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ウクライナ軍がロシア軍の生命線クリミア橋の支柱を破壊!修繕は年単位か?

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SBU

2025年6月3日、ウクライナ保安庁(SBU)は、ロシア連邦本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋(ケルチ橋)の支柱に対し、水中からの爆破作戦を実行した。この攻撃は、クリミア半島に駐留するロシア軍部隊への軍事補給路を遮断し、象徴的インフラを破壊することを目的とした戦略的作戦であると見なされる。

6月3日、ウクライナ保安庁(SBU)は、クリミア半島およびウクライナ南部に展開するロシア軍部隊への補給路を遮断するため、ロシア連邦本土とクリミア半島を連結するクリミア大橋(ケルチ橋)に対して攻撃を実施した。攻撃は午前4時44分に実行され、クリミア大橋の水中支柱(橋脚)基礎部分が爆破された。攻撃にはTNT換算で1100kgの爆薬が用いられた。橋梁の完全崩壊には至っていないものの、橋脚に深刻な損傷が生じ、橋梁全体が「緊急事態」にあると報告されている。

水中支柱は、橋梁の自重および通行車両の荷重を支持する構造体である。支柱の基礎部分(地盤との接合部)が破壊されると、橋梁の上部構造(道路・鉄道部分)を支持できなくなり、たわみや沈下、最悪の場合には崩落に繋がる。支柱が損傷した状態で橋梁を通行することは極めて危険であり、安全確保のためには通行を全面的に禁止する必要がある。この結果、クリミア大橋は通行不能な状態に陥った可能性が高い。少なくとも、トラックや軍事車両といった中型・大型車両の通行は不可能であろう。

クリミア大橋は、2022年10月および2023年7月にも攻撃を受け、損傷・崩落し、通行が一時的に停止された経緯がある。その度に修繕し、2022年の攻撃時には4ヶ月後、2023年の攻撃時には3ヶ月後に全面再開通したが、今回の損傷は過去の事例と比較して、修復が著しく困難であり、時間を要すると推察される。海中作業は天候および潮流の影響を受けやすく、制約が多い。このため、損傷評価および修復作業には多大な時間とコストが必要となる。特に、支柱の根幹(基礎)が破壊された場合、再建や補強には数ヶ月から年単位の工期が必要となる。さらに、現在は戦時下である。修繕作業には、ウクライナ軍による攻撃の警戒が必要となり、更なるコストと時間を要する。

無人潜水艇を使用か

今回の攻撃に関して、支柱への爆薬設置に関する情報も存在するが、ウクライナ軍の新型無人潜水艇(UUV)「マリチカ(Marichka)」が使用された可能性が高いと推測されている。マリチカは2023年8月に公表された。詳細なスペックは公表されていないものの、推測値として全長6m、航行距離約1000km、300kgの爆薬搭載能力を有し、事前プログラムとGPSナビゲーション、AIベースの障害物回避機能により自律航行すると見込まれる。イギリスのメディア「ザ・テレグラフ」は、この水中ドローンのコストを433,000ドルと報じている。

ウクライナ軍はこれまで、自爆型無人艇を駆使し、ロシア海軍に大きな打撃を与えてきた。しかし、ロシア軍も対策を進めており、無人艇に対する防衛を強化している。大型船舶はクリミア半島周辺から撤退させ、小型艇やヘリコプターによる水上監視を強化している。今回、無人潜水艇を使用したとすれば、ロシア軍のこれら警戒を裏をかいた形となる。たとえ、そうでなかったとしても、このような情報が流布することで、ロシア軍に対し「どこから攻撃が来るかわからない恐怖」を付与し、水中監視という更なるコストを強いることができる。

この作戦は数ヶ月にわたり計画され、SBU長官ヴァシル・マリュク中将が直接指揮を執ったとされる。今回の水中支柱の損傷は、橋梁の「生命線」を切断するに等しい行為であり、クリミア大橋のような重要インフラにとっては致命的である。ウクライナによるこの攻撃は、単なる破壊ではなく、構造的・戦略的に極めて効果的な軍事行動であると言える。クリミア大橋は、ロシア連邦が占領するクリミア半島とロシア連邦本土を結ぶ唯一の陸路であり、ロシア軍の兵站線として重要な役割を果たしている。この橋梁を破壊することにより、クリミア半島、ヘルソン州といったウクライナ南部に展開するロシア軍部隊への補給能力を大幅に削減することが期待できる。

つい先日には、ロシア連邦の戦略爆撃機の34%を破壊し、約70億ドルの損害を与えたとされる「パヴティナ(蜘蛛の巣)」作戦も実行するなど、SBUの作戦が活発化している。一時期待された停戦も、トルコ・イスタンブールで2日に行われた協議において、ロシア連邦側の提示が事実上の降伏勧告であり、合意には至らなかった。欧州NATO、特にドイツやイギリスは、対ロシア姿勢を強硬化させ、軍備拡張を推進しており、ロシア・ウクライナ戦争は新たな段階に突入する可能性が高い。

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