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米国、カリブ海に4000人規模の海兵隊派遣でベネズエラのマドゥロ大統領が激しく反発

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アメリカ政府は、中南米の麻薬カルテルによる薬物密輸の取り締まりを強化するため、カリブ海への軍事プレゼンスを大幅に増強した。この派遣部隊には、イージス駆逐艦3隻、攻撃型原子力潜水艦、さらにイオージマ水陸両用即応集団(ARG)と第22海兵遠征部隊(MEU)からなる約4000人の兵員が含まれる。この規模は麻薬カルテル対策としては異例の強力な戦力であり、カリブ海地域の緊張は著しく高まっている。特に、反米色の強いベネズエラ政府は、この動きに対し強く反発している。

US military deploying over 4,000 additional troops to waters around Latin America as part of Trump’s counter-cartel mission

America’s Rapid Response Force, Iwo Jima ARG-22nd MEU (SOC) Deploys for Global Operations

Maduro responde al despliegue militar de EE.UU. en costas venezolanas

トランプ政権以来、アメリカは中南米を支配する麻薬カルテルに対し断固たる姿勢で臨んでおり、カルテルを「テロ組織」に指定し、軍による積極的な取り締まりを推進してきた。その一環として、主要な麻薬密輸ルートとなっているカリブ海、特に南カリブ海に米海軍と海兵隊を展開してきたが、今回の派遣はその規模をさらに強化するものだ。

具体的には、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「USSジェイソン・ダナム」「USSサンプソン」「USSグレイブリー」の3隻がベネズエラ沿岸を含む南カリブ海に展開する。これに加えて、艦種は非公開ながら攻撃型原子力潜水艦1隻、さらにP-8ポセイドン偵察機が追加派遣される。

また、ワスプ級強襲揚陸艦「USSイオージマ(LHD 7)」、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦「USSフォート・ローダーデール」、そして「USSサン・アントニオ」から構成されるイオージマ水陸両用即応集団(IWO ARG)と、第22海兵遠征部隊(MEU)特殊作戦能力部隊(SOC)がバージニア州ノーフォークを出港した。彼らの目的地は公式には明らかにされていないものの、アメリカの主要メディアはカリブ海への展開を報じている。この部隊は4000人を超える規模であり、上陸作戦能力を持つ海兵隊が加わることで、地域の軍事的緊張は一層増大している。今回の派遣に空母は含まれていないものの、ワスプ級強襲揚陸艦はAV-8BハリアーやF-35Bのような短距離離陸垂直着陸(STOVL)戦闘機の発着艦が可能であり、航空支援能力も有している。

旅団規模の海兵隊派遣は、地上掃討作戦の可能性も示唆しているが、CNNの報道によれば、アメリカ当局者の一人は、今回の軍備増強は現時点では主に武力誇示であり、麻薬カルテルへの直接的な攻撃の意図を示すというよりも、むしろ政治的メッセージを送ることを目的としていると強調した。

反発するベネズエラ

このアメリカの動きに対し、南米の反米国家ベネズエラは激しく反応している。ニコラス・マドゥロ・ベネズエラ大統領は、アメリカの行動を「不条理で常軌を逸した脅威」と断じ、「帝国主義国家の挑発」であると強く非難した。彼はCARICOM(カリブ共同体)加盟国に対し、南米・カリブ地域における米軍活動への警戒を呼びかけた。また、米海軍が自国沖に展開することを「主権への脅威」とみなし、大規模な対抗措置として「国家民兵450万人」の動員を宣言し、「特別治安計画」を発動した。

マドゥロ大統領がこれほどまでにピリついているのは、自身の政権と身の安全に対する懸念があるからだと推測される。2020年3月、米司法省はマドゥロ大統領をコロンビアのゲリラ組織FARCと共謀し、アメリカに数百トン単位のコカインを密輸した容疑で「麻薬テロリズム」の罪で起訴した。米国務省は、マドゥロの逮捕・有罪につながる情報提供者に対し、最大1500万ドル(約20億円)の懸賞金を支払うと発表していたが、今月7日にはその懸賞金が5000万ドルに増額されている。マドゥロは南米における反米路線の急先鋒であり、アメリカが1989年にパナマに侵攻し、反米の独裁者であったマヌエル・ノリエガ将軍を排除・逮捕した事例を意識し、その「再来」を恐れていると考えられている。

マドゥロは2013年にウゴ・チャベス元大統領の後継者として政権に就任し、チャベスの社会主義的・反米的な政策を踏襲してきた。彼はロシア、中国、イラン、キューバとの結びつきを強化している。また、彼は独裁者としても知られ、議会を無力化し、反対派を弾圧し、メディア規制を強化してきた。2018年と2025年の選挙でも勝利し、三選を果たしているが、いずれも不正があったと指摘されている。彼の愚策によりベネズエラの経済は悪化の一途をたどり、治安も最悪の状況にあるため、国内には反マドゥロ勢力が多数存在するものの、彼は独裁体制を維持することで政権を掌握し続けている。

米軍がベネズエラ近海に展開することで、ベネネズエラ軍内部で「マドゥロを見限るべきではないか」という空気が強まる可能性がある。過去の南米諸国では、アメリカの圧力下で軍がクーデターを起こし、政権が転覆した例が多々あり、マドゥロはそのような事態を懸念している。また、もし軍が動かなかった場合でも、経済の悪化と独裁体制への不満から、国民が大規模な蜂起に及ぶ可能性も孕んでいる。

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