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派遣された原潜は?トランプが対ロシアで原子力潜水艦2隻の配備を命令!

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US Navy

ロシアのドミートリー・メドヴェージェフ安全保障会議副議長の挑発的な発言に対し、アメリカのトランプ大統領は異例とも言える措置に出た。ロシア近海への原子力潜水艦2隻の派遣を公表したのである。潜水艦は秘匿性がその活動の根幹をなす兵器であり、その派遣を公にするのは極めて異例の事態だ。

トランプ大統領はこれまで、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナ侵攻の停止と停戦を繰り返し警告してきた。7月14日には、北大西洋条約機構(NATO)を通じてウクライナに最新鋭兵器を供与すると発表。さらに、ロシアに対して50日以内に和平合意に応じなければ追加制裁を科すという最後通告を発した。この期限は後に約10日間短縮され、8月8日までとされた。これに対し、クレムリンは「脅しは受け入れない」と明言。このクレムリンの姿勢に呼応するかのように、メドヴェージェフ氏は7月28日、自身のX(旧Twitter)に以下のコメントを投稿し、状況は一層緊迫化した。

「トランプはロシアと最後通告ゲームをしている。50日か10日 …彼は2つのことを覚えておくべきだ。ロシアはイスラエルでもイランでもない。それぞれの新たな最後通告は脅威であり戦争への一歩だ。ロシアとウクライナの間ではなく、彼自身の国との間で。スリーピー・ジョー(ジョー・バイデン)の道を行くな!」

さらにメドヴェージェフ氏は別の投稿で、冷戦時代にソ連で開発された「Dead Hand(死の手)」システム、すなわち核攻撃を受けた場合に自動的に報復を行うシステムが存在することを示唆し、トランプ大統領を強く牽制した。メドベージェフ氏は以前から過激な発言をする事で知られているが、トランプ氏はこの挑発に反応してしまった。

これらの投稿を受けて、トランプ大統領は8月1日、自身のSNSで以下のように投稿し、2隻の原子力潜水艦派遣を公表した。

「ロシアの元大統領であるドミトリー・メドベージェフ(現在ロシア連邦安全保障会議の副議長)が発した非常に挑発的な発言を基に、私は2隻の核潜水艦を適切な地域に配置するよう命じました。これらの愚かで扇動的な発言が単なる言葉以上のものではないことを願っています。言葉は非常に重要であり、しばしば意図しない結果を引き起こすことがあります。このケースがそのような事例にならないことを願います。」

トランプ大統領は、メドヴェージェフ氏の恫喝を受けて2隻の原子力潜水艦の配備を命じたと発表したが、具体的な場所や艦種は明かされていない。潜水艦の派遣を公にするのは、その秘匿性が活動の基本であるため、極めて異例の措置である。これは、国民や国際社会に対する政治的パフォーマンスであり、「核抑止力の存在を視覚化」することで、ロシアに対する抑止表現の一環と見られている。

派遣された原子力潜水艦は?

US Navy

アメリカ海軍は現在、以下の3種類の原子力潜水艦を運用している。

  1. 攻撃型原子力潜水艦(SSN: Submarine, Nuclear-powered, Attack)
    • 主な任務は敵潜水艦や水上艦の追跡・撃破、偵察、特殊部隊の展開などである。
    • 現在の主力はバージニア級(20隻)、冷戦期の主力だったロサンゼルス級(25隻)、特殊作戦に特化したシーウルフ級(3隻)が運用中。
    • VLS(垂直発射システム)を搭載し、ハープーン対艦ミサイルとトマホーク巡航ミサイルが主兵装であり、核兵器は搭載していない。
  2. 弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN: Submarine, Nuclear-powered, Ballistic missile)
    • 核弾道ミサイル、戦略爆撃機と並ぶアメリカの「核の三本柱」の一つである潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の役割を担う。
    • 核弾頭を搭載可能なトライデント弾道ミサイルを搭載。
    • 現在運用中のオハイオ級(10隻)は、最大24基のトライデントII D5核弾頭付き弾道ミサイルを搭載可能。
  3. 巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN: Submarine, Nuclear-powered, Guided missile)
    • 戦術・戦略打撃用に多数の巡航ミサイルを搭載する。
    • オハイオ級のうち4隻がSSGNに改良され、最大154発のトマホーク巡航ミサイルを搭載する。

今回、明確な抑止力を目的とするならば、核ミサイルを搭載したSSBNであるオハイオ級が派遣された可能性が高いと推測される。しかし、オハイオ級SSBNは「見えない核抑止力」として、常に4〜5隻が海中に展開している事は「公然の秘密」であり、現在の世界情勢を考慮すれば、ロシア近海には、すでに展開していると思われ、それを改めて公表したところで、正直なところ、劇的な効果は期待できないかもしれない。

この公表は、単なる既存の展開状況の再確認ではなく、SSNやSSGNのさらなる増派を示唆している可能性もある。しかし、ロシアが原子力潜水艦の派遣という脅しに屈するとは考えにくく、逆にロシアも対抗措置として原子力潜水艦を派遣する可能性も否定できない。冷戦時代に見られたような、両国の原子力潜水艦同士による緊迫した「睨み合い」が懸念される状況へと発展する可能性も孕んでいる。

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