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ロシア、Mi-8/17ヘリの後継機「Mi-80」開発計画に着手

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©Rostec

ロシアのヘリコプター産業は、長年にわたりその主力機であるMi-8/17汎用ヘリコプターの生産における非効率性に悩まされてきました。この問題は、旧ソ連時代の遺産と、ソ連崩壊後の各工場の独自進化に起因するものです。しかし、ロシアはついにこの構造的な非効率性を解消し、制裁や戦時下の消耗という厳しい現実に対応するため、「Mi-80プロジェクト」を発足させ、Mi-8/17の後継機開発に着手しました。

Mi-8/17多用途ヘリコプター

ロシア、兵器不足で海外に売却した兵器を買い戻しへ
mod russia

ソビエト連邦時代にロシアのミル設計局によって開発された輸送・多用途ヘリコプターです。国内向けのMi-8は1967年から運用が開始され、輸出向けのMi-17は1977年から生産が始まりました。ロシア製のヘリコプターとしては最も成功した機種であり、現在も生産が継続されており、これまでに累計17,000機以上が製造されています。ロシア製品の特徴である堅牢性と整備の容易さを兼ね備えており、ロシア連邦をはじめ、旧ソ連・東側諸国、中東、東アジア、アフリカ、中南米の各国で、長年にわたり第一線で運用されています。主に輸送、偵察、観測といった後方支援を担いますが、Mi-24の基盤となった経緯から、武装の換装も可能です。全世界で2,800機ほどが運用されています。


Mi-8/17の非効率な生産体制

Mi-8/17は、1960年代から生産が続くベストセラー機でありながら、その生産はカザンとウラン・ウデの2つの工場で行われ、それぞれが異なる仕様の機体を製造してきました。その結果、電気系統、燃料タンク、ドア、エンジンカウルなど、主要部品の多くに互換性がなく、カタログに記載される4万点もの部品のうち、半数が互換性がないとさえ言われています。

この互換性の欠如は、運用者にとって深刻な問題を引き起こしています。スペアパーツの在庫を2つの異なるバージョンで管理する必要があり、技術者はそれぞれの整備の詳細を把握しなければなりません。同名の機種であるにもかかわらず、整備コストは実質的に2倍になるとの情報源もあります。

歴史的背景:ソ連崩壊がもたらした分断

1990年代初頭まで、開発元であるモスクワ・ヘリコプター工場(MVZ)の指揮の下、カザンとウラン・ウデはほぼ同一のMi-8を製造し、主要なスペアパーツも共通でした。しかし、ソ連崩壊と航空産業省の解体により、状況は一変します。各工場は自らの理解と能力に基づいて装備を製造するようになり、徐々に元の設計を独自に調整していきました。当初はわずかなずれだった互換性は、月日が経つにつれてさらに広がり、また、旧型モデルの近代化や派生型の開発も各工場が個別に行ったことで、この分断はさらに加速しました。2000年代初頭には標準化の試みがありましたが、工場の内部抵抗や、他社の生産ラインとの整合性確保への抵抗により、この試みは停滞しました。

Mi-80プロジェクトの始動:統合と近代化への挑戦

このような状況の中、独自に進化した両工場のMi-8/17の標準化は困難を極め、そこでMi-8/17に代わる多用途ヘリコプターの開発として「Mi-80」が誕生しました。Mi-80は、Mi-8/17系の最新型であるMi-171A3をベースに開発が進められています。

主要な改良点としては、改良型エンジン、複合素材ブレードによる主ローターとX字型尾部ローターの採用、クラッシュ耐性燃料システム、そして全天候・夜間飛行に対応する近代的アビオニクス装備が挙げられます。最大離陸重量は約14トンに設定され、生産性と性能の両立を目指した設計がなされています。

Mi-171A3の課題とMi-80への継承

Mi-171A3はカザンによって新プラットフォームのベースとして開発され、最初の試作機は2022年7月に飛行しました。しかし、この機体は高価すぎることが判明し、潜在的な顧客が求める航続距離も不足していました。例えば、Mi-8MTVが22人の乗客を乗せて900km以上運べるのに対し、Mi-171A3はその半分の450kmにとどまりました。これらの課題はMi-80の開発においても解決すべき重要な点となります。

実用化への道のりと不透明な未来

Mi-80はMi-8と同程度のコストになるとされており、現在のMi-8の価格は約900万ドルとされています。ちなみに、アメリカのUH-60ブラックホーク多用途ヘリの最新モデルは約2000万ドルであり、Mi-80が実現すれば国際市場における競争力を持つ可能性があります。

Mi-80の実用化とMi-8シリーズからの完全な置き換えは、2030年までを目標とされています。しかし、開発資金や前述の航続距離の問題などの課題解決が未解決であり、何よりもウクライナとの戦争の終結が見えない現状では、新兵器の開発にかけられるリソースは限定的です。そのため、Mi-80プロジェクトの実現性には不透明な要素が多く、ロシアのヘリコプター産業が抱える長年の課題を本当に解決できるのか、今後の動向が注目されます。

https://www.business-gazeta.ru/article/676652
https://armyrecognition.com/news/aerospace-news/2025/russias-mi-80-multirole-helicopter-project-aims-to-replace-legendary-mi-8-17-transport-fleet

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