

ウクライナ国防省は2025年5月27日、国産の携帯型電子戦装置「アンチドローン・ピストル」を正式に認可し、ウクライナ軍における運用を開始した。本装置は、兵士が携行可能な対ドローン兵器として開発され、敵無人航空機(UAV)の制御信号および映像伝送を妨害することを主目的とする。
The Ministry of Defence authorizes operational use of the ‘Anti-Drone Pistol’
個人用電子防護装置「対ドローンピストル」は、歩兵に対し電磁干渉能力を付与し、敵ドローンの制御チャネル及びビデオ信号を遮断する目的で使用される。本装置は約1kgの軽量設計であり、モノリシック構造を採用することで優れた携帯性を実現している。出力は50ワット、周波数帯は700~1000MHzに対応し、最大100mの範囲において敵ドローンの信号を妨害可能である。現在ウクライナ戦場において最大の脅威となっているFPVドローン、搭載するグレネードの殺傷範囲が6m、RPG弾頭が15mであることを考慮すると、30m以上の距離でドローンを撃墜することは安全確保に繋がるとされており、本装置は十分な射程を有している。発せられる電磁波の照射面積は不明であるが、ライフルやショットガンによる迎撃よりも効率的な手段と考えられる。
本装置の導入は、ロシア軍による無人航空機を用いた偵察および攻撃に対抗するための措置として実施され、前線の兵士が個別に対処可能な手段を提供するものである。ただし、当該アンチドローン・ピストルは700~1000MHzの周波数帯にのみ対応しており、ロシア連邦の無人航空機が使用する可能性のある他の周波数帯(例:290~340MHzおよび950~1100MHz)には対応していない。したがって、全ての無人航空機に対する包括的な対策とは言えない。このため、ウクライナ軍では他の対無人航空機装備(ネットガンおよび高出力の電子戦システム)との併用が検討されている。
とはいえ、アンチドローン・ピストルの導入は、ウクライナ軍の電子戦能力を強化し、兵士の生存性を高める上で有益であると期待される。