

ロシアが開発を進める新型機「Yak-130M(ヤク130M)」が、2026年6月25日にイルクーツク航空工場で初飛行を実施した。ベースとなったYak-130は、戦闘機パイロットを育成するための複座型高等練習機だが、Yak-130Mはレーダーや光学センサー、電子戦・自衛装置を追加し、実戦能力を大幅に高めている。ロシア側はこれを、訓練だけでなく空対空・空対地任務、さらには大型無人機(UAV)の迎撃も担う「軽戦闘機」と位置づけている。
Yak-130を「戦える航空機」へ
The Yak-130M is capable of serving not only as a close air support (CAS) platform and a cost-effective successor to the Su-25, but also, thanks to its advanced AESA radar, as an airborne air-defense platform against drones and cruise missiles. https://t.co/4HXnb5znvu pic.twitter.com/8iqZIKPn98
— H. Memarian (@HEMemarian) June 25, 2026
Yak-130はもともと4〜5世代戦闘機のパイロット訓練用に開発されたジェット練習機で、1996年に初飛行している。兵装を搭載して軽攻撃任務に使える点が特徴で、ロシアはこれをベースにさらに戦闘能力を高めたYak-130Mを開発してきた。構想は2024年、モスクワ近郊クビンカで開催された軍事フォーラム「Army 2024」でヤコブレフ社が初めて公開した。従来型よりも空対空ミサイルや精密誘導空対地兵器の運用能力を拡大し、「訓練機としての機能を維持しながら本格的な軽戦闘機にする」という構想が示された。
そして2026年6月25日、1号機の試作機が初飛行に成功。テストパイロットのアレクサンドル・グスコフ氏とアンドレイ・ヴォロパエフ氏が搭乗し、飛行は約50分間、高度2,000m、速度600km/hに達して予定された試験項目をすべて完了したとロステックは発表している。機体に搭載される装備のうち半数以上が新規または近代化されたものだという。さらに8月1日には2号機も初飛行しており、試作機は計3機体制で試験が進められている。
最大の変更点は「センサー」
Yak-130 Unveiled to the Public for the First Time
— 🇷🇺 STANISLAV KRAPIVNIK 🇷🇺 (@STANISKRAPIVNIK) September 9, 2026
Russia has publicly presented the Yak-130M training and combat aircraft for the first time. The unveiling of the new aircraft took place at the El Alamein International Airshow 2026 in Egypt. This is no longer just a "flying… pic.twitter.com/h7dtnGo6GB
注目すべきは新しい航空電子機器だ。ロシア側によれば、Yak-130Mには「BRLS-130R」航空レーダー、「SOLT-130K」光学・レーザー・赤外線/テレビ式センサー、「President-S130」自衛・電子戦システム、「KSS-130」通信システムなどが搭載される。練習機の任務はパイロット育成が最優先だが、戦闘機として運用するには自ら目標を探知・識別し、兵器を誘導しながら敵の攻撃から自機を守る必要がある。そのためYak-130Mでは搭載兵器を増やすだけでなく、目標を探知する「目」と自機を守る「盾」にあたるシステムまで強化された。
空対空ミサイルや精密誘導兵器にも対応
兵装面でも能力が拡大されている。ロステックによれば、短距離空対空ミサイル「RVV-MD」、レーザー誘導爆弾「KAB-250LG-E」、誘導爆弾「K08BE」などの運用が可能になった。「爆弾を搭載できる練習機」から、レーダーや光学センサーで空中・地上目標を攻撃できる戦闘機へと近づいている。もっともYak-130Mは、Su-30SMやSu-35のような制空戦闘機とは異なるカテゴリーの機体だ。あくまでYak-130をベースとした軽量双発機であり、その価値は大型戦闘機並みの性能ではなく、比較的低コストで一定の戦闘能力を持たせられる点にある。
「大型ドローン」も標的に
ロシア側はYak-130Mの任務として、地上・空中目標に加え「大型UAV」の撃墜を明確に挙げている。ウクライナによる長距離無人機を用いた攻撃がロシア領内で相次ぐ中、こうした脅威への対処が任務として重視されているとみられる。高価な大型戦闘機をすべての空中目標対処に投入する必要はなく、レーダーや光学センサーを備えた軽量機に一部任務を担わせる発想には一定の合理性がある。ただし実戦でどの程度効率的に大型UAVを撃墜できるかについて、現時点で公開された実戦データは限られており、あくまで開発側の想定として見る必要がある。
輸出市場も見据える
Yak-130Mには輸出市場を意識した側面も強い。2025年11月のDubai Airshowで静態展示という形で世界に初めて公開された。ヤコブレフは、より大型で高価な戦闘機を必要としない国からの関心を期待しており、Su-30やSu-35より安価な「軽戦闘機」として売り込むことが大きな狙いの一つだ。イルクーツク航空工場のアンドレイ・ソイノフ工場長は、ベトナムとの間で同機18機の輸出契約が最終段階にあると明らかにしている。実現すればYak-130Mにとって初の輸出契約となる。量産機の納入開始は2028年を予定しており、2026年9月時点では依然として開発・試験段階にあり、量産配備には至っていない。
「練習機」と「軽戦闘機」の境界が変わる
Yak-130Mが示すのは、一つの機体の近代化だけではない。従来、練習機と戦闘機には比較的明確な役割分担があった。しかし近年は、センサーや精密誘導兵器、電子戦装置の発達によって、練習機をベースにした軽戦闘機というカテゴリーが改めて注目されている。基本設計は既存のYak-130を利用しながら、訓練から実戦まで対応できる機体へと発展させる試みだ。
戦場で無人機の存在感が急速に高まるなか、戦闘機には「高性能な敵戦闘機を倒す能力」だけでなく、「増え続ける無人機をいかに効率よく処理するか」という新たな役割が求められている。Yak-130Mはまだ試験段階にあり、実際の戦闘能力や費用対効果の判断には今後の試験結果や運用実績を待つ必要がある。しかし、練習機だったYak-130を軽戦闘機へ変貌させるロシアの構想は、「高価な戦闘機だけが空中戦力ではない」という現代航空戦の変化を考えるうえでも注目される存在といえる。
