

世界2位の航空機メーカーで世界6位の軍需企業でもあるボーイング社は1月28日に2024年通期決算を発表。大幅赤字を報告したが、この赤字の要因の一つが防衛・宇宙・安全保障部門(BDS)になり、BDSは過去最大の赤字を計上した。
[adcode]
ボーイングは28日火曜日、民間および防衛部門(BDS)の問題や米国西海岸の工場労働者による壊滅的なストライキの影響により、売上高が14.5%減少して665億ドル、2020年以降で最大となる118億3000万ドルの年間損失を報告した。赤字は6年連続で前年赤字22億ドルの5倍だ。損失118億ドルの大部分は、第3四半期と第4四半期に計上した78億ドルの費用を反映している。これらの費用には、旅客機の777Xと767プログラムに対する41億ドルと、T-7A高等練習機、KC-46A空中給油機、MQ-25無人給油機プログラムなど、防衛・宇宙・安全保障部門の複数のプログラムに対する37億ドルが含まれている。
防衛部門が過去最大の赤字を計上
防衛・宇宙・安全保障部門(BDS)は2024年通期の収益が239億ドルで、前年比4%減となったと報告した。決算報告前のプレビューで第4四半期の収益が54億ドルで、前年同期比20%減、損失は17億ドルとなり、第4四半期での損失額は過去最大となると報告されていたが、通期の損失は54億ドルとなり、通期ベースでも過去最大の赤字を計上した。この原因がT-7A高等練習機、KC-46A空中給油機、MQ-25無人給油機プログラムで結んだ「固定価格契約」にある。
固定契約とは
「固定価格契約」とは”固定”というように使用されたリソースや原材料費に関係なく、最初に決まった価格が固定された契約になり、追加コストがかかったとしても請負業者側が負担せねばならない。コスト管理にうるさい官公庁や軍が使用する契約形態になる。原材料の高騰、ストライキ、生産の遅延などにより生産コストが増えたが、この契約のため、追加費用を請求できず、ボーイング社の負担コストが増えた。
[adcode]
赤字の主な原因となった3つの機体
KC-46空中給油機


KC-46空中給油機プログラムは、組合のストライキにより、機体のベースとなる767の生産が7週間ストップ。その後の合意の影響を含む製造コストの増加を反映して、8億ドルを追加計上した。同社は2024年全体で10機のKC-46を納入したが、第4四半期には1機も納入していない。KC-46は2019年から米空軍で運用が始まったが、これまで、何度も機体構造上の欠陥が発覚し、改修が行われている。同プログラムでの同社の損失は89億ドルまで膨れ上がったことになる。
[sitecard subtitle=関連記事 url=https://milirepo.sabatech.jp/the-united-states-approves-the-sale-of-nine-kc-46a-pegasus-tanker-aircraft-to-japan target=]
[adcode]
T-7A高等練習機


T-7A高等練習機に関して5億ドルの追加費用を報告しており、理由を「主に2026年以降の生産ロットの推定コストの上昇による」としている。T-7AはT-38の後継として米空軍が新たに採用した練習機で2022年4月に最初の量産版が納入。2023年から運用が開始される予定だったが、遅延。米空軍は1月15日、プログラム全体にわたる長期の遅延を受けてT-7Aの生産を延期すると発表した。2027年に予定されている初期運用能力に先立ってテストプログラムを順調に進めるため、その間に量産型テスト機4機を購入する予定だ。
[sitecard subtitle=関連記事 url=https://milirepo.sabatech.jp/t-7a-redhawk target=]
MQ-25 Stingray無人給油機
MQ-25は米海軍と開発を進める世界初の無人給油機だ。2019年に初飛行、2021年には空中給油に成功。2026年から艦載機として運用を予定している。こちらの損失は不明だが、なにぶん世界初であり、予期せぬコスト増というのは大きくあり得る。
[sitecard subtitle=関連記事 url=https://milirepo.sabatech.jp/mq-25-stingray target=]
KC-46空中給油機は日本も採用しており、今後の日本の調達にも影響が出てくるかもしれない。
[adcode]