
アメリカ国務省は、フィリピン政府へのF-16ブロック70戦闘機20機と武器一式、支援システム、訓練の有償軍事援助を承認した。調達費用の総額は55億8000万ドルになり、1機あたりの価格が第5世代ステルス機のF-35の最新モデルを超えるのではと言われている。
米国務省は4月1日、太平洋地域の緊張の高まりに対応して、フィリピンにF-16戦闘機の最新モデルであるBlock70/72型20機を販売する55億8000万ドルの有償軍事援助を承認した。内訳としては、単座型のF-16Cブロック70/72が16機と複座型のF-16Dブロック70/72が4機、24基のF110-GE-129DまたはF100-PW-229エンジン、先進的なAESAレーダー、モジュール式ミッションコンピューター、電子戦システム。112発の中距離空対空ミサイルAIM-120C-8 AMRAAM、40発の短距離空対空ミサイルAIM-9Xサイドワインダー、60発のMk82 500ポンド爆弾、60発のMk84 2,000ポンド爆弾、小口径爆弾(SDB)36発、JDAMキットなど、幅広い兵器も含まれている。フィリピン空軍は第4世代戦闘機を保有しておらず、F-16の調達によって大幅に強化される。
F-35と同額のF-16
今回、注目されているのがフィリピンが購入するF-16の価格だ。20機のF-16Block70/72の調達にかかる総額は55億8000万ドル。これを1機あたりに換算すると2億7900万ドルになる。費用には搭載する武装や支援パッケージも含まれるので、F-16の1機あたり純粋な単価ではないが、半額にしたとしても1億ドルを優に超える1億4000万ドルだ。米国が海外に販売している最新モデルの第5世代ステルス戦闘機F-35の基本モデルF-35Aの最新ロッドが8000万ドル前後とされるので、フィリンピンが購入したF-16の調達価格はそれに匹敵、または超えるのではと言われている。F-16Block70/72の価格は公開されていないが6000~8000万ドルと言われており、フィリピンは8000万ドル以上で購入した可能性が高い。
F-16 Block70/72
First Flight Alert! A new era of F-16 begins. Meet the Block 70 Fighting Falcon. 👋
— Lockheed Martin (@LockheedMartin) January 24, 2023
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確かにF-16Block70/72はF-35に匹敵する優れた機体だ。第4世代戦闘機としては屈指の能力を持っており、第4.5世代戦闘機に分類される。ノースロップグラマン社の先進的なAPG-83 AESAレーダーでアップグレードされ、第5世代戦闘機と同等のレーダー機能を有する。新しい高解像度のセンター ペデスタル ディスプレイ (CPD) を使用し、パイロットに重要な戦術カラー画像を提供。パイロットの状況認識と戦闘員の生存性が向上している。機体寿命は50%と延長され最大12000時間と耐久性が向上している。他にも様々なアップグレードが施されている。しかし、F-35のようなステルス性能は無いし、空飛ぶコンピューターと言われるF-35よりアビオニクスは劣る。価格が同等ならF-35を買った方がいいのではと思うが、販売は同盟国に限られるのと、フィリピン空軍にF-35を運用できる能力を持っていない。そもそも、第4世代戦闘機すら持ち合わせていないのだから。
フィリピン空軍初の第4世代戦闘機
フィリピン空軍の航空戦力は東南アジアの中でも小規模で、現在、保有している戦闘攻撃機は11機の韓国製の軽多用途機FA-50、ブラジル製でスーパーツカノという名で知られる6機の軽攻撃機A-29Bとどちらも軽攻撃戦闘機で第4世代戦闘機を保有していない。これまで、フィリピンにとっての脅威は国内のテロリストや反政府組織で、彼らは航空機を持っていないため軽攻撃でも十分だった。1969年から続いていた南部のミンダナオ紛争は終結に近づいており、過激派ISILとの戦いも2017年10月に「マラウィの戦い」が終了し、鎮圧を宣言するなど、国内情勢は落ち着きつつあったが、新たな脅威として登場したのが中国であり、現在、南シナ海のスカボロー礁周辺の領有を巡って衝突が起きている。今や米国に次いで世界2位の軍事力を誇る中国に軽攻撃機では対抗できない。そこで、今回のF-16の購入に至ったのであろう。フィリンピンとしては2005年に退役した第3世代のノースロップF-5A/Bフリーダムファイター以来の戦闘機になり、初の第4世代戦闘機の導入になるため、機体や物品以外の受け入れのためのサポート費用が増大している可能性が高い。アメリカは現在、台湾有事に備え、地理的に近いフィリピンとの関係を強化しており、フィリピンでの軍事拠点を拡大させている。フィリピン軍トップのロメオ・ブラウナー参謀総長は今月1日、台湾が侵攻された場合、フィリピンは「必然的に」関与することになるだろうと発言しており、今後も戦闘機の数を増やす可能性がある。