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インドネシア、中国のJ-10を購入検討!ラファール、KF-21、KAANと見境ない選択

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東南アジア最大の軍事力を誇るインドネシアが、中国製の第4.5世代戦闘機「J-10C」の導入に向け具体的な動きを示し、国際社会の注目を集めている。現地メディアの報道および海外筋の情報によれば、本契約は最大42機に及び、総額90億ドルに達する可能性があり、早ければ2026年にも最初のJ-10Cがジャカルタの空を飛翔する可能性が伝えられている。インドネシアのプラボウォ・スビアント国防大臣は「インドネシアの空を守る新たな戦闘機が間もなく登場する」と発言し、中国製戦闘機購入の意向を事実上認めた形である。

しかしながら、この動きはインドネシアのこれまでの防衛調達戦略に波乱を生じさせる可能性も内包している。同国は既にフランスから「ラファール」戦闘機42機の導入を決定しており、さらに韓国とは次世代戦闘機「KF-21」の共同開発を推進している。加えて、本年7月にはトルコが開発する第5世代戦闘機「KAAN」を48機購入する契約を締結したばかりであり、アメリカの最新鋭機「F-15EX」にも強い関心を示している。なぜインドネシアは、これほどまでに多様な国から、多様な種類の戦闘機を同時に検討し、調達しようとしているのであろうか。

J-10C導入の背景

イラン、イスラエルに対抗するため、中国製J-10C戦闘機導入を検討か
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中国の成都飛機工業公司が開発したJ-10Cは、単発多用途戦闘機であり、アクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーを搭載し、長距離空対空ミサイル「PL-15」を運用可能である。本機体は第4.5世代戦闘機に分類され、その性能はフランスのラファール、アメリカのF-16V、F-15EXといった西側の主力戦闘機に匹敵すると評価されている。さらに、模擬戦闘ではあるもののラファールに勝利した実績もある。特筆すべきはそのコストパフォーマンスであり、価格は1機あたり4000万ドルから5000万ドルと、西側製戦闘機の約半額に抑えられている。既にパキスタン空軍では実戦配備が進んでおり、本年5月には初の実戦を経験したとも報じられている。真偽のほどは定かではないものの、ラファールを主力とするインド空軍に勝利したという情報も流れ、J-10Cの評価を一層高めている。

インドネシアがJ-10Cの導入に踏み切る狙いは明確である。第一に、老朽化が進む米露製戦闘機の一新である。長年にわたり、インドネシア空軍はアメリカ製のF-16とロシア製のSu-27/Su-30を併用してきたが、補修部品の供給問題や異なる整備体制に起因する運用上の課題に直面してきた。その上、アメリカの輸出規制や、ウクライナ侵攻を背景としたロシア製兵器の調達リスクを考慮すれば、中国を第三の戦闘機供給源とすることは、地政学的なリスクを分散し、防衛供給網の安定化を図る上で極めて合理的な選択と言える。

第二に、J-10Cは実戦を経験したように即戦力としての価値が高い。既に中国国内で量産体制が確立されており、引き渡しまでの期間が非常に短い。これは、開発段階にあるKF-21やKAANのような次世代機とは異なり、短期的にインドネシア空軍の戦力を底上げできるという大きな利点となる。緊急性の高い防衛力強化のニーズに応える上で、J-10Cは理想的な選択肢となり得るのである。

多角的な戦闘機調達 ―「防衛のポートフォリオ化」戦略

インドネシアの戦闘機調達戦略を包括的に見ると、「ポートフォリオ型防衛政策」という概念が浮かび上がる。これは、単一の国や陣営に防衛力を依存するリスクを回避し、複数の国から多様な戦力を分散して確保するという方針を明確に示している。

フランスの「ラファール」については、2022年に42機の契約が発表されており、初号機の納入は2026年を予定している。これは、西側諸国との軍事協力関係を維持しつつ、同時に技術移転やライセンス生産の機会を模索する意図がある。韓国との「KF-21」共同開発プロジェクトは、インドネシアの出資削減問題により不透明な状況が続いているものの、インドネシアは将来的な国産戦闘機技術の獲得を目指す上で、韓国との関係を維持する姿勢を見せている。これは、長期的な防衛産業の育成と技術自立を見据えた戦略的投資と言えるであろう。さらに、トルコの第5世代戦闘機「KAAN」についても、インドネシアへの輸出が公式に発表されており、48機規模の導入が見込まれている。しかし、KAANは未だ開発の初期段階にあり、実際の導入は2030年以降になると予測されている。これは、将来の防衛環境を見据えた先端技術への投資という側面が強い。

