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米海軍が新型揚陸艇「LCU 1710」を初受領 戦車2両を運ぶ“海から陸への輸送力”を強化

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©Austal USA

米海軍は2026年8月14日、Austal USAが建造した新型揚陸艇「LCU 1710」を受領した。LCU 1700級として初めて米海軍に引き渡された艦艇であり、老朽化したLCU 1610級を置き換えるとともに、海兵隊の遠征作戦や島嶼部での兵站を支える新たな“海から陸への輸送手段”となる。引き渡し前にはINSURV(米海軍検査委員会)による受領試験が実施され、主要システムの性能や建造品質、任務遂行能力が確認されたほか、タグボートや水先案内人の支援なしで自力航行を開始できる能力も検証済みだ。

LCUは「Landing Craft Utility(汎用揚陸艇)」の略で、戦車や装甲車、兵員、物資を大型艦から海岸や港湾へ輸送する艦艇。高速性より搭載力と航続力を重視した、いわば“海上を走る大型輸送トラック”だ。今回の引き渡しは、Austal USAにとっても大きな意味を持つ。同社が米海軍へ引き渡す初のLCUであるだけでなく、同社にとって初めての鋼製艦艇の納入でもある。

戦車2両、または海兵隊員350人を輸送

©Austal USA

艦の全長は約42.4m(139フィート)、全幅約9.4m(31フィート)。最大速力は11ノットで、8ノット航行時の航続距離は約1,200海里。乗員は14人。搭載能力は、M1A1戦車2両、戦闘装備の海兵隊員350人、非戦闘員400人、または約170ショートトン(約154t)の貨物のいずれかに対応する。艦首には車両揚陸用ランプ、艦尾にはゲートを備え、車両・貨物の迅速な積み降ろしが可能。4基の乗員操作式兵器マウントのほか、軍用通信システム、航法レーダー、Amphibious Assault Direction System(AADS)も搭載する。その輸送力はC-17輸送機数機分に相当するとされる。

「上陸用ボート」だけではない役割

LCUは大型水陸両用艦のウェルデッキから発進し、艦と海岸を往復する“コネクター”として使われる一方、比較的長い航続距離を生かして船から船、港から港への輸送にも利用できる。米海兵隊が重視する「分散型前方基地作戦(EABO)」では、大規模な港湾施設を持たない西太平洋の島々へ燃料・弾薬・車両・食料を届ける兵站が作戦成立のカギを握る。大型揚陸艦が接近できない海岸でも、LCUを間に挟めば物資を運び込める。高速展開が強みのLCAC(エアクッション揚陸艇)に対し、LCUは重量物・大量輸送を担う——という役割分担になる。一方で専門家からは、最大11ノットという低速ゆえに、中国の接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力が及ぶ南シナ海のような係争海域では、LCU単独での抗堪性には限界があるとの指摘もある。実際の運用では強力な航空・艦艇の護衛が前提になるとみられ、LCACの速力とLCUの搭載力を組み合わせた運用が想定される。

計画には曲折があった

同計画はもともと2018年、ルイジアナ州の造船会社Swiftshipsが基本設計・建造契約を獲得して始動した。しかしその後、開発をめぐる紛争が生じ、米海軍はSwiftships社との契約を「契約不履行(default)」を理由に打ち切った。同社が建造していた最大7隻のLCUは、一隻も引き渡されない見通しだ。この結果、Austal USAが事実上唯一のLCU建造企業となっている。Austalは2023年9月にまず3隻分(9,150万ドル)の契約を受注し、その後の追加発注を経て最大12隻・契約総額は最大約3億7,970万ドルに達する見込みとなっている。LCU 1710は、このAustal契約の1番艦だ。

さらに米海軍は計画全体で32隻の調達を予定しており、Austal1社への依存を避けるため「第2の建造造船所」の選定を進めている。米議会の予算調整措置により、第2造船所の育成とそこでの9隻追加建造に約2億9,500万ドルが充てられる見通しだ。議会側は年2隻・1隻あたり約2,500万ドルというペースでの調達加速も求めている。

なおAustal USAは直近、艤装・艦体工程の一部を分担させる戦略的な外注契約をアラバマ州の造船会社Master Boat Buildersと締結したと発表しており、増産体制の強化を図っている。建造の詳細な経過も一次情報で確認できた。2024年6月に起工し、2025年8月22日に進水。2026年2月にドック試験、続いて海上公試を実施し、同年8月14日の引き渡しに至っている。

LCU 1710にミサイルや大型レーダーのような派手な装備はない。しかし太平洋での分散作戦では、展開した部隊への継続的な補給が不可欠であり、その“最後の輸送区間”を担うのがLCUである。今回の引き渡しは、単に新型艦艇が誕生したというより、米海兵隊が必要とする分散兵站能力の強化と、Swiftships社の契約破棄という混乱を経てようやく軌道に乗り始めた調達計画の一歩と捉えるべきだろう。

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