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米陸軍が「工兵の常識」を覆す実証 ドローンで障害突破、バンガロール爆薬筒を遠隔運用

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US Army

「障害物を突破する」という工兵の任務は、100年以上にわたり最も危険な任務の一つとされてきました。投入された兵力の半数が死傷することを前提に計画が立てられるほどの危険地帯──しかし、その常識が今、大きく変わろうとしています。

米陸軍オレゴン州兵第741工兵大隊は6月22日、アイダホ州オーチャード戦闘訓練センターで、重量物運搬ドローン「Mule 28」にバンガロール爆薬筒(Bangalore Torpedo)を搭載し、有刺鉄線障害を遠隔で爆破・突破する実証演習を実施しました。兵士が敵前まで走り込むことなく通路を切り開くことに成功したこの試験は、工兵の役割そのものを変える可能性を秘めています。

100年以上使われ続ける「バンガロール爆薬筒」とは

USMC

バンガロール爆薬筒は1912年にイギリス領インドで考案された障害突破用爆薬です。細長い金属筒の内部に爆薬を充填し、複数本を連結して障害物の下へ押し込み起爆することで、有刺鉄線や鉄条網、低木、地雷原の入り口などに通路を切り開きます。第一次世界大戦では塹壕(ざんごう)前面の鉄条網突破に活躍し、その後も第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争、アフガニスタン、そしてウクライナ戦争に至るまで100年以上にわたって世界各国で使用され続けてきました。派手な攻撃兵器ではないため日の目を見ることは少ないですが、M2ブローニング機関銃と並び、1世紀以上にわたり最前線で使われ続けている傑作装備の一つです。現在でも米軍では改良型のM1A3型が現役として運用されており、日本の陸上自衛隊をはじめ、世界各国の工兵(施設科)の標準装備であり続けています。

工兵にとって「突破」は最も危険な任務

従来の障害突破では、工兵は敵の監視や激しい射撃にさらされながら、有刺鉄線まで生身で接近しなければなりませんでした。爆薬筒を設置し、導火線や起爆装置を接続した後に退避して爆破するという一連の作業は、敵に最も狙われやすい時間でもあります。その危険性は米陸軍自身も認めており、工兵ドクトリンでは、計画的な障害突破任務に対して「50%の損害計画係数」を設定しています。つまり、突破任務は「投入兵力の半数が死傷する可能性」を前提として計画されるほど、過酷で危険な任務なのです。

ドローンが「工兵」の身代わりになる時代

今回の演習では、その命がけの役割をドローンが肩代わりしました。Mule 28ドローンはM1A3バンガロール爆薬筒を吊り下げて有刺鉄線の上空まで飛行し、目標地点へ正確に投下。その後、兵士は安全な位置から「ショックチューブ(信号伝達用の高分子チューブを用いた非電気式の導火線)」を用いて起爆し、有刺鉄線に歩兵や車両が通過できる突破口を形成しました。注目すべきは、起爆を無線ではなく、物理的なショックチューブで行った点です。電子戦が激化する現代戦では、GPS妨害や電波妨害によって無線起爆が遮断される恐れがあります。あえて有線方式を採用することで、確実性を極限まで高めているのです。これはロシア・ウクライナ戦争で得られたリアルな教訓を色濃く反映した設計思想といえます。

「ドローンを使うなら、普通の爆薬や爆弾を上から落破すればいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、通常の爆弾投下では有刺鉄線の一部をバラバラにすることはできても、ワイヤーが複雑に絡まったまま残ったり、部隊が安全に通れる幅が確保できなかったりすることが少なくありません。歩兵が通るには少なくとも1〜2m程度、車両ならさらに広い突破口が必要です。バンガロール爆薬筒は、その「細長い形状」自体に意味があります。障害物に沿って爆発が一直線に走るため、幅1.5m以上の確実な「通路」を一本の線として作り出せるのが最大の強みなのです。

着想の源は「ウクライナの戦場」

演習を主導したエリック・ジマーマン中佐は、このアイデアの源について「ほとんどウクライナ(での経験)だ」と率直に語っている。ウクライナの戦場では、小型ドローンが偵察や攻撃だけでなく、弾薬輸送、物資補給、地雷設置などあらゆる任務を担うようになりました。その変革を目の当たりにした米陸軍は、「障害突破も無人化できるのではないか」という発想に至り、数カ月に及ぶ研究開発を経て今回の実証に成功しました。部隊の調査によると、このようなドローンによるバンガロール運用の試みは、米陸軍内でも前例が確認できなかったといいます。

工兵は「爆破する兵士」から「無人システムを運用する兵士」へ

今回の演習で最も重要なのは、新しい最新兵器を開発したわけではなく、「既存の枯れた技術」を組み合わせている点です。100年以上使われてきた信頼性の高い装備に、現代のドローン技術を掛け合わせただけで、工兵が最も危険な局面に身をさらす必要がなくなったのです。もちろん、複雑な複合地雷原や対戦車壕の突破など、依然として有人工兵による手作業が必要な場面は残るでしょう。しかし、有刺鉄線のような典型的な障害物であれば、今後はドローンが前進し、兵士は後方から任務を指揮・管理するという運用が標準化していく可能性が高いです。

ウクライナ戦争は「ドローンが兵士の代わりに敵を攻撃する時代」を生み出しました。そして今回の米陸軍の実証は、その一歩先──「ドローンが兵士の代わりに危険な道を切り開く時代」の到来を示しています。これからの工兵は、自ら障害物を爆破する存在から、それをドローンでスマートに運用する存在へと進化していくのかもしれません。

Source
Oregon engineers breach wire obstacle with drone-delivered Bangalore

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