

ウクライナ空軍は22日、フランスから供与されたミラージュ2000戦闘機が飛行訓練任務中に墜落したと発表した。これはウクライナが受領したミラージュ2000としては初の損失となる。操縦士は墜落前に脱出し、命に別状はないとされている。
事故の詳細と初期調査
🇺🇦|🇫🇷 A French Mirage 2000 fighter of the Ukrainian Air Force 'crashed' in the Volyn region. This is the first recorded loss of this type of aircraft in the Armed Forces of Ukraine.
— MenchOsint (@MenchOsint) July 22, 2025
According to the Ukrainian Air Force, the cause was a failure of the aviation equipment, which… pic.twitter.com/hZitqg5C8m
ウクライナ空軍の発表によれば、飛行訓練中に機器の故障が発生し、パイロットが管制官に報告したと声明で述べている。機体の墜落に伴う死傷者は出ていない。ウクライナの報道によれば、墜落はポーランドとベラルーシに隣接するウクライナ北西部のヴォルイーニ地方で発生しており、前線からは遠い地点であった。地理的要因を考慮すると、ロシア軍による撃墜の可能性は低いと見られる。ウクライナ空軍は事故原因を究明するため、特別調査委員会を設置した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は昨年6月、ウクライナへのミラージュ2000の供与を発表した。今年2月に第1弾の機体がウクライナに到着し、3月以降、ロシア軍のミサイル迎撃任務などに参加していた。フランス国民議会下院が発表した予算報告書によると、フランス空軍が所有する26機のミラージュ2000-5型のうち6機がウクライナに移管される予定とされているが、供与数は安全保障上の理由から公表されていない。ミラージュ2000は、主に防空任務や空対地攻撃任務に用いられる多用途戦闘機であり、ウクライナにとっては、ロシア軍の航空脅威に対抗するための貴重な戦力となっており、ウクライナの防空能力強化に重要な役割を担っていた。
西側製戦闘機の損失増加と背景にある課題
ウクライナ軍ではここ最近、西側製戦闘機の損失が増加傾向にある。最初の西側製戦闘機の損失は、F-16がウクライナに納入された2024年8月の同日26日に発生した。この際、ロシア軍の無人機・ミサイルを迎撃任務にあたっていたF-16が墜落し、パイロットが死亡した。その後、F-16の納入が一時的に停滞したこともあり、F-16の出撃頻度が減少したとされていたが、2025年2月に追加のF-16を受領し、目撃数も増え、出撃回数は増えていたとされる。しかし、それと合わせるように損失も増える事に。
追加機体の受領から2ヶ月後の4月12日には戦闘任務中に1機が墜落。ロシア軍の対空ミサイルによって撃墜されたとされ、パイロットが死亡している。
さらに、5月16日にはロシア軍による空襲の防空任務にあたっていたF-16が、4つ目の目標を迎撃中に緊急事態が発生し墜落した。この際にはパイロットは脱出し、無事であった。
そして、6月29日には史上最大規模のロシアによるドローン・ミサイル攻撃の迎撃任務にあたっていたF-16が、7目標を撃墜するも被弾。民間地への墜落を避けるため脱出の時間が足りず、パイロットは死亡している。ここ数か月、ロシアの無人機による大規模空襲が増えており、F-16の出撃回数は増えていた。
今回のミラージュ2000の墜落と合わせると、ウクライナは毎月1機ペースで西側から供与された戦闘機を失っている計算となる。この損失ペースは、ウクライナ空軍にとって深刻な問題であり、その背景には複数の要因が指摘されている。
損失増加の主な原因と課題
- 旧式モデルと技術的制約: ウクライナに提供されたF-16やミラージュ2000には旧式モデルが多く、レーダーは古いAN/APG-66を搭載している機体も存在する。また、Link 16通信システムが欠落している機体もあり、これにより情報共有や協調作戦に限界が生じている。最新のロシア製戦闘機や防空システムとの性能差が、ウクライナ軍の戦闘機にとって不利な状況を作り出している可能性がある。
- メンテナンスと整備環境の未熟: 戦闘機は高度なメンテナンスを必要とするが、ウクライナの整備環境は戦争状態であり、十分な部品供給や専門技術者の確保が困難な状況にある。西側諸国からの技術支援や部品供給は行われているものの、短期間で大規模な整備体制を構築することは容易ではない。このため、機械的故障や不具合が起きる可能性が高まっていると推測される。
- 短期間での配備と訓練不足: 西側の通常の訓練スケジュールよりも短い期間でウクライナのパイロットや整備士はF-16やミラージュ2000への転換訓練を受け、実戦投入されている。これにより、整備・訓練・戦術統合が未成熟なまま運用されているとの指摘がある。最初に訓練を終えたパイロットはMig-29やSu-27といったソ連製戦闘機での飛行経験が豊富な者が多いが、パイロットたちは急速にF-16やミラージュへの転換を迫られており、飛行技術や緊急時対応の習熟度が十分でない者が多数存在する可能性も指摘されている。
これらの要因が複合的に作用し、ウクライナ空軍の西側製戦闘機の損失が増加していると考えられる。今後、ウクライナへのさらなる支援や、訓練体制の強化、整備環境の改善などが急務となる。同時に、供与される戦闘機の性能や、それらを効果的に運用するための戦略の見直しも求められている。
