米空軍の次世代戦闘機「F-47」に関する4つの事

USAF

アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月21日、ホワイトハウスでアメリカ空軍の次世代戦闘機の開発契約をボーイング社と結ぶと発表した。また、その名前が「F-47」と名付けられたことも明かされた。

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トランプ大統領はホワイトハウスでの演説で、F-47を「これまでに作られた中で最も先進的で強力、そして致命的な戦闘機」と評し、国防総省の「次世代航空支配(NGAD)」計画における重要な節目となると述べた。F-47のスペックは明かされておらず極秘となっているが、公開されたイメージ画像ではカナード翼が確認できる。第6世代戦闘機の定義であるステルス、先進的なセンサー、最先端のエンジン、無人機(ウィングマン)との連携などは必須の要素であると考えられている。米空軍のNGAD構想によれば、中国やロシアと戦うために第6世代戦闘機を中心とした「システムファミリー」が構築される。さらにトランプ大統領は、F-47検証機が約5年間秘密裏に飛行しており、2030年までに就役すると発表している。

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トランプ大統領にちなんで命名

米空軍の現在の主力戦闘機はF-15、F-16、F-22、F-35の4機だ。従来の命名規則であれば、本来F-35に近い番号が選ばれるが、今回、だいぶ数字が飛んでF-47と命名された。これは”第47代”アメリカ大統領であるトランプ大統領が自身にちなんで命名したためだ。大統領が戦闘機に名を付けるのは異例だが、大統領の名を冠するような名前を付けるのは異例中の異例だ。おかげでF-36からF-46は欠番となった。トランプ大統領は「“F47”は美しい数字だ」と述べている。ちなみにF-35ライトニングIIも従来の命名規則であれば、F-24になるはずだったが、F-35のプログラムマネージャーであったマイク・ハフ少将によって「35」の数字が割り当てられた。これは試作機X-35の名をそのまま引き継いだ形だ。

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ボーイング社を選定したのは同社を助けるため?

次世代戦闘機の開発はロッキード・マーティン社とボーイング社によって争われたが、結果、ボーイング社が選定された。選定理由は不明だが、ボーイング社にとっては久しぶりの戦闘機受注になる。ボーイングはF-22の開発製造に絡んでいるが主契約者はロッキード・マーティン社であり、F-35の開発計画ではボーイング社はロッキード・マーティンに敗北。また、次世代ステルス戦略爆撃機B-21レイダーではノースロップ・グラマン社に敗北している。ボーイング社は米空軍向けにF-15EXとKC-46空中給油機などを生産しているが、度々不具合を起こしコストが膨らんでおり、2024年に防衛部門は過去最大の赤字を計上している。また、主に海軍向けに生産していたF/A-18の生産も終了する事が決まっており、この生産ラインをどうするかがボーイング社の課題でもあった。だが、F-47を受注した事で今後、10年以上に渡って受注が見込め、生産ラインを閉じることなく、新たな投資ができる。F-47の開発製造に関する契約額の合計は少なくとも200億ドルを超えると予想されており、同社の株価は発表後5%上昇、それに対し、敗れたロッキード社の株価は6%近く下落した。

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価格はF-22以上?

デビット・オルヴィン空軍参謀総長はF-47について「これまでに開発された中で最も先進的で、最も強力で、最も適応力のある戦闘機だ。我々は単に新たな戦闘機を製造しているのではない。我々は戦争の未来を形作り、敵に警告を与えているのだ。」と語った上で、懸案であるコストについて「F-22と比較してF-47はコストが低い」と述べた。F-22は1機当たり1億4,300万ドルの費用がかかっており、最も高額な戦闘機として知られている。米空軍は当初700機を発注を計画していたが、あまりにコストが上がったため、最終的に200機に留まった経緯がある。F-47の価格についてトランプ大統領は、価格を公表すれば同機の極秘技術とサイズの一部が明らかになるとして、公表を拒んでおり、価格は不明だ。ただNGAD開発計画は推定コストがF-35の約3倍、つまり1機あたり3億ドルに達したことを受けて、2024年5月に同プログラムを一時停止している。だとすれば、F-22の倍の価格ということだ。ただ、研究費も含むとF-22の1機あたりの価格は3億3900万ドルになるので、3億ドルであればF-22よりは安い事になる。どちらにせよ、高額になる事は明らかだ。

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モンキーモデルを同盟国に販売

F-22は海外輸出されなかったが、トランプ大統領はF-35と同様にF-47を同盟国に販売する意向であると述べている。ただ、F-35が9か国によって共同開発されたのに対し、F-47は今のところ米国のみの単独開発の予定だ。そのためか、販売する際は性能を10%程度落とすと述べている。兵器を海外輸出する際、自国の優位性を維持するため性能を落としたいわゆる「モンキーモデル」を販売するのはよくある事だが、これを平然と公にするのは異例だ。その理由も現在の同盟国との関係が将来的に変化し、敵対関係となる可能性があるためだと説明している。現在の状況がまさにそうだろう。このように述べて同盟国がF-47を欲しがるだろうか。

第6世代戦闘機の開発は日英伊のGCAP、仏独西のFCAS、そして、中国のJ-36と各国で開発が進んでおり、どの機体も性能や価格は不明だが、選択肢はいくつかある。

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