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米海軍が無人艦隊を実戦配備へ―シーホーク&シーハンターが海戦の主役になる日

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©Leidos

米海軍は、無人水上艦(Unmanned Surface Vessel:USV)である「シーホーク(Seahawk)」と「シーハンター(Sea Hunter)」を中核とする無人水上艦部隊の正式設立に向け、大きく舵を切っている。長らく実験・検証の域を出なかったこれらの中型無人艇(MDUSV)2隻は、2026年中に艦隊戦力の一部として実戦配備される予定であり、米海軍の長期的な無人兵力戦略における決定的な転換点となる。

近年、米海軍は、従来型の有人艦艇のみならず、無人システムを戦力の中心に据える「ハイブリッド艦隊」構想を強力に推進している。ドローン、無人航空機(UAV)、無人潜航機(UUV)といった無人兵器が、特に広域かつ持続的な監視・偵察任務において主役となりつつあるのが現代戦場の特徴である。この流れの中で、無人水上艦は、有人艦艇の資源と人員への負担を劇的に軽減しつつ、広大な海域での長時間にわたる作戦を可能にする重要なプラットフォームとしてその地位を確立した。米海軍開発部門の担当者は、「これらの中型無人艇(MDUSV)は、もはや“実験艇”ではない。艦隊の指揮下で任務を遂行できる即戦力とする」と記者会見で断言しており、2026年には複数のUSV部隊が正式に編成される見込みである。

シーハンター(Sea Hunter)

US Navy

「シーハンター」は、無人海上航行技術の先駆けとして知られるUSVである。もともとは、米国防高等研究計画局(DARPA)のACTUV(Anti-Submarine Warfare Continuous Trail Unmanned Vessel)プログラムによって開発された。2016年に進水して以来、長期間にわたる無人試験航海や、複雑な海上環境下での各種実証実験に投入され、自律航行に関する貴重なデータと実績を積み重ねてきた。

基本スペック詳細
全長約132フィート(約40メートル)
排水量約135トン(標準)/145トン(満載)
推進方式ディーゼルエンジン × 2基
最高速度約27ノット(約50km/h)
航続距離約10,000海里(約18,500km)
自律航行期間30〜90日程度(燃料搭載量や作戦条件に依存)
武装なし(主に観測・情報収集用プラットフォームとして設計)

シーハンターは、中央船体と左右のアウトリガーを持つトライマーラン(3胴船体)構造を採用している。この独特な船体構造は、直進安定性を極めて高くし、長期間の無人運用に最適な耐波性と効率的な航行性能を実現している。実戦配備においては、主に潜水艦の捜索・追尾(ASW)、大洋横断パトロール、そして高性能センサーによる長時間の情報収集・監視(ISR)任務などが期待されている。

シーホーク(Seahawk)

US Navy

「シーホーク」は、しばしば「Sea Hunter II」とも呼ばれ、Sea Hunterの運用を通じて得られた教訓を反映し、実戦的運用能力を高めるために開発された中型無人水上艦(MDUSV)である。米海軍は2017年にLeidos社と建造契約を結び、2021年に納入された後、海軍の実験部隊であるSURFDEVRON(Surface Development Squadron One)に配備され、集中的な評価試験を受けてきた。シーホークは、Sea Hunterと比較して、電気系統の大幅な強化、ミッション遂行に必要なペイロード(搭載機器)搭載能力の向上、そして運用・制御システムの抜本的な刷新が施されており、次世代の無人艦艇としての実用性と拡張性が高められている。

基本性能(Sea Hunterとの比較)詳細
船体構造Sea Hunterと同様のトライマーラン構造
排水量(満載)約145トン程度(Sea Hunterに準じた設計)
航続距離・期間数千海里〜10,000海里級の長距離航行能力を維持
ペイロード装備追加センサーや各種ミッションモジュールが搭載可能な拡張性を確保

Leidos社は、Seahawkについて「Sea Hunterの運用から得られた300以上の運用・設計教訓を反映し、無人運用に最適化された艦艇」であると説明している。特に、自律航行機能、洋上での耐久性、そして遠隔制御システムの向上が図られ、太平洋横断のような極めて長い航路・期間を要する任務にも対応できる設計となっている。

実戦部隊への転換と将来の運用構想

米海軍Surface Development Group Oneのギャレット・ミラー大佐は、「2026年にはMDUSVが実験・評価段階を脱し、実戦部隊として機能する」と強調し、正式配備に向けた海軍の揺るぎない決意を示している。新設される無人水上艦部隊は、米海軍のSurface Forces(水上戦闘部隊)に配属され、従来の有人艦艇と緊密に連携した作戦遂行が想定されている。将来的には、航空母艦打撃群(CSG)や強襲揚陸部隊といった主要な海軍戦闘群との統合運用も視野に入れられており、以下のような幅広い任務に投入される可能性がある。

  1. 情報収集・偵察(ISR):敵対海域付近での長期間・ステルス性の高い監視活動。
  2. 海洋状況監視(MSA):広大な海域における船舶交通、海洋環境、不審な活動の追跡。
  3. 対潜水艦戦支援(ASW):有人艦艇では対応しきれないエリアでの潜水艦の捜索・追尾。
  4. 機雷対策支援(MCM):機雷探知ソナーなどを用いた危険海域の調査。

今回の無人水上艦の実戦配備は、米海軍が「有人優先」の戦略から、**「有人・無人ハイブリッド戦力」**へと明確に戦略を転換する象徴的な出来事である。有人艦艇だけでは困難な長期・広域の海洋パトロールや、危険性の高い高度な監視任務を無人艦艇が担うことで、有人戦力の負担を軽減し、艦隊全体の戦術的柔軟性と持続性を飛躍的に高める役割を担うことが期待されている。今後は、これらのMDUSVに加え、より小型で多用途な無人艇や、様々なミッションを可能にするコンテナ化されたペイロード(ミッションモジュール)など、多様なUSVが艦隊に加わり、その役割は一層拡大していくだろう。これらの動きは、単なる技術実証から実戦用戦力への転換期に差しかかっている米海軍の姿勢を明確に示しており、海洋戦略における無人システムの役割が今後、さらに重要になっていくことを示唆している。

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