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ウクライナ、ラファール最大100機取得覚書に署名!F-16・グリペンの三機種体制に

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@macron

ウクライナのゼレンスキー大統領は11月17日、フランスのマクロン大統領との会談において、フランス製の多用途戦闘機「ラファール」の取得に関する「意向書(Letter of Intent)」に署名しました。調達規模は最大100機という大規模なもので、これは生産国フランス、そしてインドに次ぐ規模となります。ウクライナはすでに、米国製F-16戦闘機の受領を進めており、さらにスウェーデン製JAS39グリペン戦闘機150機の導入についても意向書を交わしています。これら一連の動きは、ウクライナ空軍が将来的に「戦闘機三機種体制」を確立し、戦時下から戦後の長期的な防衛体制を見据えた戦略的転換を図っていることを明確に示唆しています。ソ連製航空機に依存してきたウクライナ空軍にとって、これは全面的な「西側標準化」への移行を意味します。

ラファール戦闘機の位置づけ:将来の主力機

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mod france

ロイター通信などの報道によれば、ラファール調達構想は2035年までの約10年間で最大100機を取得する長期的な枠組みです。現時点では意向書段階であり正式契約には至っていませんが、関連装備、次世代SAMP/T防空システム、ドローン、レーダー、訓練プログラムまで含む包括的なパッケージとして計画されています。フランス側も生産能力の増強を含めた体系的支援を想定しているとされ、これはフランスのウクライナへの長期的な防衛協力へのコミットメントを象徴しています。

このラファール100機調達構想が注目される最大の理由は、単なる調達規模の大きさではなく、ウクライナが戦後を見据えた「空軍の骨幹」として位置づけている点にあります。ラファールは、空対空・対地・対艦の全任務を高いレベルでこなす”本格的マルチロール戦闘機”であり、特に最新のF4仕様では、ネットワーク戦能力や将来兵器への対応力が大幅に強化されています。

ウクライナ空軍は、今後、現在の戦時体制から平時の防衛体制へ移行する過程で、ラファールを「統合空軍の主力」、すなわち**“フラッグシップ”**機体として位置づける可能性が高いです。導入が検討されているのはセンサー、電子戦能力、データリンクが向上した最新モデルF4とされ、作戦指揮・ネットワーク戦といった高度な任務から、制空・対地といった統合作戦の中心を担うことが推測されます。フランスとの技術・生産協力の可能性が示唆されたことも、この機体が長期運用を視野に入れた戦略的投資であることを裏付けています。

JAS39 グリペン:生存性を重視した前線戦闘機

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©Saab

今年10月には、ウクライナはスウェーデンと最大150機規模のJAS39グリペン導入に関する合意文書を交わしています。グリペンは、特に運用コストと柔軟性の面で他の西側戦闘機にはない独自の価値を持ちます。F-16やラファールといった戦闘機が舗装された空軍基地や滑走路上での運用を前提とするのに対し、グリペンは「道路での離発着」を含む不整地での運用能力(分散運用能力)を最大の特徴としています。戦時下のウクライナにおいて、ロシア軍によるミサイル攻撃から航空基地の脆弱性が露呈したため、グリペンの持つ「分散運用」「高速再出撃」「短滑走路での運用」といった長所は極めて実践的で、ウクライナ側はこれを高く評価しているとされます。

グリペンの納入は早くて2028年ごろから開始される見込みであり、その役割は、戦後の運用を視野に入れ、運用コストの安さ、分散配置による生存性の高さから、「前線戦闘機」としての役割が想定されます。ウクライナが導入を検討しているのは、高度な電子戦システムを搭載した最新鋭「E/F」バージョンです。

F-16:戦時下における即戦力

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すでにウクライナは米国製F-16の受領が始まっており、これまでに約20機程を受領、年内には更に数が増え、最終的には100機近い機体が導入される予定です。既に配備・運用が始まっているF-16は多くのNATO加盟国が採用していた機体で、運用実績が豊富であり、敵防空網制圧(SEAD)や空対空戦闘、精密攻撃空対地に対応する「即戦力機」として位置づけられています。

戦時下である現在のウクライナ空軍の短期・中期的な主力として、既存のソ連製戦闘機Mig-29やSu-27に代わる役割を担います。オランダ、ベルギー、ノルウェーなど複数の西側支援のもと、運用体制が迅速に構築されており、ロシア軍の巡航ミサイル・無人機迎撃、精密誘導兵器の運用などで、戦場で既に実績を上げています。

多層的な三機種構想の課題と戦略的意義

今回のF-16(即戦力)、グリペン(生存性の確保)、ラファール(将来の主力)という三機種による多層的な戦闘機運用構想は、西側の空軍では類を見ない異例の体制です。ちなみに、この3機種以外にもフランスからミラージュ2000が既に約20機供与されており、ミラージュ2000とF-16はもともと退役予定の中古機であったことから、将来的にはグリペンとラファールに取って代わる可能性も指摘されています。

しかし、これだけの多層的な戦闘機運用体制の構築には、当然ながら多くの課題が存在します。最も大きな懸念は資金調達の不透明性です。ラファールとグリペンを併せて最大250機という規模は、ウクライナの財政や、整備・運用・訓練能力をはるかに超える可能性があります。また、生産国が異なることで、整備体系や部品供給の標準化が複雑化することは避けられません。ロイター通信も「資金面は今後の最大のハードル」と指摘しており、政治、財政、産業の三要素が揃わなければ、これら意向書が正式契約に至らない可能性はあり、実現性は不透明です。150機、100機という数もあくまで最大調達数であり、実際はそれより減る可能性も十分にあります。

それでも今回のラファールに関する覚書が持つ戦略的な意味は非常に大きいとされます。AP通信は、フランスがウクライナの空軍と防空の両面を10年規模で支える方針を示したと伝え、欧州の長期的コミットメントを象徴する動きと報じています。これは、戦争の長期化と戦後再建の双方を見据えた戦略的合意と位置づけられています。ウクライナ空軍は、ソ連製機体ミグ・スホーイの寿命と損耗により、全面的な西側製機体への更新が避けられない段階にあります。この西側製3機種を主力戦闘機とする構想は、戦時と戦後を一つの連続的な戦略として捉えるウクライナの計画と、欧州諸国がウクライナの長期的安全保障に深く関与する姿勢の表れと思われます。

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