

ウクライナ空軍は12日土曜、F-16戦闘機を操縦していたパイロットが戦闘任務中に死亡した事を発表した。西側から供与されたF-16とパイロットを失うのは昨年8月から運用が始まって以降、今回で二例目だ。
ウクライナ空軍は13日の声明で、「2025年4月12日、26歳のパブロ・イワノフがF-16戦闘任務中に死亡した」と述べた。ゼレンスキー大統領も彼の死についてSNSで「本日、パブロ・イワノフ大尉がF-16戦闘任務中に悲劇的な戦死を遂げました。彼はまだ26歳でした。ご遺族とパブロの戦友の皆様に謹んでお悔やみ申し上げます。 軍当局はこの戦闘状況に関する必要な報告書を提出しました。我々は全ての状況を確認中です。 ウクライナのF-16、ミラージュ、ミグといった戦闘機は、国家防衛と地上作戦支援という任務を勇敢に遂行しています。空軍もまた、ロシアのミサイルや無人機からウクライナを守る任務に携わっています。 私たちは戦士たちを誇りに思います。私たちは力強く、的確に対処します。 ウクライナに栄光あれ!」と哀悼の意を表した。第299戦術航空旅団のロスティスラフ・ラザレンコ副司令官は「君を戦闘任務から引き離し、F-16の再訓練に送ることができたことを、とても誇りに思います。ウクライナ初のF-16パイロットの一人であり、再訓練前に130回の戦闘出撃をこなした強襲戦闘パイロットでした」と回顧している。
状況確認中とあるように現状、パブロ・イワノフ大尉が亡くなった経緯は明かされておらず、ロシア軍によって撃墜されたのか、事故なのかは分かっておらず、調査中だ。ロシアとウクライナの軍事ブロガーはテレグラム上で、同機が地対空ミサイル(SAM)によって撃墜されたと主張しているが、それがロシア軍によって放たれたのか、それともウクライナ軍による誤射(フレンドリーファイア)によるものなのかは分かっておらず、様々な憶測が飛び交っている。イギリスBBCはロシア軍のS-400防空ミサイルの可能性を報道している。全状況は、省庁間委員会によって調査中とウクライナ空軍は発表している。
ウクライナは2024年8月初旬にオランダとデンマークから念願のF-16戦闘機の最初のバッチ約10機を手に入れた。同月26日には早速、ロシアから放たれたミサイルを撃墜するために初陣を飾り、初撃墜を記録している。しかし、その初陣でコールサイン「ムーン・フィッシュ」の愛称で知られるオレクシー・メス氏(30)が搭乗する機体が墜落、メス氏が亡くなっている。これが最初のウクライナ空軍のF-16の損失だ。F-16は計100機以上が納入される予定だが、納入が遅れており、初期バッチの機体数での運用を強いられ、数が少なく貴重な機体のため、前線から少し離れた場所に配備され、主に防空任務を担っていた。2025年1月には1回の出撃でロシア軍が放った6発の巡航ミサイルを撃墜するという新記録を達成。F-16として初めての20mm機関砲による撃墜も記録している。
今年3月にゼレンスキーは2回目のF-16の納入があった事を明かしているが、実際には2月には納入がされていたとされう。正確な数は明かされていない。実際、それまで、F-16の目撃情報は少なかった、2月頃からウクライナの戦場で目撃される事が増えた共に、前線近くで飛行する様子も確認されるようになり、機体数が増えた事で防空任務から、ロシア軍に対する攻撃任務にも運用が広がったとされる。F-16が目新しいこともあり、SNSにはF-16が飛行する様子が度々投稿され、ウクライナ国防省が安全に関わるので投稿しないように呼び掛ける程だった。
欧州連合軍最高司令官のクリストファー・G・カヴォリ将軍は4月、米上院軍事委員会に対し、ウクライナ空軍のF-16が防空および攻撃任務で毎日飛行していると述べ、F-16が今後もウクライナ軍にとって重要な役割を果たすことを示した。ただ、まだまだ数は少ない状況であり、供与された機体は予定数の半分に満たない。パイロットや兵器もまだまだ足りないとされる。その中で、貴重なパイロットと機体を失ったのはウクライナ軍にとっては大きな痛手だ。