

アメリカが開発を進めている新型のステルス戦略爆撃機B-21レイダー。開発は順調であり、むしろ当初の計画よりも前倒しで進んでいるとされる。この順調な開発を背景に米空軍は当初100機の調達を予定していた計画を倍増の200機に拡大する事を検討していると伝えられてる。B-21はB-1ランサーとB-2スピリットの両戦略爆撃機を置き換え、2030年代に米空軍の主力爆撃機になる予定だ。
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I received a briefing on the new B-21 Bomber program. It is being built ahead of schedule and on budget. It will be a game changer for USAF for decades. pic.twitter.com/9AHr59BKNv
— Rep. Don Bacon 🇺🇸✈️🏍️⭐️🎖️ (@RepDonBacon) February 26, 2025
米国防総省は、2025年度予算要求でステルス戦略爆撃機B-21レイダープログラムへの取り組みを再確認し、エンジニアリングおよび製造開発(EMD)フェーズの継続と低率初期生産(LRIP)への移行が確実に行われている事を確認した。また、元空軍准将で下院軍事委員会の委員である共和党のドン・ベーコン下院議員は最近、米空軍のB-21レイダー計画の有望な進展を強調。自身のXで「私は新しい B-21 爆撃機プログラムについて説明を受けました。この爆撃機は予定より早く予算内で製造されています。この爆撃機は今後数十年間、米空軍にとって大変革をもたらすものとなるでしょう。」と述べた。B-21は2022年12月に初公開され、2023年11月に初飛行、2024年11月には米国防総省はB-21レイダーの低率初期生産を承認している。計画では2030年代初頭での就役を予定しているが、ベーコン議員の証言が事実であれば、前倒しでの就役もあるかもしれない。
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順調な開発スケジュール、そして、国際情勢や対中国を睨んだ場合、長距離打撃力の必要性が増していることもあり、米空軍はB-21の調達数の再検討を行っている。米空軍は当初100機の調達を予定していたが、これを倍増の200機に増やす事を検討していると言われている。そもそもB-21の200機必要論は以前から上がっていた。2016年2月、地球規模攻撃軍団の司令官は、空軍が当初の100機の爆撃機発注を超えて、最大175機から200機の艦隊にまで発注を拡大する可能性があると示唆していた。2017年の米空軍の調査では、当初の購入数を145機に増やすことが提案され、更にその後の調査では将来の攻撃能力を確保するためには、総発注数を145機から200機に増やす必要があるとの結果が出ていた。B-21の開発元であるノースロップ・グラマン社のCEO、キャシー・ウォーデン氏は昨年10月に「空軍は戦力構造の設計見直しを進めており、国防長官は戦力増強のさまざまな選択肢を検討していることを公言しており、B-21もその候補に挙がっていることはわかっています」と述べており、B-21が調達数は増えると推察されている。
B-2スピリットのような価格高騰はない?


米空軍は過去、ステルス戦略爆撃機B-2スピリットの調達で失敗した苦い経験がある。B-2スピリットは冷戦下、ソ連の防空網を突破するために開発、1997年に米空軍で運用が始まったステルス戦略爆撃機で、B-21の運用がまだ始まっていない今、核兵器搭載可能な唯一のステルス爆撃機だ。B-2は当初、132機を生産する計画だったが、高性能化した機体はコストが上昇、当初、1機あたり7億ドルだった機体価格は20億ドルまで上昇し、世界で最も高価な軍用機としてギネスに登録された。運用コストもバカ高く、結局21機の生産に留まっている。運用効率が悪いことから、後継のステルス戦略爆撃機として開発されたのがB-21だ。B-21のコスト計算の基準年として2010年を採用しており、この年の1機あたりのコストは契約上5億5,000 万ドルと定められていた。ただ、その後、インフレが進み、2022年12月に最初のB-21が一般に公開されたとき、空軍はインフレ調整後の平均調達単価6億9200万ドル以下にとどまると述べている。この価格はB-2の初期価格と同等だ。その後もB-2と同様に高騰するのかと思われたが、むしろコストは下がっているようで、2024年10月にも機体コストは、製造元のノースロップ・グラマンとの交渉の結果、下がる見込みだと空軍長官が発表している。ただ、B-21のコストは現在の金額に換算すると、コストは約7億8,000万ドルとされる。実際には低率初期生産分はコスト超過しており、開発元のノースロップグラマン社がそのコスト超過分を負担しているのが、現状だ。
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ただ、開発は今のところ順調であり、遅延による大幅なコスト増の懸念は少なく、ノースロップグラマン社も、空軍が少なくとも100機の航空機を発注することを前提に価格設定している。調達数が倍増となれば、量産化メリットで更に単価が下がる可能性がある。
ただ、空軍とノースロップグラマン社にとって懸案なのが、トランプ政権が進める軍事費の削減だ。その影響がB-21の調達に影響を及ぼす可能性は否定できない。米空軍は現在、第6世代戦闘機のNGADの開発計画を設計オプションとコストの再評価のため一時停止している。NGADはB-21システムファミリーの延長とみなされており、B-21が目標に到達し、安全に撤退するために不可欠な要素だ。NGADがもし廃止されればB-21の見直しも必要になる。
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