ベネリの対ドローン用ショットガン「M4 AI Drone Guardian」

©2025 – Benelli Armi Spa

戦場でのドローンの活用が進む中、対ドローン兵器として再び戦場で脚光を浴びているショットガン。ショットガンメーカーの老舗であるイタリアのベネリ(Benelli)社は対ドローン用に強化した「M4 AI Drone Guardian」を開発した。

sponser

イタリアの銃器メーカーでベレッタ・ディフェンス・テクノロジーズ・グループ傘下のショットガンを専門とする小火器メーカーであるベネリ社はここ最近の防衛展示で新しく開発したショットガン「M4 AIドローンガーディアン(M4 AI Drone Guardian)」を積極的に宣伝している。このショットガンは昨今の戦場で脅威となっているドローン対策用に特別に開発された対ドローン用ショットガンで、歩兵部隊に迫るドローンの脅威を排除できるよう設計されており、ベネリ社の防衛・法執行機関向け販売責任者マウロ・デラ・コスタンツァ氏は、これをFPVドローン防衛における「ゲームチェンジャー」と強調している。

sponser

M4 AI Drone Guardian

©2025 – Benelli Armi Spa

M4 AIドローンガーディアンは完全な新規開発のショットガンではなく、ベネリ社が誇るM4ショットガンを改良したもの。M4は1999年に生産が始まった軍用散弾銃で12ゲージの弾薬を使用、セミオートマチック、最大7発を装填。米海兵隊、英陸軍、その他、多くの法執行機関に採用されており、実績と信頼あるショットガンだ。それを戦場で遭遇するFPVドローンに対抗する「最後の手段」の武器として、またはスパイドローンを素早く無力化することを目的に改良したのがM4 AI Drone Guardianだ。

sponser

M4 AI Drone Guardianの”AI”、AIというと人工知能を搭載した銃なのかと思うかもしれないがAIは「Advanced impact(高度なインパクト)」の略で、バレルとチョークの両方に特許取得済みの独自システムを採用、これにより弾丸が長距離でも速度とエネルギーを維持し標準的なショットガンに比べて遠距離のターゲットを攻撃する能力が向上し、より深い貫通力と破壊力を提供する。最適交戦範囲は50mと従来のM4と変わらないが、弾丸は最大100m以上(境界線ショット)まで到達できる。推奨する弾薬がスウェーデンのNorma社がFPVドローンに対抗するために特別に設計したAD-LER (対ドローン長距離有効範囲) という名の特殊な12ゲージ ショットガンカートリッジ。カートリッジには、総重量34グラムのタングステンペレットが350個含まれており、60mまで有効射撃が可能だが、M4 AIと組み合わせる事で、その威力と射程は最大化される。小型ドローンは装甲が貧弱であり、翼やプロペラを破損させれば無力化できる。

銃自体に照準システムはないが、ピカティニーレールとM-Lokが採用されているので様々な光学機器が搭載できる。とはいえ、照準は手動。散弾とはいえ100m先の小型のFPVドローンに命中させる事は簡単ではない。主にFPVドローンに搭載されているグレネードの殺傷範囲が6m、RPG弾頭が15mであることを考えると、30m以上の距離でドローンを撃墜すれば安全とされている。最大7発の弾薬を撃ち切る前に撃墜できるかが鍵だ。

sponser

ただ、手動照準のショットガンがゲームチェンジャーになるかという点には疑問はある。ドローンは目視発見になるので交戦時間が短く、100km/h以上の高速で移動するドローンを捕捉することは難しい。しかし、現状、ドローンを完全に防げるC-UAS兵器は開発されていない。ロシア・ウクライナ戦争では電子戦兵器の配備が進んでいるが技術はイタチごっこであり、光ファイバーのドローンには効果はない。レーザーやマイクロウェーブは開発途上で実戦レベルではない。そもそも、全ての部隊に対ドローン兵器をいきわたらせる事は物理的に不可能だ。その点、ショットガンであれば、小隊単位で配備ができる。射程が短く、装弾数も少ないショットガンは戦場での戦闘で使用されるケースは少なくなったが、ロシア・ウクライナ戦争では両軍とも対ドローン用として歩兵が携行しているのが確認されている。どこまで、効果があるか、数値的なデータはないが、ショットガンでドローンを迎撃する様子はSNSで散見されており、対ドローン兵器として一定の効果がある事は証明されている。

sponser
sponser
ベネリの対ドローン用ショットガン「M4 AI Drone Guardian」
フォローして最新情報をチェックしよう!