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米海軍は海外での艦船建造を計画、米国と韓国の軍艦メーカーが提携!

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©HII

アメリカ最大の軍用艦造船企業HII(ハンティントン・インガルス・インダストリーズ)と韓国の現代重工業が船舶建造協力に関する契約を締結した。国内造船企業が衰退する中、アメリカ海軍は中国人民海軍との軍拡競争に優位に立つため、海外での艦船建造を検討しており、それに向けた一環とされる。

CNNの報道によれば、バージニア州に本拠を置くHIIと韓国の現代重工業は4月7日月曜、メリーランド州での防衛展示会で覚書(MOU)に署名した。HIIのブライアン・ブランシェット執行副社長は「本日の合意は、国家安全保障を支援するために米国の造船能力を拡大するあらゆる機会を模索するという我々の決意を反映している。造船業の同盟国と協力し、ベストプラクティスを共有することで、この覚書は高品質な船舶の納入を加速させる真の可能性をもたらすと確信しています。このMOUは、世界最先端のイージス艦を建造する能力を持つ韓国と米国の2大造船会社間の初の協力となるため、特に意義深い」と述べた。

HIIは米国最大の軍艦造船企業でニミッツ級、ジェラルド・R・フォード級といった原子力空母を建造、燃料交換が行える唯一の企業であり、ジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートと並び原子力潜水艦を建造できる2社の内1社になる。米海軍艦艇の7割がHIIによって建造されており、米海軍艦隊の屋台骨を支えている。

中国に次いで世界2位の造船竣工量を誇る韓国において現代重工業と傘下の韓国造船海洋は韓国最大の造船企業になる。現代のHPによれば韓国の蔚山に世界最大の造船所を運営しており、世界の船舶の10%を建造しているという。韓国海軍の重要なサプライヤーでもあり、最新のイージス艦である正祖大王級駆逐艦、大邱級フリゲート艦、島山安昌浩級潜水艦を建造し、納入している。

今回、米韓最大の軍艦造船企業がタッグを組んだのは脅威を増す中国に対抗するためだ。海洋進出を進める中国は海軍を驚異的なスピードで拡大している。海軍力においては11隻の原子力空母を擁する米海軍が未だ世界最大である事には変わりはないが、艦船数においては既に中国海軍が米海軍を凌駕。単純に量だけではなく、近代化を推し進め、質も向上している。2030年代には量と質も含めて米海軍を追い抜くとも言われており、米国も海軍の強化、近代化に着手。米議会予算局によると、米海軍は2024年の295隻体制から2054年までに390隻に艦隊を拡大する計画で、老朽艦の退役と364隻の新造艦の導入を計画、総費用は1兆750億ドルと予測されている。しかし、その中でネックになっているのが、国内の造船能力だ。現在の米国にこの期間でこれだけの艦船を製造できる造船能力はない。ウォールストリートジャーナルによれば、2014年年から2023年にかけて中国が157隻の新造艦を進水する中、米国は67隻にすぎなかったとされる。

第二次大戦時、米国は11の国営海軍造船所と60を超える民間造船所を擁し、日刊駆逐艦、週刊護衛空母、月刊正規空母といわれるように驚異的な造船能力を誇っていた。しかし、戦後の軍縮、アジアの造船企業の台頭もあり、米国の造船能力は低下。世界最大の海軍を擁し、軍艦を建造するHIIやジェネラル・ダイナミクスは未だ世界最大級の軍艦造船能力を持っているが、修理やメンテナンスの対応だけでも手一杯で軍艦メーカーだけでは需要を賄えない。他の国内造船企業に協力を仰ごうにも商業船舶においては中国(1位)、韓国(2位)、日本(3位)が90%のシェアを握っており、国内の商業造船メーカーは衰退。施設は老朽化、コストも高く、国内の造船企業を買収して建造ラインを増設しようと思っても簡単ではない。そこで、検討されているのが同盟国の造船企業での建造だ。特にイージス艦においては日本と韓国はアメリカ海軍と同じ、イージスシステムを搭載した護衛艦・駆逐艦を建造しており、米海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦が建造可能とされる。また、現代重工業が建造する排水量8,200トンのイージス艦搭載駆逐艦「世宗大王級」は同クラスのイージス艦の半分のコストで、通常の3分の1の建造期間で建造されたと伝えられており、米海軍の要求を満たす。日本であれば三菱重工業とジャパンマリンユナイテッド(JMU)が海自向けのイージス艦を建造しており、コストは分かりませんが日本も米海軍の要求を満たす艦船を建造する能力はある。

しかし、1965年に制定された軍艦の海外建造を禁止する「バーンズ=トレフソン修正案」により、現状、米海軍の艦船を海外企業に発注することはできない。しかし、中国の海軍力増強と米国の造船能力の弱体化に対する懸念の高まりを受け、米海軍が相互防衛条約を締結している国、またはNATO加盟国に造船を委託できるよう法案を改正する動きが出ている。ただし、その場合、米国の造船所よりも低コストで、中国と関係、または資金提供している造船所であってはならないという条件がある。

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