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トランプ政権が米軍需企業への出資検討!準国有化には懸念も

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©Lockheed Martin

アメリカ商務長官のハワード・ラトニック氏は、メディアのインタビューにおいて、ロッキード・マーティンをはじめとする軍需企業への政府出資を検討していることを明らかにしました。この動きは、単なる財務投資に留まらず、国家戦略上の強い意図を持つものとして分析されています。トランプ大統領はかねてより「政府はもっと積極的に軍需産業に関与すべきだ」と主張しており、今回の出資検討は、軍需企業の準国有化を志向するトランプ政権の政策を象徴するものです。

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ロイター通信などの報道によれば、ラトニック長官はCNBCのインタビューで、ロッキード・マーティン、ボーイング、パランティアといった主要軍需企業への政府出資の可能性に言及しました。これは、最近行われた半導体大手インテルへの10%出資の流れを引き継ぐ動きと見られています。ラトニック長官は、ロッキード・マーティンの収益が米国政府に大きく依存している点を指摘し、「ロッキード・マーティンの収益の97%は米国政府から得られている。彼らは実質的に米国政府の一部門だ」と発言しました。この発言は、国防装備の資金調達といった政策目的を背景にした戦略的出資であることを示唆しています。ただし、ラトニック長官の発言には一部誤りがあり、ロッキード・マーティンは2024年の収益の73%が米国政府からのものであると述べていますが、それでも米国政府への高い依存度には変わりありません。

トランプ政権は、「国内企業への政府の積極介入」を推進しており、その一環として、米半導体大手インテルは8月22日、米政府が同社に89億ドル(約1兆3千億円)を出資し、約10%の株式を取得することで合意したと発表しました。国内の雇用や経済に大きな影響を与える大企業が経営危機に陥った際に、国が救済することは珍しいことではありませんが、経営不振ではあったものの健全な企業に国が出資することは異例です。半導体は安全保障上の重要物資と位置づけられており、この出資は米国内での生産を強化するために、米政府がインテルの経営への関与を強める目的があるとされています。

出資の目的は?

今回のロッキード・マーティンをはじめとする防衛関連企業への投資検討は、ペンタゴンや国防長官レベルでも議論が進められており、財政的効率性や国家安全保障の観点からの対応が検討されています。

防衛企業への出資には、いくつかの明確な目的があります。トランプ政権は、近年の防衛装備の価格高騰に繰り返し不満を表明してきました。政府が筆頭株主になることで、調達コストに対する監視や交渉力を強化し、「納税者の利益を守る」という立場を明確化できると期待されています。また、企業の業績が向上すれば、株式保有による配当や株価上昇益を国庫に還元することも可能です。これは、将来的な軍事費の増加を正当化する手段としても利用可能であり、事実上、軍事費の一部を自前で回収する形になります。さらに、トランプ大統領は自ら米国製兵器を各国首脳との会談でトップセールスしており、政府が出資することで、その姿勢はさらに強まる可能性があります。

軍産複合体の懸念

しかしながら、政府出資にはいくつかの懸念も指摘されています。政府が特定企業の株主となることで、その企業からの調達が優先されたり、他の防衛企業との「公正な競争」が損なわれる可能性があります。新しい兵器の開発や調達は通常、複数社による競争入札と評価試験を経て行われますが、公平性が失われることで、結果として調達コストがむしろ上昇したり、革新性が失われたりする懸念があります。

また、政府が筆頭株主となることで、防衛調達が「軍事的合理性」よりも「政治的都合」で決定されるリスクも指摘されています。例えば、大統領や政権与党の意向が経営方針に直接影響し、新技術の開発よりも政府の意向に沿った兵器の開発が優先されるなど、軍需産業の独立性が低下する懸念があります。

かつて、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領は退任演説で、「軍産複合体」という言葉を用いて、軍需産業と軍・政府が経済的、政治的、軍事的に結託した連合体を形成する危険性を警告しました。彼は、戦略よりも「利益維持」が優先され、利権や既得権益が生まれ、本来の安全保障上の必要性ではなく、「産業や政治の利益」で軍拡が推し進められる可能性があると指摘しました。そして、国民の意思よりも、軍産複合体の影響力が国家運営を左右する危険を訴え、軍・政府と防衛産業が過度に結びつくことで、政治や経済に不健全な影響を及ぼし、民主主義が歪められる危険があると警告しています。

さらに、軍需企業を準国有化することで、輸出が減少する可能性も懸念されます。特にトランプ政権の影響力が強まることで、トランプ大統領の機嫌や意向によって、武器購入に影響が出る可能性も指摘されています。実際、トランプ政権下でアメリカの国際協調路線は大きく変化し、NATO同盟国の間では米国製兵器離れが進んでおり、政府出資がこの流れを加速させる可能性があります。

今回の政府出資の動きは、国家安全保障、経済政策、そして民主主義の健全性といった多岐にわたる側面から議論されるべき重要な課題であると言えるでしょう。

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