

米国で、戦場での運用を想定したヒューマノイドロボットの開発が急速に進んでいる。中心にいるのは、米ロボティクス企業Foundation Future Industries(FFI)が開発する「Phantom MK-1」だ。同社は2026年2月、2機のPhantom MK-1をウクライナへ送り、実戦環境での試験を実施した。偵察や兵站、危険地域での作業に加え、将来的には武器を扱う「戦闘用ヒューマノイド」への発展も視野に入れており、米国の軍事ロボット開発における注目株になりつつある。
Phantom Mk-1スペック


Phantom MK-1は身長約175cm、体重約80kg、最大40kgの荷物を運搬できる二足歩行型ロボットだ。最大の特徴は、最初から「人間が活動する環境」での運用を意識して設計されている点にある。軍事基地や工場には、ドア、階段、車両、工具、武器など人間の操作を前提とした設備が大量にあり、車輪型や履帯型の無人車両とは異なり、人型ならこうした既存インフラをそのまま利用できる。現時点で想定される主な任務は、偵察、物資輸送、施設内の危険作業など、人間の兵士が晒される危険を肩代わりする役割であり、いきなり歩兵を置き換えるものではない。
We believe robotics has the potential to save many lives – especially for first responders. Follow along to support the mission. pic.twitter.com/DYCeaI0Syh
— Foundation Robotics (@foundation_robo) April 23, 2026
ウクライナへの派遣は、実戦環境に投入された初の人型ロボットとされる。ウクライナ国防省はコメントを控えているが、Ukrinformなどは米政府の後押しとウクライナ当局との協力の下で試験が行われたと報じている。ロボットは前線への弾薬や物資の輸送、危険地帯での偵察といった任務に投入され、砲撃やドローン攻撃の危険にさらされる人間兵士の代わりを一部担った。ただし現時点ではあくまで限定的な実地評価にとどまり、通常の歩兵部隊として戦闘に参加しているわけではない。現地報道では、バッテリー持続時間の短さと防水・防塵性能の欠如が課題として指摘されており、現行MK-1は雨や泥に対する十分な耐久性を備えていない。
We took Phantom MK1 to Vegas and then this happened… #lasvegas #humanoidrobot pic.twitter.com/3EamvfZCv3
— Foundation Robotics (@foundation_robo) June 5, 2026
さらに、Phantom MK-1が拳銃やショットガン、M16型ライフルを保持する映像も公開されており、2026年5月には迫撃砲弾を装填する様子も公表された。FFIのサンカイト・パタックCEOは同年7月、WIRED誌の取材に対し「kinetic(殺傷力を伴う)能力」の開発を進めており、数カ月以内に何らかの発表を行う可能性があると語った。ただし現段階では、人間向けに設計された銃器を扱える可能性を示す実証にとどまり、AIが自律的に交戦相手を選び発砲する体制が確立されたわけではない。同社は、武力行使の判断は原則として人間の統制下に置くとしつつ、状況によっては迅速な自律判断が必要になり得るとも述べている。
トランプ家の関与
同社を巡っては、トランプ大統領の息子であるエリック・トランプ氏が2026年初めから投資家として関与し、最高戦略顧問を務めていることも報じられている。ペンタゴンとの契約総額24百万ドルについても、WIREDの取材によれば、同社が独自に獲得したものではなく、買収したBoardwalk Robotics社や提携先IHMC経由で引き継いだ研究資金である可能性が指摘されており、実績の評価には慎重な検証が必要だ。政府と密接な関係を持つ企業が国防契約を拡大している構図は、利益相反の観点からも注視されている。
次期モデルPhantom Mk-2
次世代機「Phantom MK-2」の開発も進む。2026年7月にはAMDとの提携が発表され、組み込み向けの「Ryzen AI Embedded X100」シリーズを採用する予定だ。MK-2はIP67の防塵防水規格や100Gの衝撃耐性、360度視覚などを備える計画で、現行MK-1の弱点を補う狙いがある。防衛仕様版の価格は1機あたり約30万ドルと報じられているが、これはMK-1ベースの数字であり、MK-2固有の価格ではない点に留意したい。また、2026年内に年産1万機、2027年までに年産5万機規模という量産計画も公表されているが、これはあくまで同社側の目標であり、達成には不透明感が残るとの指摘もある。
FFIは自動車工場向けの産業用ロボットとしても実績を積み、2025年には24,000台超の車両生産に関与し、契約済み年間経常収益は1億ドルに達したという。米国土安全保障省とは南部国境の警備任務への活用についても協議しているとされる。米陸軍にも「xTechHumanoids」と呼ばれる人型ロボット関連の取り組みがあり、DARPAが2012〜2015年に主催した大規模なロボット競技会以来、米軍は人型ロボットの軍事利用を継続的に研究してきた。Phantom MK-1は、そうした流れの延長線上に位置づけられる。
Phantom MK-1が明日から兵士に取って代わるわけではない。だが偵察や兵站から段階的に軍事用途を広げ、その先に「武装した自律型ヒューマノイド」を見据えていることは間違いない。一方で、契約実績や量産計画の一部には誇張との指摘もあり、開発企業とトランプ政権周辺との人的・資金的な結びつきも含め、今後の展開を注視する必要がある。


参考・引用:Robot soldiers are being built in America to fight tomorrow’s wars – and the alarm is growing
