ロシアが武器取引拡大!受注が15か国と600億ドルと発表

©Rosoboronexport

ロシアの海外武器輸出を担うRosoboronexport(ロソボロンエクスポート)社は15か国から兵器注文を受けており、受注予定額が600億ドルを超えると発表した。ロシアは2021年以降劇的に武器輸出が低迷、2024年末までに10億ドル未満に落ち込むと予測されていた。

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ロシア国営メディアのタス通信によれば、UAEのアブダビで開催されていた2025年国際防衛博覧会(IDEX)に参加したロシア国営軍需企業Rostec社のセルゲイ・チェメゾフ社長は記者団の取材に対し、同社の子会社でロシア製兵器の海外輸出を担うロソボロンエクスポート社について「現在、600億ドル以上の受注ポートフォリオを抱えている。」と語った。ロソボロンエクスポート社のアレクサンダー・ミヘエフ最高経営責任者(CEO)は最近、2024年末までにロシアの軍産複合体の受注ポートフォリオが過去最高の570億ドルに達したと述べている。ミヘエフ氏は「我々の防衛展示会の全体的な考え方は、現代戦争の経験を考慮しながら、あらゆる種類の兵器の開発と近代化に対するロシアの総合的なアプローチを示すことです。この要素により、我々はすでに2025年に15の同盟国と45億ドル以上の契約を結ぶことが可能になっています」と述べ、世界の防衛市場におけるロシアの存在感の拡大を強調した。

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つまり、ロシアはウクライナとの3年に及ぶ戦争経験を兵器開発にフェードバックし、実戦経験、現場の兵士のニーズに応える開発、近代化を実施。それを顧客にアピールし、新たな武器取引にこぎつけている。戦闘機や戦車、自走砲を駆使し、正規軍同士が広範囲でやりあう大規模戦争はここ数十年、どの国も経験していない。被害は多いものの今回の戦争ではロシアが得意とする戦車や自走砲といった重火器の火力の必要性が再認識されている。また、無人機・ドローンという新たな脅威をまざまざと見せつけられ、その対処が課題となっている。

ロシアは長年、米国に次ぐ、世界2位の武器輸出大国だったが、近年、ウクライナとの戦争によって武器輸出は激減していた。米国の国防政策のシンクタンクであるジェームズダウン財団の報告によれば、2021年に146億ドルだったロシアの武器輸出額は2022年には80億ドルと半減、2023年には30億ドルまで減り、2024年には10億ドルまで減少したと分析している。

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どの国に何を買った

ロシアが言う、15か国の同盟国には少なくともイラン、アルジェリア、ベネズエラ、北朝鮮、そして、集団安全保障条約(CSTO)の加盟国であるベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギスの4カ国は入っているだろう。イランは最近、ロシアからSu-35戦闘機を受領しており、最大40機を受領すると言われている。Su-35の価格は1機あたり5000万ドル~とされ、40機の発注を予定しているのなら、それだけで20億ドル以上だ。この他、Mi-28攻撃ヘリ、そして、Su-35のパイロット訓練のためと思われるYak-130高等ジェット練習機も導入予定だ。アルジェリアは第5世代ステルス戦闘機Su-57の初の輸出先となった事を国営メディアが報じており、14機を発注、少なくとも契約額は10億ドル以上に上るだろう。最初のバッチは2025年中に納入される予定だ。

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また、ロシア製兵器の最大顧客であるインド。戦争の影響による納入遅延からロシア製兵器の依存率を減らしているが、今年2月に開催されたインドの航空ショー「Aero india」に出展したロソボロンエクスポート社が発表した声明によると、両国間で締結された武器取引契約は1947年から2005年の間に300億ドル、2005年から2025年の間に500億ドルに上り、インド軍の装備におけるロシアの永続的な役割を強調している。インドでは空軍のSu-30MKI戦闘機、陸軍のT-90S戦車、海軍のタルワー級フリゲート艦がそれぞれ軍の主力を務め、納入が大幅に遅れたが近年、S-400防空ミサイルシステムを調達している。まだ、しばらくはロシアから関連パーツを購入、または近代化を頼らざるを得ない。このような国は多い。

兵器を約束通り納入できるのか

ただ、懸念なのはロシアが契約通り、兵器を納入できるのか。ロシアが近年、武器輸出を大幅に減らしていたのは戦争の影響で輸出向けの兵器生産まで手が回らなかったからだ。陸戦メインのウクライナにおいて陸上兵器の損耗は激しく、現在、ロシアの戦闘車両工場はロシア軍のために24時間365日休みなしで稼働している。それでも生産できるのは戦車で年間300両ほどで、損耗に対し、生産は追い付いていない。一般商用車を戦場に送っているぐらいなので、現状、輸出する余裕はない。ただ、戦闘車両に関しては新規生産というよりも、近代化、バージョンアップを輸出する計画をしているとされる。ウクライナでドローンに対する脆弱性が露わになり、ロシア軍はケージ装甲や電子線装備など、様々な対策をとっており、実戦を元にこれらの改良システム・パッケージに力を入れているとされる。航空機や艦船は陸上兵器に比べれば、損耗率は低い、実際に戦闘機を納入しているように多少の余裕はあるだろう。

ただ、未だ、戦争中であり、ここまで、大幅に輸出を増やす事ができるのかは疑問だ。ロシアは既に停戦を見越し、増やした生産ラインを輸出に切り替える気なのだろうか。

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