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地中海で起きた異例の攻撃、ウクライナが狙ったロシア「影の船団」

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ロシアによるウクライナ侵攻は、戦闘が陸・空に加えて、海上輸送とエネルギーを巡る「経済戦争」の様相を強めています。その象徴的な出来事が、12月19日にウクライナが発表した、地中海の公海上でロシアの「影の船団(シャドー・フリート)」に属するとされるタンカーへの無人機攻撃です。この攻撃は、ウクライナ本土から約2,000km以上離れた東地中海(リビア沖からクレタ島南方にかけて)の公海上で実施されました。ウクライナ治安当局(SBU)は、この作戦により長距離無人機運用能力を誇示し、対ロ海上作戦の範囲が黒海を超え、欧州と中東を結ぶ戦略的海域にまで拡大したことを示しました。

攻撃対象は、ロシア産エネルギーの制裁回避輸送に関与しているとされるタンカー「Qendil」でした。ウクライナ側は、タンカーが空船であったため原油流出などの環境被害は発生しなかったと説明しています。一方、ロシアはこれを「民間船舶に対する海賊行為」と強く非難し、報復措置を示唆しています。

「影の船団」とは何か

「影の船団」とは、ロシアが西側諸国の石油価格上限措置や禁輸などの経済制裁を回避するために利用しているとされるタンカー群の通称です。これらはロシアの戦争資金を支える重要なインフラと見なされています。

「影の船団」の特徴

  1. 不透明な情報: 船籍、所有者、保険関係が不透明で、船名や旗国が頻繁に変更されます。
  2. 追跡回避: AIS(自動船舶識別装置)を意図的に停止するなど、追跡を困難にする運航が行われます。
  3. 高いリスク: 船齢の古いタンカーが多く、事故や環境汚染のリスクが高いと指摘されています。

具体的な確認事例

  • 原油タンカー「Kiwala」: 2025年にバルト海で旗国不明のまま航行していたとして、エストニア当局に検査・一時拘留されました。
  • 大型タンカー「Eventin」: バルト海で機関故障を起こしドイツ当局に曳航されましたが、登録や運航実態の不透明さから「影の船団」との関連が指摘されました。

黒海周辺でも、ウクライナが無人艇やドローンで関連が疑われる複数のタンカーを攻撃しており、今回の地中海攻撃はその一連の流れの中に位置付けられます。

国際法上の論点と今後の展望

今回の公海上での民間船舶攻撃は、国際法上の大きな争点を生じさせています。

  • ウクライナの主張: 「影の船団」はロシアの戦争継続を可能にする資金源であるため、軍事的に正当な標的である。
  • 慎重論: 公海上の民間船攻撃は「航行の自由」を脅かす行為である。

EUはこの事件を受けて、影の船団への追加制裁と監視強化の必要性を改めて表明。米国はロシアの制裁回避ネットワークを断つ取り組みへの理解を示しています。

今回の地中海攻撃は、戦争が従来の戦場を超え、海上輸送とエネルギー収入を巡るグローバルな消耗戦へと移行した現実を明確にしました。この「影の船団」を巡る攻防は、ロシアの戦争遂行能力だけでなく、国際海運の安全や世界のエネルギー市場にも影響を及ぼしかねません。ウクライナが今後もこのような「域外攻撃」を継続するのか、そして西側諸国がこれをどこまで容認・支援するのかが焦点となります。地中海での一撃は、ロシア・ウクライナ戦争が新たな段階に入ったことを国際社会に示す警告として重く受け止められています。

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