

23日月曜日の夜、トランプ大統領はSNSへの投稿において、イスラエルとイランの間で「完全かつ全面的な」停戦が成立したと発表しました。これに先立ち、イランが先日のアメリカによる核施設の爆撃に対する報復としてカタールにある米軍基地への攻撃を実施しましたが、事前に米国政府に通知を行っていました。トランプ大統領はこれに対し謝意を表明しました。これらは極めて管理された政治的・軍事的なメッセージの応酬であり、「地政学的プロレス」と見なされています。
アメリカは21日土曜、「ミッドナイト・ハンマー作戦」と称されるイランの核施設3カ所への攻撃を実施しました。B-2ステルス爆撃機7機がイラン中部のフォルドゥおよびナタンツの核施設に対し、バンカーバスター(地中貫通弾)「GBU57」を14発投下し、オマーン湾に展開していた米海軍の原子力潜水艦はトマホーク巡航ミサイル30発をイスファハンに向けて発射しました。トランプ大統領は「今後イランが和平に応じなければ、さらに多くの標的を攻撃する」と警告を発しましたが、イランの最高指導者ハーメネイ師は報復を宣言します。また、イラン議会が世界の石油供給の2割が通過するホルムズ海峡の封鎖を承認したことで、世界中に緊張が走りました。
そして23日夜、イラン軍は米軍による核施設攻撃に対する報復措置として、カタールのドーハに位置する中東最大のアルウデイド米空軍基地に対し弾道ミサイル攻撃を実施したと発表しました。イラン軍中央司令部は、「イランは領土、主権、国家安全保障に対するいかなる攻撃も、いかなる状況下でも見過ごすことはない」とする声明を発表。作戦は「Beshararat Fatah(勝利の朗報)」と命名され、「壊滅的かつ強力なミサイル攻撃を行った」と発表されました。攻撃はイスラム革命防衛隊(IRGC)によって実行され、作戦で使用されたミサイルの数は、米国がイランの核施設への攻撃で使用した爆弾の数と同数であると述べました。米軍は14発のバンカーバスターを投下しており、つまり、14発のミサイル攻撃を行った形です。迎撃はカタール軍によって行われたとされ、カタール外務省報道官は声明で、カタールの防空システムが攻撃を阻止し、イランのミサイルを迎撃したと述べました。報道官は、攻撃による負傷者や人的被害はなかったと述べています。
イランの反撃によって、米国との衝突拡大、中東情勢の更なる悪化が懸念されましたが、この攻撃は事前に米国とカタールに通知されていました。トランプ大統領は、イランがカタールの米軍基地にミサイルを発射する前に米国に事前通告を行ったと述べ、これにより人命が失われることがなかったと表明しました。「事前通告をしてくれたイランに感謝したい。これにより人命が失われることも、負傷者が出ることもなかった」と自身のSNSに投稿。実際、基地はすでに大半が避難済みでした。
つまり、今回のイランの報復は“儀式的”な攻撃であったと言えます。アメリカ、イラン双方ともに本格的な衝突は望んでおらず、戦力差から見てもイランはかなり劣勢でした。しかし、国内的・国際的には「強硬姿勢」を示さなければ弱腰と見なされます。イラン国民向けの面子を保ち、国内の強硬派を満足させるには反撃を行う必要がありました。しかし、米軍に被害が出れば、応酬が激化し、戦争に発展する可能性があります。したがって、「実戦ではあるが制限・計算された応酬」という、レッドラインを越えない範囲での極めてバランスの取れた軍事劇「地政学的プロレス」が演じられたのです。
アメリカはイランの核施設という限定目標のみを攻撃、核施設は完全に破壊されたと宣言しましたが、ニューヨークタイムズはイスラエル当局者の話として、イラン側が攻撃を受ける前に、核施設からウランを含む設備を移動させていたとする見方を伝えています。実際、攻撃前に多数のトラックが核施設に集まっているのが確認されています。トルコなどの中間的なチャネルを通じて“攻撃予定の情報”がイランへ伝わった可能性を示唆する報道もあります。これに関して米国もイランも否定しています。
BREAKING: Eight Israeli civilians are dead, after Iran violated the ceasefire and launched four barrages of missiles at Israel.
— Eyal Yakoby (@EYakoby) June 24, 2025
Suddenly, all of the people condemning Trump and Israel for “war” are silent—I wonder why. pic.twitter.com/p2PM3sVQJY
この地政学的プロレス後、トランプ大統領はSNSへの投稿において、イスラエルとイランの間で「完全かつ全面的な」停戦が成立したと発表しました。大統領は、この停戦が恒久的なものとなることを期待していると述べています。投稿によると、停戦は約6時間以内(日本時間24日13時ごろ)に開始される予定で、イランがまず停戦を開始し、12時間後にイスラエルがこれに続くと、24時間後、日本時間の25日午後には完全停戦なる予定です。「24時間後に12日間の戦争の公式終結が世界から祝福されるだろう。それぞれの停戦中、相手側は平和と敬意を保ち続けるだろう」と大統領は記しました。しかしながら、その発効前の最終時間を利用してイスラエルがテヘランを爆撃し、イランの核技術者が暗殺されたとの情報があります。この報復として、イランもイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射し、民間人に死傷者が出ました。これらの応酬で停戦合意は破談したと思われましたが、イスラエルとしてはトランプ大統領の顔に泥を塗るわけにはいかないので、ネタニヤフ首相は「イランの核とミサイルの脅威を取り除く目的は達成した」と述べ、停戦に合意しました。このまま、無事、イランとイスラエルの停戦は実現するでしょうか。