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日本、ウクライナの情報機関に人工衛星の偵察映像供与に同意か

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日本政府がウクライナ国防省の情報機関に衛星画像を供与する事に同意したと報じられている。ウクライナはロシアによる侵攻を受けた翌月に日本に対し、人工衛星データの供与を打診していたが、これまで政府は慎重な姿勢を見せていた。

防衛・諜報関連の情報を専門とするフランスの「インテリジェンス・オンライン」は4月21日、日本政府がウクライナ国防省の情報機関GURに人工衛星の地理空間データを提供することに同意したと報じた。これを引用する形でウクライナメディアも報じている。報道によれば交渉は2月に行われ、先週、署名された。昨年、2024年11月には岩屋毅外相がキーウを訪問し、ウクライナのシビハ外相と会談し、両国間の安全保障情報の共有強化で合意していたので、そこで、既に話が詰められていたのかもしれない。ウクライナはロシアの侵攻を受けた2022年2月の翌月3月には既に日本に対し、人工衛星データ共有の支援を求めていたが、政府は慎重な姿勢を見せていた。3年越しに要求が叶ったことになる。日本はこれまでウクライナに人道的支援、防衛装備品の供与を行ってきたが、今回、日本が取得した情報を共有するという支援レベルを一段上げることになる。

報道によれば人工衛星データを提供するのは福岡県に本社を置く「株式会社QPS研究所」が運用する人工衛星だ。2005年に設立された九州大学発の宇宙ベンチャー企業で、⼩型合成開口レーダー(SAR)衛星を開発し、観測したデータを販売している。これまで9機の小型衛星を打ち上げ、現在、5機の衛星を軌道上に乗せ運用しており、2026年末までに7機目の衛星を打ち上げる計画だ。QPSは防衛省から人工衛星打ち上げと運用に関する業務を請け負っているが、今回のウクライナと情報共有の枠組みがどうなっているのかは今の所不明だが、ウクライナ国防省情報総局と締結した協定には、QPSシステムをウクライナの情報プラットフォームに統合すること、合成開口レーダー(SAR)技術を使用して作成された画像であるSARデータの提供が規定されている。SARはマイクロ波を使って地表を観測する。光学センサーとは違い、雲や雨、夜間でも地表を撮影できるため、安定した観測が可能だ。軍事用途では、敵部隊の監視、地形の把握、ターゲット検出などに使用される。

ウクライナは現在、フィンランド、イタリア、ドイツのSAR画像にもアクセスでき、これに日本が追加される事で、ウクライナの衛星情報収集能力は更に向上することになる。

アメリカ依存の危険

ウクライナは独自の偵察衛星を持っていないため、人工衛星からの情報収集はNATOや西側の協力国に大きく依存している。特に大きいのが世界最大数の人工衛星を運用するアメリカだ。アメリカは米国家地理空間情報局(NGA)を通してウクライナに衛星画像を提供している。NGAは衛星画像大手マクサー・テクノロジーズやブラックスカイを通じて購入している商業衛星画像をウクライナに提供している。しかし、今年、3月に行われた停戦協議に向けたトランプ大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談が喧嘩別れに終わった事を受けて、トランプ氏はウクライナへの軍事支援を一時停止した。NGAもトランプ政権の命令のもと、3月8日、ウクライナの衛星画像アクセスを遮断した。ウクライナ軍は高解像度の衛星画像を利用して、ロシア軍の動きの把握や地形分析、軍事作戦の立案を行っていたが、これが出来なくなる。これを察知したロシアがウクライナ軍に占領されていたロシア領クルスクに奇襲を行い、8割以上を奪還した。同月18日には再開されたが、10日間でウクライナ軍は大きな打撃を受けた。現代戦において、衛星画像のデータが必要不可欠である事が露呈したと共に、現在のトランプ政権の下では政策の変化や外交的な判断により、その提供が一時的に停止される懸念が明らかにもなった。今回の日本の衛星画像へのアクセスはその依存を少しでも減らす試みの一つだろう。ウクライナはエアバス・グループのプレアデス・ネオ衛星、フランスのCSO衛星へのアクセスも拡大。また、2026年からパートナー諸国と共同で防衛目的の衛星開発を開始すると報じられている。しかし、日中の利用可能なデータやライブストリーミングツールへのアクセス能力に関して米国に匹敵する能力を持つ国は西側には他にないとされる。

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