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海上自衛隊が採用するV-BATはウクライナの実戦で証明された無人偵察機

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US Navy

今年1月、海上自衛隊が導入を発表した垂直離着陸(VTOL)式無人偵察機V-BATは、アメリカ陸軍および海軍において実績を重ね、ウクライナにおける実戦での性能が実証された無人機であり、各国で採用が促進されている。

今年1月、海上自衛隊は海上艦艇搭載用無人航空機として、米国の航空宇宙・防衛技術企業であるShield AI(シールドAI)が開発・製造する小型無人航空機「V-BAT」を選定した旨を発表した。「艦載型UAV(小型)」として6機を40億円にて調達するものであり、これは海上自衛隊が建造中の新型「1,900トン型哨戒艦」の無人艦載機として運用される予定である。同艦は今後10年間で12隻の建造が計画されており、今後の運用評価次第では更なる調達が見込まれる。V-BATは、有人哨戒機やヘリコプターと比較して、運用に必要な人員が少なく、省人化に寄与し、海上自衛隊の人手不足を補い、有人機の任務を補完することを目的としている。既に米海軍艦艇での実績があり、相互運用性が期待される。

V-BAT(MQ-35)

V-BATは、主に軍事用AI及びドローンの開発を手掛けるShield AI(シールドAI)社によって開発・生産された、情報収集、監視、偵察等のISR活動を目的とした無人偵察機である。元来は2016年頃に米国のMartin UAV社が開発を開始し、その後、2021年に同社がシールドAIに買収された。V-BATは2021年にアメリカ海軍に採用され、米軍内では「MQ-35」と命名された。2023年には陸軍、翌2024年には沿岸警備隊にも採用されている。

V-BATは垂直離着陸(Vertical Take-off and Landing)に由来する名称であり、単発ダクトファンによる垂直離着陸機能を備えている。全長3.8m、翼幅2.9m、重量57kgの中型無人機に分類され、4.6×4.6m四方の狭小空間からの運用が可能であり、水上艇のヘリ甲板等からの離着陸も実施可能である。専用のカタパルトや回収装置を必要とせず、哨戒艦のような小型艦艇においても、一定のスペースが確保できれば運用可能である点が、米海軍、沿岸警備隊、海上自衛隊に採用された主要因となっている。最高速度は167km/h、最大10~13時間の航続時間、最大500km以上の航続距離を有し、広範囲にわたる情報収集・監視・偵察(ISR)活動に対応する。水平飛行モードでは揚力を効率的に得て飛行し、11.3kgのペイロードにて電気光学(EO)センサーや中波長赤外(MWIR)センサーといった光学機器を搭載し、高精度な情報収集を実現する。シールドAI社が開発したHivemind AIを搭載し、高度な自律飛行に加え、GPSや通信が遮断された環境下でも運用可能な耐電子戦性能を有する。

ウクライナで証明された性能

mod ukraine

V-BATは、軍事支援の一環としてウクライナ軍にも供与されており、シールドAIは、V-BATがウクライナにおける過酷な実戦環境下でその性能を実証していることを公表している。ウクライナ特殊作戦軍は、2024年8月24日に本プラットフォームを初めて運用し、ロシア占領地域に向けて60kmの飛行を実施、ロシア軍のブーク防空ミサイルシステムを特定した。V-BATから伝送された座標データを基に、高機動ロケットシステムHIMARSによる精密攻撃が実行され、ブーク及びその防空部隊は無力化された。この際、V-BATは6時間にわたり上空を飛行し、作戦を支援した。

2024年11月19日、ウクライナ海軍に供与されたV-BATは、黒海沿岸のキンブルン半島近辺において偵察任務とは異なる作戦を実施したことが確認された。V-BATはオデーサ地域から出撃し、ロシア軍の動向および兵站に関する情報を収集した後、安全に帰還を果たした。ロシア軍は無人航空機およびドローンに対する電子戦を展開しているが、V-BATの耐電子能力も実証されており、シールドAIはV-BATがロシアの電子戦網を突破可能な唯一の長距離無人偵察機であると主張している。実際に、現在までにV-BATの損失は確認されておらず、無事に帰還していることが窺える。

ウクライナ軍に対するV-BAT無人航空機(UAV)の供与機数に関して、正確な機体数は公には明らかにされておらず、そもそもV-BATの供与が公式発表されたのは2025年2月である。シールドAI社はウクライナ無人システム部隊(Unmanned Systems Forces, USF)との協力を開始し、V-BATの運用に着手した旨を報告した。5週間のパイロット訓練プログラム完了後、同社はウクライナに対し追加で4機のV-BATドローンを納入することを確約した。V-BAT無人航空システムは無人システム部隊(USF)と連携して活動しており、ウクライナ国内において130回以上の出撃を完了している。ウクライナ国防省は戦場における成果を鑑み、シールドAI社に対して200機のV-BAT調達を要請したと報じられている。ウクライナ軍はこれまでに少なくとも数十機のV-BATを受領しており、今後、更なる機体の供与が見込まれる。

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