
防衛企業のスタートアップであるアメリカのEpirus(エピラス)社は一撃で数十機のドローンの群れを撃墜、または無力化する高出力マイクロ波(HPM)兵器「Leonidas™(レオニダス)」を開発した。
Epirusは将来の国家安全保障の非対称課題の克服に取り組んでいる急成長中のテクノロジー企業で、2018年に対ドローン兵器の開発を目的に設立。主力事業が対ドローン兵器の「Leonidas™」になり、2020年に最初のレオニダスを発表している。2021年10月にはジェネラルダイナミクス(GD)と移動式短距離防空システムを提供するために、GDが開発生産するストライカー装輪装甲車にレオニダスを統合するために提携すると発表。2023年1月には米陸軍から6600万ドルの契約を受領。同年11月にはプロトタイプを導入している。中東を拠点とするアメリカ中央軍(CENTCOM)にも検証のため、配備される予定だ。
Leonidas
The US has spent upwards of $2 million per unit to defeat drones that cost hundreds to thousands. Drones are easily mass-produced, while the US kinetic arsenal can face years-long lead times. Leonidas costs pennies per kill, is ready for production now and its magazine is… pic.twitter.com/kGRRf0IdEN
— Epirus (@epirus) November 1, 2024
レオニダスはC-UAS指向性電磁パルスシステム(EMP)の一種でソフトウェア定義の高出力のマイクロ波プラットフォーム、いわゆる「高出力マイクロ波(HPM)兵器」だ。マイクロ波は広いエリアに焦点を合わせることができ、レオニダスは一撃で数十機ものドローンの群れを無効化できる。
レオニダスには最先端の設計要素を取り入れており、その特徴がソフトウェアベースで開発されている点だ。ドローン技術は日進月歩だ。それに合わせて対ドローン兵器も進化する必要がある。ソフトウェア定義とオープンなアプリケーションプログラミングインターフェイスにより、新しいハードウェアを追加することなく、将来の拡張機能に対応し、迅速な導入を実現できるように設計されている。ハード面での対応も強いられる事もあるかもしれないが、その点はモジュール設計を取り入れており、拡張が容易。また、顧客や環境に応じたカスタマイズを容易にしおり、レーダーやシステムと連携し、UASを追跡、捕捉する。
商用ソリッドステート技術を採用し、サイズと重量を削減し、小型化に成功。既にストライカーへの搭載を実現、移動式兵器として配備場所を選ばない。また、インテリジェントな電力管理技術を使用して構築されており、電力量を最適化し、少ないリソースでより多くの処理を実行でき、省電力を実現、低電圧で動作するため、システム オペレーターに対する有害な電磁波が発生しない。ドローン1機あたりの撃墜コストは数セントとされ、1ドルもしない。
高出力マイクロ波(HPM)兵器とは
マイクロ波はレーダーや衛星通信といった通信用にも使われる電磁波の一種で、周波数でいうと300メガヘルツ(MHz)~300ギガヘルツ(GHz)の範囲を指す。電子レンジの一般的な周波数は2.45GHzで、マイクロ兵器はこれよりも高い周波数の電磁波を一定方向に集中、高出力で放射することで、兵器として応用している。これらのマイクロ波をドローンに向けると、内部の敏感な部品を破壊、損傷させることができ、内部のデバイスを動作不能にする事できる。指向性EMPには主に”レーザー”と”マイクロ波”があるが、レーザーはいわゆる”点”で一度に単一の対象しか標的にできないのに対し、マイクロ波は面で一定の範囲を対象とするので一度の照射で無数のドローンを無力化できる上に多少、照準がずれても効果がある。
ドローン攻撃で脅威とされてるのが数十、数百機のドローンからなる集団戦法「スウォーム攻撃」だ。これはコストの安いドローンだから可能な攻撃で、防空システムの処理能力を超える攻撃を行う事で打撃を与える。軍事基地や艦船に設置されている対空ミサイルなどは一基あたり多くても6~8発。機銃のCRAMやCIWSは毎分4000発の火力で撃墜するが、多数のドローン相手では直ぐに弾を撃ち尽くす。スウォーム攻撃は、防空システムの空いた穴を攻撃する。マイクロ波は面で迎撃するので一度に数十機のドローンを撃墜を撃墜することも可能で、電源さえあれば長時間の連続照射が可能で実弾兵器と違い、物理的な制約がなく、弾切れの心配もない。