

アメリカ国務省は、F-16戦闘機の訓練と維持管理、および関連装備をウクライナに3億1000万ドルで売却する案を承認したと2日金曜日に発表した。トランプ政権下でウクライナへの新たな武器売却が承認されるのは初であり、ロシア・ウクライナ戦争に対するトランプ政権の政策の大きな転換を示すものである。
US State Dept OKs possible sale of F-16 training, sustainment for Ukraine
ロイター通信の報道によれば、米国務省はウクライナへのF-16戦闘機の訓練および整備支援に関する3億1,000万ドルの契約を承認した。この契約には、航空機のアップグレード、飛行訓練、整備支援、予備部品、地上支援機器、機密ソフトウェアおよびドキュメントが含まれている。この契約は、トランプ大統領が強く支持する新たなアメリカ・ウクライナ間の鉱物資源協定の下で行われた。アメリカは4月30日、ウクライナと、同国の天然資源に関する協定を締結した。この協定は、米国にウクライナに埋蔵されたレアアースを含む鉱物資源に優先的なアクセスを与え、ウクライナの復興への投資資金を提供するものだ。
The #US is transferring decommissioned F-16 fighters from Davis-Monthan Air Base to #Ukraine, which will be used as spare parts donors 🔥🔥🔥 pic.twitter.com/lcc1TGs4dY
— Aurora Borealis 🤫 (@aborealis940) May 1, 2025
米政府は直接商業販売(DCS)プログラムに基づきウクライナへの軍事物資の販売を認める意向を議会に正式に通知した。 DCSを通じて武器販売を再開するという決定は、従来の対外有償軍事販売 (FMS) とは異なり、米国の防衛請負業者が国務省の監督下で外国政府と直接交渉できるようになるため、特に重要とされる。対外有償軍事援助(FMS)は、アメリカ政府と国防総省が外国政府に対して、武器や軍事装備、サービスなどを販売する制度で、軍需企業と外国政府が直接取引する商取引ではなく、政府と国防総省が窓口となる軍事支援プログラムになる。そのため、いわゆる、お役所仕事になり、承認されてからの納入までのリードタイムが長く、調達プロセスが長期化する傾向にあり、業界と海外顧客から不満が上がっていた。その点、DCSは防衛企業と直接やりとりできるため、FMSよりも納入期間が短いとされる。今回の兵器取引の主要請負業者はF-16の開発生産元であるロッキード・マーティンの他、BAEシステムズ、AARコーポレーションであると国防総省は発表している。今回の契約の一環か、米国のデイビスモンサン空軍基地にある退役した機体の保管スペースである「飛行機の墓場」からF-16戦闘機を引き上げ始める様子が確認されている。これは機体を元の状態に戻すのではなく、部品を解体してウクライナへ送るとされる。
2か月前、停戦に関するゼレンスキー大統領との首脳会談で喧嘩別れに終わったトランプ大統領はウクライナに交渉を迫るため、すべての軍事援助を一時停止した。この決定は、情報の共有停止、パトリオット防空ミサイルや高機動ロケット砲システム(HIMARS)長距離ロケットシステムなどの武器や弾薬を含む10億ドル以上の軍事支援に影響を及ぼした。ウクライナは当時、トランプ大統領の決断は「痛みを伴うが、致命的ではない」と述べたが、停戦交渉の材料として制圧していたロシアのクルスク州の大部分を失うなど、大きな痛手を負った。
Behind Scenes, Vatican City—President Trump sat down to meet privately with Volodymyr Zelenskyy of Ukraine this morning in St. Peter’s Basilica… pic.twitter.com/zzC78AgbNh
— Dan Scavino (@Scavino47) April 26, 2025
前回の会談から2か月後、ゼレンスキー氏とトランプ氏は4月26日に行われたローマ教皇フランシスコの葬儀の前に膝を突き合わせて二度目の首脳会談「バチカン会談」を行った。ここでゼレンスキー氏は、2か月前の会談で署名する筈だった資源協定について締結する用意があることを伝えたという。
今回の兵器売却の決定は、米国の戦略的な転換を示している。これまで、停戦に向けてロシア寄りの姿勢を見せていたトランプ大統領。しかし、最近はロシアに対する苛立ちを露わにしており、4月24日にロシアがキーウに爆撃を行った際はプーチン大統領に対して「ウラジーミル、やめろ!」とSNSに投稿した。
今回、承認したF-16戦闘機はウクライナにとっては最も重要な兵器の一つだ。ウクライナ空軍は航空戦力で圧倒的に劣る上に、主力戦闘機はソ連製の旧式のMig-29とSu-27。損失も多く、出撃頻度も多いため限界が来ている。この状況を打破する事が期待されているのが100機以上の供与が予定されているF-16戦闘機になり、2024年8月初旬にオランダとデンマークから念願のF-16戦闘機の最初のバッチ約10機を受領。数は不明だが今年3月には2回目の納入があったことが明かされている。しかし、当初の計画より、納入が遅れている。その理由は機体の改修とパイロットの育成だ。このスピードを上げるためには開発生産元の米国の協力は必要不可欠になる。搭載させる兵器も米国製がほとんどであり、米国の供与なしでは、F-16の支援は不可能だ。