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極東でも戦火!ウクライナ軍は7000km離れたウラジオストクを攻撃

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ウラジオストクの武器博物館

2025年5月30日、ウクライナ国防省情報総局(HUR)は、極東に位置するロシア連邦のウラジオストクに所在する軍事施設に対し攻撃を実行した。当該施設はウクライナ国境から直線距離にして7000km、日本の新潟からは800kmの距離に位置する。

本攻撃は、ウクライナ国防省情報総局(HUR)による特殊作戦として、2025年5月30日に実行された。攻撃目標は、ウラジオストクのデサントナヤ湾付近に所在するロシア海軍第155独立親衛海軍歩兵旅団第47独立空中襲撃大隊の基地であった。この部隊は、ウクライナ侵攻作戦において前線部隊として活動していたことが知られている。報道によれば、現地時間午前中に2回の大きな爆発が発生し、基地内の人員、軍装備品、特殊機材に被害が生じたとされる。また、地元住民の証言によれば、少なくとも10台の救急車と避難用ヘリコプターが現場に到着し、損傷した機材が軍用トラックで搬出される様子が確認された。ロシア当局は、爆発の原因を「車両内のプロパン・ブタン混合ガスの爆発」と発表している。

本件作戦は、ウクライナから約7,000km離れたロシア極東地域で実施されたものであり、ウクライナの軍事情報機関がロシア連邦本土深部において作戦を遂行する能力を示すものと解釈される。ウラジオストクで実施された特殊作戦は、ウクライナ軍がこれまで行った軍事作戦の中で、最も遠距離に及ぶロシア連邦領内への攻撃と報じられている。これまでウクライナ軍は、ロシア連邦本土のベルゴロド州やクルスク州など国境付近への攻撃、並びにモスクワやタタールスタン共和国などへの無人機・ドローン攻撃を行ってきた。ウラジオストクのような極東地域への攻撃はこれまで報告されていない。また、これまでの最長攻撃距離は、2024年5月にロシア南西部オレンブルク州オルスクに所在するロシア軍レーダー施設を無人機で攻撃した1800kmであり、今回の作戦はその距離を大幅に超えている。攻撃方法については明らかにされておらず、確認できる映像や画像は現在のところ存在しない。ウラジオストクはウクライナから7000kmの距離にあり、国境から無人機を使って直接攻撃することは不可能と考えられる。考えられる可能性としては、ウクライナ国防省情報総局の工作員が現地に潜入し行った破壊工作、もしくは現地採用の工作員によるものがある。情報総局はSNS等を利用し、ウクライナへの協力者、ロシア政府や軍に反発を持つ者、若者などをリクルートして、報酬と引き換えにスパイ活動や破壊活動を扇動しており、ロシア人を現地で利用して攻撃を行った可能性がある(これはロシアも行っている)。これまで極東地域が攻撃されることはなかったため、警備体制が脆弱であった可能性も考えられる。

攻撃は心理的影響を与える為か

今般攻撃された基地は、ロシア海軍第155独立親衛海軍歩兵旅団第47独立空中襲撃大隊の基地である。同旅団は、ウクライナ侵攻作戦の初期段階から投入されており、2022年2月24日のロシア連邦によるウクライナ侵攻初日には、北部キーウ州、東部ドネツィク州の戦闘に投入された。しかし、この戦闘において団員1600名のうち5割以上の損害を出したとされる。その後もマリウポリなど複数の戦線で活動し、最近ではクルスク州やハルキウ州などでの前線戦闘に参加している。度々、ウクライナ軍との交戦において大きな損失を被ったことが報じられており、最近では2024年11月に、ウクライナ軍第47独立機械化旅団との戦闘で、同旅団の車両10両が撃破されるなどの損害が発生した。ウクライナでの戦闘において度重なる損害を受けるものの、動員と再編を繰り返し、前線に投入されている。

しかしながら、遠く離れた当該旅団基地がウクライナへの攻撃拠点として使用されているわけではなく、基地への攻撃が戦線に与える影響は皆無に近いと考えられる。むしろ、破壊活動を行うのであれば、極東からの部隊や物資移動を停滞させるために鉄道や空港を破壊する方が効果的であろう。実際、極東から多くの軍事物資がウクライナに移送されているのに加え、北朝鮮から送られてくる軍事物資の輸送拠点だ。今回の攻撃目的は、ロシア国内の安全保障に対する心理的な影響を与えることにあるとされる。今回のウラジオストクへの攻撃により、ロシア軍は極東にも目を配らなければならなくなる。それはすなわち、サハリンやシベリア、不法占拠する北方四島にも影響を及ぼすであろう。ウラジオストクが攻撃された事実は、ロシア軍および国民にとって予想外の出来事であり、ウクライナから遠く離れた”安全圏”と思われていた地域が脅威にさらされる可能性を示唆した。これにより、ロシア国内の防衛体制や戦略の再考を迫ることとなり、士気や国民の信頼にも影響を与える可能性があるとされる。

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