

米軍による対イラン軍事作戦は、イラン海軍および革命防衛隊(IRGC)海軍に深刻な打撃を与え、その大型艦艇の多くを戦闘不能に追い込んだ。攻撃を受け、確認された損害艦艇は20隻以上に上り、トランプ大統領はほぼ壊滅したと述べている。この攻撃で特に注目を集めたのは、イランが近年、国家威信をかけて整備を進めていた象徴的な新型艦艇への攻撃である。
無人機・ドローン空母の喪失


攻撃の焦点となったのは、イラン初の本格的な「ドローン空母」として世界的に注目されていた無人機・ヘリコプター空母 IRIS Shahid Bagheri(シャヒド・バゲリ)だ。この艦は、全長240m、推定排水量4万トンを超える大型コンテナ船を改造して建造された異色の存在である。ディーゼルエンジンを搭載し、航続距離は最大1年間燃料補給なしで2万2000海里(約4万744km)を誇るとされ、20ノット以上の速力で航行可能とされていた。最大の特徴は、180mの飛行甲板とスキージャンプ式甲板を備え、偵察用無人機、攻撃ドローン、そしてヘリコプターの運用能力を有していた点だ。
アメリカ中央軍(CENTCOM)が公開したイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の無人機空母IRIS シャヒド・バゲリを攻撃する様子。同艦は沈没or大破したとされるpic.twitter.com/RwiJ4ma5tl https://t.co/y9iMng3XAi
— ミリレポ (@sabatech_pr) March 6, 2026
イランは本艦を、ペルシャ湾という限定的な海域に留まらず、インド洋や紅海など遠洋での無人機作戦を指揮・展開するための移動拠点として運用する構想を抱いていた。しかし、今回の米軍による精密攻撃の結果、IRIS Shahid Bagheriは大破、あるいは撃沈された可能性が高いと報じられており、イランの遠洋展開能力計画は初動段階で大きな挫折を余儀なくされた。


革命防衛隊の新型ステルス艦への打撃
米軍はこれまでに17隻のイラン艦船を破壊した報告しているがIRGCのシャヒド・ソレイマニ級コルベット艦の撃沈報告はまだない。同艦はステルス艦でVLSを装備6発の対艦巡航ミサイルを搭載しているとされ、4隻が配備されている。pic.twitter.com/1luysvl9Gb
— ミリレポ (@sabatech_pr) March 4, 2026
さらに、革命防衛隊海軍の主力艦として位置づけられていたShahid Soleimani-class corvette(シャヒド・ソレイマニ級コルベット)も標的となり、複数の艦艇が攻撃を受けたとされる。このクラスのコルベットは、イランが国産技術で開発した高速カタマラン型(双胴艦)のステルス戦闘艦であり、最新鋭の長射程対艦ミサイルを6発搭載可能という高い戦闘能力を持っていた。当時、このクラスの艦艇は計4隻が配備されているとされていた。
U.S. forces have struck or sunk to the bottom of the ocean more than 20 ships from the Iranian regime. Last night, CENTCOM added a Soleimani-class warship to the list. pic.twitter.com/KgW8cS726P
— U.S. Central Command (@CENTCOM) March 4, 2026
これらの新型艦艇は、単に軍事的な戦力としてだけでなく、イランの防衛産業の技術力の象徴、そして国家威信の象徴でもあった。そのため、これらが相次いで失われたことは、単なる戦術レベルの損害に留まらず、イラン海軍の威信そのものに対する深刻かつ戦略的な打撃と分析されている。


また、正規海軍のフリゲート IRIS Dena も、米海軍潜水艦による魚雷攻撃を受けて撃沈されたことが報じられている。これにより、イラン正規海軍および革命防衛隊海軍が保有する比較的大型の水上戦闘艦艇の多くが短期間で戦闘不能状態となり、イラン海軍全体の遠洋作戦能力は著しく低下したとみられている。
大型艦損失の真の意義と非対称戦力の脅威
BREAKING- IRAN reveals world’s first Air Defence Small Boat equipped with Nawab Short-range SAM System#IRAN #IRGC #missile #boat pic.twitter.com/eRfCrLfpsi
— EurAsian Times (@THEEURASIATIMES) March 10, 2023
しかし、軍事専門家の間では、大型艦艇の損失が必ずしもイラン海軍の戦闘能力の完全な喪失を意味するわけではないという指摘も多い。イラン海軍の真の脅威は、大型水上艦ではなく、ペルシャ湾という特殊な海域に大量に展開している小型艇部隊にあると分析する。
ペルシャ湾における非対称戦力:
- 高速小型艇部隊(スウォーム戦術): 革命防衛隊海軍は数百隻規模の高速ボートやミサイル艇を保有していると推定されている。これらの小型艇は、高速で大型艦に接近し、対艦ミサイルやロケット弾を一斉に発射する「スウォーム戦術」(群れによる飽和攻撃)を得意とする。
- 自爆型無人艇(USV): 近年、イランは爆薬を搭載した自爆型無人艇(Unmanned Surface Vessel, USV)の開発に注力している。これらの無人艇は、遠隔操作または自律航行により敵艦に突入する。安価でありながら、大型艦艇にも深刻な損害を与える可能性があり、非対称戦力として極めて脅威的である。
これらの小型艇は、レーダー反射断面積(RCS)が小さく、狭く浅いペルシャ湾の地形を利用することで、米海軍などの大型艦にとって発見や迎撃が非常に困難となる。この種の非対称戦力は、湾岸地域の作戦において、米軍が常に最も警戒すべき対象であり続けている。
今回の米軍による攻撃は、イラン海軍の威信の象徴であった大型艦隊に壊滅的な打撃を与え、遠洋作戦能力を大幅に低下させたことは確かである。しかし、ペルシャ湾という限定的な海域においては、小型艇、機雷、そして自爆無人艇といった非対称戦力による「不規則戦」の脅威は依然として高く、米軍にとって真の警戒対象はこれら小型戦力である可能性が高い。今回の軍事作戦は、現代の海戦がもはや大型艦隊同士の伝統的な戦いだけでなく、ドローンや高速小型艇を中心とする安価で非対称な戦力によっても戦局が大きく左右される時代に突入していることを、改めて世界に示した出来事となった。
