一方、ドイツの「MEKO A-200型フリゲート艦」は、そのベース設計が1990年代にまで遡るものの、アルジェリア、南アフリカ、エジプトなどへの豊富な輸出実績を有しています。これにより、各国の多様な要求仕様に合わせて柔軟に対応してきた実績があり、信頼性が高いと評価されています。しかし、設計の古さが最新鋭の性能を求めるオーストラリア海軍の要求にどの程度応えられるかが課題とされています。

日豪戦略関係と「もがみ型」の優位性

今回の三国間協定の締結は、日豪間の戦略的関係を一層重視する動きを加速させています。この進展は、「もがみ型護衛艦」がTier-2汎用艦の選定において、さらに有利な立場になると推測される重要な要因です。今後、オーストラリアが日本の技術力、コストパフォーマンス、そして両国間の戦略的連携をどのように評価するかが、最終的な決定に大きく影響を与えるでしょう。

この三国間協定は、既存の日米同盟、日豪安全保障協力、米豪同盟といった二国間関係を補完し、より強固な多国間協力の基盤を築くものです。これにより、インド太平洋地域の複雑な安全保障環境に対するレジリエンスが向上することが期待されます。

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