つまり、インドネシアはJ-10Cを「即応戦力」、ラファールを「中期的主力」、KF-21とKAANを「将来志向の技術投資」と位置づけ、三層構造の防衛力を構築しようとしていると言える。この「多機種運用」戦略は、整備や訓練コストの増大という課題を伴う一方で、調達元の分散によって政治的独立性と外交的柔軟性を高める効果が期待される。

国内防衛産業の育成と「交渉カード」としての利用

インドネシアがこれほど多様な供給国と交渉を重ねる背景には、単なる装備品の調達に留まらない、より深遠な国家目標が存在する。それは「防衛産業の自立」である。同国は、多くの防衛契約において「国内生産への技術移転」を必須条件として交渉を進めている。例えば、KF-21プロジェクトでは、インドネシア企業が機体構造部品の一部製造を担当しており、トルコとのKAANに関する協議でも、インドネシア国内での組立ライン設置が重要な議題として浮上している。J-10Cについても、ライセンス整備や一部部品の生産をインドネシア国内で行う可能性が指摘されており、中国側との技術協力の枠組みが今後の焦点となるであろう。

このように、インドネシアは各国との交渉を並行して進めることで、技術移転、ライセンス生産、現地組立といった有利な条件を引き出すための「交渉カード」を複数有することになる。これは、外交的に中立性を保ちながら、自国の防衛産業を育成するという、極めて巧妙なバランス戦略と言える。

財政と運用面の課題

しかしながら、この戦略には重大な課題も潜んでいる。最も顕著なのは、財政面と運用面での負担増大である。多機種の戦闘機を導入すれば、それぞれの機体に応じた訓練体系、整備設備、補給ルートが必要となり、運用コストが飛躍的に増大する。例えば、ラファールとJ-10Cでは兵装の規格が異なり、ミサイルや電子機器に互換性がない。パイロットの操縦訓練もそれぞれの機種に対応した別々の体系が必要となるため、教育負担も増すことになる。さらに、インドネシア財務省が承認している防衛支出の総額はGDP比1%前後に過ぎず、同時並行で複数の大型契約を履行し続ける財政的な余力があるかどうかは疑問視されている。

また、中国製戦闘機の導入は、アメリカやその他の西側諸国との関係に微妙な影響を与える可能性がある。特にアメリカは、CAATSA(対敵対者制裁法)に基づき、ロシアや中国製兵器を導入した国に制裁を科すことが可能であり、インドネシアがその対象となるかどうかは、今後の外交関係における重要な焦点となるであろう。

インドネシアの戦闘機調達は、単なる老朽化した装備の更新という側面だけでなく、「現代版非同盟戦略」の表れと捉えることもできる。冷戦時代に「非同盟運動」を主導した歴史を持つインドネシアは、現在も米中という二大超大国のどちらにも過度に傾倒しない、バランスの取れた外交政策を重視している。

J-10Cの導入は、南シナ海問題を巡る地域バランスにも影響を及ぼす可能性がある。マレーシアやフィリピンが西側諸国の戦闘機を中心に装備を更新する中で、インドネシアが中国製戦闘機を採用することは、ASEAN域内における「第三の選択肢」を示す存在となり、結果として域内の軍事均衡に新たな波紋を広げるであろう。

現時点では、J-10C導入の正式契約は確認されておらず、最終的な導入数、納期、整備協定などの詳細は流動的である。それでも、インドネシアが「西側だけに頼らない」多角的な防衛体系を志向しているのは明白である。ラファール、KF-21、KAAN、J-10C。異なる陣営の戦闘機を並行して導入するという方針は、運用上の混乱を伴う可能性はあるものの、インドネシアが“自立した中堅国家”として、多極化する世界秩序の中で軍事外交を展開していく上での象徴的な行動と言える。この選択がインドネシアにどのような未来をもたらすのか、国際社会は今後も注視していくだろう。

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