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米海兵隊、次世代小銃M7を見送り M27継続の理由とは

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米海兵隊は、米陸軍が次世代の主力小銃として採用を進めるM7(SIG SAUER社製)について、その導入を見送る方針を公式に発表した。その代わりに、現行の主力小銃であるM27 Infantry Automatic Rifle(M27 IAR)を今後も継続して運用していく。この決定は、単なる装備品の選択にとどまらず、海兵隊が持つ独自の作戦思想と、想定される将来的な戦闘環境に深く根ざした戦略的な判断であると言える。

陸軍のNGSW計画とM7

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M7は、米陸軍が主導する「Next Generation Squad Weapon(NGSW)」計画の中核を成す新型小銃である。M4カービンの後継として開発され、2024年から米陸軍での標準小銃としての配備が始まっている。M7の最大の特徴は、従来の5.56×45mm NATO弾よりも格段に強力な6.8×51mm弾(.277 Fury系)を使用する点にある。この新型弾薬の採用は、近年高性能化が進む敵の防弾装備(ボディアーマー)への対抗と、より長距離での高い貫通力の確保を目的としている。将来的な高強度紛争、特に大国間競争を念頭に置いた場合、分隊レベルの火力を抜本的に引き上げることが、NGSW計画の狙いである。M7は、遠距離での優位性と装甲目標への対処能力を重視した、陸軍の戦略思想を体現する装備と言える。

海兵隊がM7採用を見送った要因

一方で、海兵隊はこの強力なM7の思想を、現時点では部隊全体に適用しないという判断を下した。その最大の理由は、海兵隊が担う「任務特性の違い」と、そこから派生する携行性および持続性の課題にある。

1. 機動力と携行弾数の確保を優先

海兵隊は、強襲上陸作戦、島嶼防衛、都市部での近接戦闘など、高い機動性を求められる遠征即応部隊として活動する。部隊規模が陸軍と比較してコンパクトであるため、兵士一人ひとりの機動力と、戦闘を継続するための持続力が、戦闘力を直接的に左右する。M7の6.8mm弾は高い威力を持つものの、弾薬一発あたりの重量が増加する。この結果、兵士が携行できる弾数が減少し、特に補給が制限される長時間の作戦や分散型の戦闘において、継戦能力の低下を招く。また、標準マガジンが20発仕様であることも、従来の30発装填に比べて短時間での継続的な制圧射撃能力を低下させる要因と見なされた。

2. 装備総重量の増加による負担

M7は小銃本体に加え、NGSW計画の一環としてサプレッサー(消音器)と先進光学照準装置の標準装着が想定されている。これにより、個々の兵士が携行する装備の総重量は相応に増加する。装備重量の増大は、水際での機動や、島嶼部・山岳地帯などでの長距離移動に対し、直接的な身体的負担となる。海兵隊の戦術環境においては、「火力の向上」が「携行性の低下」という代償に見合うか否か、というバランスが最適ではないと判断された。

M27 IAR:海兵隊の戦術に最適化された現行主力小銃

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M7の導入見送りにより、継続運用が決定したM27 IAR(Infantry Automatic Rifle)は、海兵隊の現在の戦術思想に極めて高いレベルで適合している。

1. 開発経緯と高い評価

M27は、ドイツのH&K社製HK416アサルトライフルをベースに開発された。2011年にアフガニスタンでの実戦を通じて海兵隊に配備され、当初はM249小隊自動小銃の代替となる分隊支援火器(IAR)としての役割を担っていた。しかし、その高い命中精度と極めて優れた信頼性が評価され、現在では海兵隊における標準的な個人携行小銃として幅広く運用されている。

2. 5.56mm弾のメリット

M27が使用する5.56×45mm NATO弾は、6.8mm弾と比較して軽量であり、兵士はより多くの弾薬を携行することが可能となる。標準的な30発マガジンを使用することで、近接戦闘(CQB)や、目標を制圧し続けるための持続的な射撃能力に優れる。重量面でも適切に抑えられており、上陸戦や島嶼部における分散機動戦術に適している。

3. 分散型戦闘への適合性

海兵隊は近年、特にインド太平洋地域における島嶼防衛シナリオを重視し、「軽量で高精度な分散型戦闘」を核とする戦術を追求している。このシナリオでは、兵士は広範囲を移動し、補給線が不安定になる状況が想定される。M27の弾薬(5.56mm NATO弾)は、既存の補給網との互換性が高く、共通性という点でも大きなアドバンテージを持つ。

今回の決定は、米軍内部における戦略思想の明確な違いを浮き彫りにした。米陸軍が大規模地上戦や装甲目標への対処を念頭に「遠距離交戦能力の向上」を優先するのに対し、米海兵隊は「機動性と即応性」を最優先し、「分散・持続可能な火力」を重視するという戦略的判断を下したと言える。M7は確かに次世代小銃としての高い潜在能力と火力を備えているが、海兵隊は「現時点の任務環境における最適解ではない」と判断した。これは、新型装備の話題性よりも、実戦での任務適合性、兵士の生存性、そして持続的な戦闘能力を優先する、海兵隊らしい堅実な選択である。ただし、海兵隊がM7へ完全に関心を失ったわけではなく、将来的な改良や陸軍での実戦評価の結果次第では、限定的または段階的な再検討の可能性も残されている。今後の焦点は、陸軍におけるM7の実戦配備と6.8mm弾の運用実績が、海兵隊の戦略にどこまで影響を与えるかという点に移る。

Marines not interested in switching from M27 to Army’s M7 anytime soon

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