MENU
カテゴリー

米軍、メキシコ国境で「レーザー兵器」実戦投入!カルテル関連ドローン3機を撃破したAMP-HELとは

  • URLをコピーしました!
USNORTHCOM

米軍がメキシコとの国境地帯で、これまで実証試験や海外での運用が中心だった高出力レーザー兵器を、米国本土における実際の対ドローン任務に投入した。米北方軍(USNORTHCOM)の指揮下でメキシコ国境の警戒にあたる統合任務部隊「Joint Task Force–Southern Border(JTF-SB)」は、2026年8月25日夜から26日にかけて、米陸軍のArmy Multipurpose High Energy Laser(AMP-HEL)を使用し、敵対的と判断した無人航空機(UAS)3機を撃破したと発表した。米軍によれば、これら3機のドローンは麻薬カルテルによる人身密輸や非合法活動と関連しているとみられ、米軍兵士や米税関・国境警備局(CBP)職員に対する物理的脅威を直接支援していたことから「hostile(敵対的)」と認定された。

今回の事案は、単なる新兵器のフィールドテストではない。米軍が「米国南部国境」という現実の治安任務に高エネルギーレーザーを投入し、目前の脅威を排除したという点で、対ドローン戦(C-UAS)における歴史的な転換点となる。

参考・引用 Joint Task Force – Southern Border uses high-energy laser system to mitigate cartel-linked drone threats

3機のドローンをレーザーで撃破

JTF-SBが8月27日に公表した発表によると、今回の作戦は8月25日および26日の深夜に実施された。部隊はAMP-HELを用いて3機の敵対的ドローンと交戦し、これらを「defeat(撃破・無力化)」した。今回のレーザー迎撃が行われた正確な地点や、撃墜時に機体が米国側とメキシコ側のどちらの空域を飛行していたのかについて、米軍は明らかにしていない。現在、JTF-SBには約8,000人の兵士らが展開しており、約1,954マイル(約3,144km)に及ぶ南部国境の警戒任務に従事している。JTF-SB司令官であるカーティス・テイラー陸軍少将は、麻薬カルテルが監視や密輸活動に無人航空機を利用する動きが近年急増していると指摘。カルテルはドローンを用いて国境警備隊の巡回ルートを上空から監視し、密輸ルートの安全を確認したり、時には小型の禁制品を空輸したりしている。テイラー少将は、「レーザー兵器のような先進的な指向性エネルギー能力と多層的な対策を統合することで、この種の敵対的な監視を容認しない姿勢を明確にした」と強調している。

今回使用された「AMP-HEL」と「LOCUST」の関係

左:LOCUST 右:AMP-HEL(©AeroVironment)

今回の作戦の主役となったのが、米陸軍のAMP-HEL(Army Multipurpose High Energy Laser)だ。これは、レーザー光を利用してドローンなどの空中目標を無力化する「指向性エネルギー兵器(Directed Energy Weapon)」のシステム名称であり、特に小型無人機を対象とした迎撃用途を想定して開発されている。重要なのは、AMP-HELが「単一のレーザー製品」を指すのではなく、米陸軍が高エネルギーレーザーを車両などに搭載して実用化するための「プログラム名称」であるという点だ。そして、その中核に組み込まれている代表的なレーザー兵器が、米防衛企業AeroVironment(AV)の「LOCUST Laser Weapon System(LWS)」である。

AV社は2025年、20kW級のLOCUSTをゼネラル・モーターズ・ディフェンスのInfantry Squad Vehicle(ISV)に搭載したAMP-HEL試作システムや、Oshkosh製JLTV(統合軽戦術車両)に搭載したシステムを米陸軍へ順次納入している。20kWという出力は分厚い軍事用装甲を貫くものではないが、プラスチック製の市販ドローンのローターやバッテリー、カメラの光学センサーを一瞬で焼き切るには十分すぎる威力を持つ。さらに2026年春には、第3世代となるモジュール式指向性エネルギー兵器「LOCUST X3」も発表されている。

大まかに整理すると、「AMP-HEL(米陸軍の高エネルギーレーザー実用化システム)」の中に「LOCUST(AV社製の高出力レーザー)」が組み込まれているという関係になる。ただし、今回の国境作戦で使用されたAMP-HELについて、米軍は具体的なLOCUSTの型式や搭載車両の仕様までは公表していない。

レーザーが変える「コスト交換比率」

なぜ米軍は国境警備にレーザーを導入したのか。最大の理由は、現在のドローン戦が抱える「コスト問題」を根本から解決できる点にある。現代の戦場では、数千ドル程度の安価な市販ドローンを迎撃するために、数十万ドルから場合によっては100万ドルを超えるミサイルが消費されるケースがある。これは防空側にとって極めて不利な「コスト交換比率(Cost-Exchange Ratio)」だ。一方、レーザー兵器にはミサイルのように発射する「弾薬」という概念がない。センサーで目標を探知・追尾し、高出力レーザーを照射し続けることで機体を墜落させる。一度システムが稼働状態になれば、十分な電力が供給される限り連続して交戦でき、1発あたりの照射コストはわずか数ドル程度に抑えられる。「安価なドローンの群れを、極めて安いコストで連続して撃破する」。レーザー兵器は、無尽蔵に投入されるドローン脅威に対する最適解と言える。

米国本土における「実運用」の重要性

今回のニュースを「米軍が初めてレーザーを実戦使用した」と表現するのは、実は正確ではない。米軍はこれまでも高エネルギーレーザーを海外の作戦地域で運用し、対ドローン対策への活用を進めてきたからだ。今回の最大の意義は、「米国本土(南部国境)という実任務環境で、カルテル関連の脅威に対して実運用された」という点にある。米陸軍自身も、今回の作戦を「南部国境でカルテル関連ドローンを撃破するためのレーザーシステムの初使用」と位置づけている。レーザー兵器は「いつか来る未来の兵器」から、「今ここにある米国の安全保障任務で実際に使われる兵器」へと一段階フェーズを進めたのである。

なぜ国境が「対ドローン兵器の実験場」となるのか

メキシコ国境が対ドローン技術の実運用環境として選ばれている背景には、民間空域における運用試験という側面もある。キネティック兵器(ミサイルや機関砲)は、破片や流れ弾が地上に被害をもたらすリスク(コラテラル・ダメージ)があるため、人家や民間機が存在する国内空域では使い勝手が悪い。国境地帯であればメキシコ領内に実弾を撃ち込みかねない。しかし、物理的な弾体を飛ばさないレーザーであれば、そのリスクを大幅に軽減できる。

2026年前半、米軍や関係機関は米連邦航空局(FAA)と連携し、民間航空機が飛行する可能性のある空域でレーザーを安全に運用するための検証を進めてきた。今回の実任務への投入は、そうした「国内での安全な運用基準」をクリアした延長線上にある。現在、米軍はレーザーだけでなく、電子戦(ジャミング)や他の迎撃手段を組み合わせた「多層型C-UAS」の構築を南部国境で進めている。

今回撃破されたドローンは、市販品を改造した比較的小型で低速な無人機だったと考えられる。安価で大量に投入でき、監視にも密輸にも使えるドローンは、犯罪組織にとっても極めて有用なツールとなっている。これに対抗するため、米軍が選んだ答えの一つが「レーザー」だった。今回、AMP-HELが3機のドローンを撃破したことで、レーザー兵器はその実用性と信頼性を大きく高めた。今後、南部国境での運用実績が積み重なれば、その技術は米軍の基地防空、艦艇防空、そして前線部隊の防護へと急速に波及していくだろう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!