

アメリカ陸軍はトランプ政権下の軍事費削減、欧州NATO駐留軍の削減といった圧力に伴い、軍の再編と規模縮小を検討しており、最大9万人の現役兵力の削減を検討していると報じられている。
Military.comの報道によれば、米陸軍は現役兵士を最大9万人削減することを密かに検討している。現在の陸軍兵力は45万人なので36万人まで減少する可能性があるといい、実現されればここ数十ドルの内8%、およそ500億ドルを削減するよう命じており、この削減計画はその一環になる。これを指揮するピート・ヘグゼス国防長官は軍の多様性・公平性・包摂性(DEI)政策や気候変動対策といった政策を批判していた為、軍もまずはこれらの活動の廃止を行ったが、年間8%の削減目標には程遠いため、陸軍兵力の削減を検討。軍内部協議の結果、最大9万人の兵力削減が必要という試算に至ったとされる。
Army Planners Are Weighing Force Reductions of Up to 90,000 Active-Duty Soldiers
もちろん、単純に兵力を減らすわけではない。軍の計画立案者は、陸軍を鈍い従来型の軍隊から、将来の紛争に適した、より機敏で専門的な軍隊へと作り変えようとしている。陸軍報道官シンシア・スミス氏はFOXニュースの取材に対し、「我々は人員と諸経費を削減しながら、戦闘力を強化している。最終的な戦力は増加するかもしれない。よりスリムで、より強力で、より大きな陸軍になるだろう」と語っている。特に中国の脅威が増大しているとみられる太平洋地域での紛争に適したものに再編、再配置を計画しているとされる。ただ、今年3月の報道によれば、バイデン政権下の昨年7月に決定していた沖縄駐留米軍の再編強化計画を軍事費削減のために中止するという報道が出ている。この計画を中止すれば、11億8千万ドルが浮くとされる。自衛隊は対中国、台湾有事に備え、米軍との連携を強化するため、3月24日に統合作戦司令部を発足させており、計画が中止になれば日米の連携にも大きな影響が及ぶ可能性がある。対中国強化の為の再編計画中止は米軍指導部の方針と相反し、与党共和党内部からの懸念の声も大きい。トランプ大統領はロシアに対する抑止力としてNATO加盟国に駐留する在欧アメリカ軍の削減及び撤退させる事を度々示唆しており、これらの再配置も考えれるが、国防総省の上級政策スタッフは「欧州の部隊は戦車や装甲車からなら機甲部隊を中心としており、これら大規模陸上部隊は太平洋の沿岸地域や島峡部に適さない、役に立たない」と述べており、インド太平洋に再配置させることも難しいとされ、撤退させれば、在欧米軍は行き場を失う事になる。
米陸軍は防衛費削減を要求される前の昨年から軍の構造を改革を行い兵力の再編を実施。兵力の5%にあたる24,000人の兵員を削減しているが、これはイラク、アフガニスタンといった中東に派遣されていた部隊で、撤退及び、部隊が縮小した今、反乱鎮圧、治安維持など当たっていた部隊は不要になっており、これらに従事していた約1万人が削減された。ただ、このポストは既に空席になっていたので、実際に人員が削減されたわけではない。この他、外国軍を訓練するための歩兵/機甲戦闘旅団、騎兵中隊、治安部隊支援旅団、約1万人のポジションも段階的に廃止されている。この他、中東での対テロ戦争、非対称戦争も以前より落ち着き、余剰なった特殊部隊3000~4000人を自然減させている。この空いたリソースに現在戦に対応するための防空・対ドローン部隊や、サイバー、諜報、長距離攻撃能力を備えた5つの新しい任務部隊を含む、他の重要な任務の部隊を追加することを計画している。
米陸軍は国家防衛戦略の下、494,000人の兵士を保持できる構造を持っているが、ここ数年、新兵募集が目標人員に届かない事が続き45万人を下回っていた。そのため、入隊条件の間口を広げたり、広報活動を活発化するなどして、米陸軍は2024年に5万5000人という目標人員を達成したばかりであった。これを36万人まで減らすと再度、45万人規模まで持っていくのは容易ではない。ある当局者はMilitary.comに対し、兵力削減の際に明確な人材確保戦略がなければ、優秀な兵士が大量に失われる可能性があると警告。 「優秀な人材を維持する明確な計画なしに人員削減を行えば、他に選択肢のある優秀な人材を失うリスクがある」と述べた。