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自衛隊も導入するMQ-9Bに早期警戒レーダー搭載案!24時間空中監視も可能に

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アメリカの無人航空機メーカーGeneral Atomics Aeronautical Systems(GA-ASI)と、スウェーデンの世界的な軍需企業Saabは、画期的なミッションパッケージの開発を発表しました。これは、GA-ASIの主力無人航空機であるMQ-9B「SeaGuardian/SkyGuardian」に、Saabの高度な空中早期警戒管制(AEW&C)機能を付加するというものです。この提携は、従来型の防空戦略に大きな変革をもたらす可能性を秘めており、すでにMQ-9Bの導入を進める日本を含む各国の防衛当局から大きな注目を集めています。

GA-ASI and Saab Will Demonstrate AEW&C on MQ-9B in 2026

MQ-9Bは、中高度長時間滞空(MALE)型の無人機として、世界最長クラスの航続距離と滞空時間を誇ります。このプラットフォームにAEW機能を統合することで、従来のAEW&Cシステムの運用概念を根本から覆すことが可能になります。GA-ASI社長のデイビッド・R・アレクサンダー氏は、「MQ-9BにAEW&C機能を追加することは、当社のプラットフォームにとって極めて重要な新機能です。私たちは、世界中のオペレーターに、高度な巡航ミサイルだけでなく、単純ながらも危険なドローン群からも守る、持続的なAEW&Cソリューションを提供したいと考えています」と、その戦略的意義を強調しています。

両社が開発するAEWミッションパッケージの核となるのは、GaN(窒化ガリウム)ベースのAESA(アクティブ電子走査アレイ)レーダーと各種センサを統合したポッド形式のシステムです。これにより、MQ-9Bは360度の空域監視を実現し、巡航ミサイル、戦闘機、さらには小型無人機といった多様な目標に対して、長距離での探知・追跡能力を獲得します。

この無人化されたAEW&Cソリューションの最大の利点は、そのコスト効率と持続性にあります。従来、AEW&Cは、ボーイングE-767やノースロップ・グラマンE-2Dといった大型ジェット機やターボプロップ機など、有人かつ大型のプラットフォームが常識でした。これらの有人機は極めて高性能である一方で、導入コスト、高騰する運用コスト、そしてパイロットや多数の管制要員の確保といった点で大きな制約を抱えています。

MQ-9B AEW&Cは、これらの有人機の数分の一という低コストで、長時間の持続的な空中監視を可能にします。これにより、海軍の空母など、AEW資産の配備が困難であったり、導入費用が高額すぎたりした地域や環境でも、早期警戒能力を運用できるようになります。GA-ASIは、この無人AEW機を「従来のAEW機を補完し、既存の防空網をより密で多層的なものにする」戦略的な存在として位置づけています。

有人AEW&Cの限界と無人化のメリット

早期警戒管制は、現代の防空システムにおいて「心臓部」とも言える役割を担いますが、有人・大型AEW機の運用は、以下のようないくつかの深刻な制約に直面しています。

制約事項詳細
人員確保の困難さパイロットおよび高度な訓練を受けた多数のミッションクルーの継続的な確保が難しい。
高騰する運用コスト燃料費、メンテナンス、人件費など、飛行時間あたりのコストが極めて高額。
地理的制約大型機を運用できる滑走路や格納庫が限られ、運用基地の柔軟性が低い。
長時間哨戒の難しさ乗員の疲労制限から、任務時間が制限され、長時間の常時監視には適さない。

これに対し、MQ-9Bのような無人AEWは、これらの有人機の「外側」を、低コストで、人的制約なく長時間監視するという、新しい運用コンセプトを現実のものにします。

日本の防衛戦略におけるMQ-9B AEW&Cの可能性

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MQ-9B AEW&Cの導入が日本の防衛にもたらす具体的なメリットは多岐にわたります。

  1. 南西諸島防衛の強化と常時監視網の密度向上
    中国の航空機、無人機、ミサイルの脅威に対し、沖縄から台湾にかけての広大な海空域で、常時監視網の密度を劇的に引き上げることが可能になります。特に、有人AEW機ではカバーしきれない24時間体制の長時間監視に適しています。
  2. 有事における損耗補完と多層化
    紛争発生時に、高価値目標である大型AEW機が喪失した場合、防空能力は致命的な打撃を受けます。無人AEWは、比較的安価で補充が容易であり、戦力の「外周」を埋める補完戦力として機能し、防空網のレジリエンスを高めます。
  3. コスト構造と人員不足の改善:
    航空自衛隊が抱える慢性的な人員不足という課題に対し、長時間にわたる哨戒任務を無人化できる意義は極めて大きく、防衛リソースの効率化に貢献します。

課題

一方で、無人AEW&Cの運用にはいくつかの重要な課題が存在します。

  • データリンクの依存性と電子戦リスク: 無人機は、その運用において地上管制局とのデータリンクに大きく依存します。中国などが持つ強力な通信妨害(ジャミング)能力による電子戦を受けた際、データリンクが途絶したり、劣化したりするリスクは小さくありません。
  • 指揮統制システムとの連携: 航空自衛隊の複雑な指揮統制システム(C2)と、無人機が収集した大量のリアルタイム情報を高度に、かつ迅速に連携させるための技術的・運用的な課題を解決する必要があります。
  • ステルス性の欠如と被標的化リスク: MQ-9Bは大型であり、ステルス性を持っていません。AEWレーダーを強力に発信することは、敵の長距離対空ミサイルや戦闘機にとって格好の標的となる危険性を孕んでいます。

したがって、MQ-9B AEW&Cは、高高度で指揮統制の中核を担う有人AEW機を完全に置き換える存在ではなく、その「外周を担当し、持続的な監視を行う補完戦力」という性格が極めて強いと言えます。GA-ASIとSaabによるこの共同開発は、単なる機材の進化ではなく、防空戦略の概念そのものを、低コスト化、持続性の向上、そして多層化へと変える決定的な転換点となるでしょう。両社は2026年に実機を使ったデモ飛行を計画しており、その実現が待たれます。

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