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どうした米海軍!?僅か半年で3機のF/A-18スーパーホーネットをイエメンで失った

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アメリカ海軍の主力艦載戦闘機F/A-18スーパーホーネットが、この半年で3機失われた。これらは全て、イエメン沖の紅海で任務についていた空母ハリー・S・トルーマン(CVN-75)の艦載機である。

アメリカのトランプ大統領とオマーン外相は5月6日(火)、イエメンのフーシ派との停戦を発表した。これは、フーシ派が紅海を通過する船舶への攻撃停止を約束したことを受けた措置で、米軍もフーシ派への攻撃を停止した。ホワイトハウスはフーシ派が「屈服した」と述べたが、フーシ派のアッディーン外相は国営サバ通信を通じて、「ワシントンがサヌアが降伏したと主張するのは馬鹿げているが、それは重要ではない」とし、「イエメンの勝利が力関係を大きく転換し、イエメンに有利な状況を作り出し、アメリカに侵略と攻撃を中止させることができた」と停戦を自らの勝利と表現した。このように両者の主張には隔たりがあるものの、アメリカとイエメンの間で停戦が実現した。その一方で、イエメン沖の紅海に展開する米海軍で事故が発生している。

2025年5月6日

5月6日火曜、空母ハリー・S・トルーマンの艦載機F/A-18スーパーホーネット戦闘機が着艦に失敗し、紅海に落下した。米メディアの報道によれば、落下した機体は「レッド・リッパーズ」として知られるVFA-11攻撃戦闘飛行隊に所属する2人乗りのF/A-18Fスーパーホーネットで、夜間着艦を試みたものの、機体の着艦フックが飛行甲板に張られ、艦載機の着艦を補助するケーブル「アレスティングワイヤー」に引っかからず、そのまま飛行甲板から落下したとみられる。機体は海中に落下したが、パイロット2名は無事脱出し、第11ヘリコプター海上戦闘飛行隊所属のMH-60シーホークヘリコプターによって救助された。幸い2人とも軽傷で済んだ。機体は海中に沈み回収されていない。原因が着艦フック、アレスティングワイヤーどちらにあったのか分かっていない。米国防省はスーパーホーネットの損失は認めているが、損失原因については公表しておらず、調査中としている。国防省の報道官は当時、フーシ派による攻撃中ではなかったと発表している。

2025年4月28日

スーパーホーネットの損失はここ1週間で2機目だ。4月28日、空母ハリー・S・トルーマンの格納庫を移動中だったF/A-18Eスーパーホーネットが制御を失い、曳航車両とともに海に転落した。パイロットは搭乗していなかったが、作業中だった水兵2名が落下前に機体と車両から飛び降り、負傷した。この時、空母トルーマンはフーシ派の攻撃を受けている最中で、回避行動の為に急旋回を行っており、その遠心力で海中に機体が飛ばされたとされる。これは空母トルーマンが急旋回しなくてはならない程の回避行動をとらなければならかった事態に陥ったことが問題視されている。

2024年12月22日

また、2024年12月22日には同じく空母トルーマンのF/A-18Fスーパーホーネットが給油任務中に空母打撃群に所属するタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦ゲティスバーグ(CG-64)のSM-2対空ミサイルによって撃墜されるという「フレンドリーファイア」で機体を失っている。幸いパイロット2名は脱出し、無事だった。

米海軍によれば、F/A-18戦闘機1機あたりの価格は約6000万ドルで、つまり、米海軍は6カ月足らずで約1億8000万ドル相当の戦闘機を失ったことを意味する。現在、海軍戦闘機はF-35Cに徐々に移行しつつあるが、スーパーホーネットは現在も420機が運用されるなど、海軍戦闘機の主力だ。スーパーホーネットが持つ多用途性、信頼性、航続距離はF-35Cで完全に置き換えることはできず、米海軍が作戦行動する上で必要不可欠な機体だ。2025年で生産がストップする事が決定した中、補充はきかない。そもそも、スーパーホーネットを置きかえるのは現在、開発中で20230年代半ばの就役を予定している第6世代空母搭載型ステルス戦闘機F/A-XXになり、まだ10年ほど時間がある。

今回、戦闘任務ではない状況で3機が不慮の事故により失われたことは大きな問題だ。幸いにも死者は出ていないが、数ヶ月にわたるフーシ派との戦闘という過酷な任務を続けた空母トルーマンが今後も遂行し続ける能力があるのかという点には疑問が残っている。昨年9月にイエメンでの任務のためアメリカを出航した同艦は、2度の任務延長を経て現在も配備されており、艦と乗組員の疲弊が懸念されている。通常の任務期間は半年ほどだが、既に9か月に及んでいる。ただ、これまでも状況に応じて10か月程に伸びる事はあった。今回の停戦合意は成立したものの、履行状況の監視はしばらく続く見込みであり、任務は継続されると思われる。停戦が順守されれば、乗組員の緊張は幾分緩和されるだろう。

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