

アメリカ空軍は2026年度予算案を発表し、2027年までに162機のA-10サンダーボルトII攻撃機を退役させる意向であることが明らかになりました。A-10は2023年度より全機退役に向けた計画が進行しており、米空軍は2026年度中にA-10の全機退役を計画しています。
Senior Officials Outline President’s Proposed FY26 Defense Budget
米空軍および国防総省が2026年度予算案を発表したことに伴い、米空軍は2026年度の航空機退役リストを公開しました。これには、A-10サンダーボルトII攻撃機162機の退役に必要な5,700万ドルの要求が含まれています。162機は現在配備されているA-10の全機数に相当し、米空軍は2026年度、すなわち2027年までにA-10全機を退役させる計画です。A-10全機の退役は決定事項であり、2023年から段階的に退役が開始されていましたが、当初の計画では全機退役は2029年を予定していました。これは、2年前倒しされることになります。
A-10退役計画の推移
米空軍はコスト削減策として老朽化したA-10の全機退役を計画しており、2014年以降、予算要求において5度にわたり段階的な退役計画を盛り込みましたが、その都度議会によりA-10の退役は拒否されてきました。しかし、2022年にようやく議会の承認が得られ、翌2023年からA-10の退役が開始されました。当初は老朽機や非戦力機体が優先され、最初の21機が退役し、A-10の総保有数は281機から260機に減少します。2024年度には39機が退役しました。2025年度には韓国に配備されていた24機を含む計56機が退役する予定です。2023年3月、当時の空軍トップであったCQブラウン参謀総長は「今後5~6年で退役完了、2029年頃までに完了」と発言しており、現状のペースでは全機退役は2029年となる予定でしたが、今回、空軍は2026年度(2027年)までに全機退役させる要求を提出しました。これは、A-10の老朽化が進行し、近代的防空網への対処が困難であるとの判断に加え、早期退役によって生じるリソースと予算をF-35や無人機、第6世代戦闘機の開発に振り向けたいという意図があります。
A-10サンダーボルトII
A-10サンダーボルトII攻撃機は、近接航空支援航空機として1970年代に設計開発され、1977年に地上攻撃機として米国空軍での運用が開始されました。機体は頑丈な装甲で保護され、機首には強力なGAU-8 30mmアベンジャー ガトリング砲、最大6発のAGM-65 マーベリック空対地ミサイル、その他、誘導爆弾、対地ロケットを搭載可能です。A-10が最も活躍したのは1991年の湾岸戦争であり、約140機のA-10が参加し、イラク軍の数千台の地上兵器、900両の戦車を破壊したとされ、戦車キラーとしてその名を馳せました。その後もアフガニスタン戦争、イラク戦争に参加し、タリバンやISISの掃討作戦に従事、CASとして地上部隊を支援し、陸軍からは非常に人気の高い機体です。低速、低空を飛行するA-10の運用条件として制空権の確保があり、米軍はこれまで絶対的な軍事力を背景に、戦争においては完全に制空権を確保してきました。これまでの中東における軍事作戦では、相手の空軍力が乏しく、防空システムも脆弱であったため、A-10の損耗は少なかったものの、今後の仮想敵国となる中国は高度な戦闘機と防空システムを有しており、A-10が撃墜されるリスクが高まっています。また、近年では武装組織レベルでも携行式防空ミサイル(MANPADS)を保有していることが確認されており、空軍内部でA-10不要論が浮上していました。
空軍はA-10に加え、62機のF-16C/D、21機のF-15E、13機のF-15C/D、14機のC-130Hハーキュリーズ輸送機、3機のEC-130Hコンパスコール電子戦機の退役を予算要求に盛り込んでおります。空軍はF-22ラプターの最も古いモデルであるBlock20の退役も検討しており、2023年度の予算要求で33機、2024年度にも32機の退役を予算要求に盛り込みましたが、これらは議会で拒否されており、2026年度の予算要求にはF-22の退役は盛り込まれませんでした。また、トランプ政権における緊縮財政要求を受けて、予算案ではF-35Aの調達数が大幅に削減されており、当初計画していた48機から半分の24機に削減されています。海軍、海兵隊を含めてもF-35の調達数はわずか47機です。空軍は老朽化したF-16とA-10を代替するため、当初、1,763機のF-35Aを取得する計画でした。現在の空軍のF-35A保有数は408機ですが、トランプ政権下では調達数が大幅に減少する可能性があります。しかし、縮小が検討されていたF-15EXイーグルIIの調達については31億ドルが計上されており、ボーイング社製のこの戦闘機を2026年の調達数を18機から21機に増やす計画であり、総調達数も当初計画されていた98機から129機に拡大される予定です。近年、業績不振であったボーイング社は、トランプ政権下で次世代戦闘機F-47を受注するなど、取引を拡大しています。