ロシア,ベラルーシに10万機を生産するドローン工場建設へ

ロシアが同盟国である隣国ベラルーシに年間10万機を生産するドローン工場を建設する計画である事が分かった。表向きは同盟国であるベラルーシの「安全を確保」するためとしているが、実際はロシア軍向けのドローン工場と思われる。

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ベラルーシの国営メディアの報道によれば、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領はミンスクで行われたロシアの最新ドローンの展示会を視察。この際、ロシア大統領府の副首席補佐官マクシム・オレシュキン氏がルカシェンコ大統領にベラルーシ国内にロシアのドローンを生産する工場の建設を提案。大統領はこれを歓迎し、プロジェクトへの支持を表明、場所や技術協力を提供することを約束した。建設される工場は、年間最大10万機のドローンを生産できる規模を見込んでいる。ロシアとベラルーシは今後、工場の場所やその他の詳細について協議する予定だが、建設のスケジュールについては明らかにしなかった。ロシア側は、既存のロシアのドローン工場との相乗的な生産効果を確保するため、統一された技術プラットフォームを採用すると強調、つまり、ロシア規格と同じドローンがベラルーシで生産される事になる。

工場で生産されるドローンの用途は明らかにされていないが、オレシュキン氏は「ベラルーシが独自のドローン生産施設を持つことは非常に重要であり、それが同国の経済と”国家安全保障”の両方を強化することになる」と述べてた。”国家安全保障”というワードが含まれていたことから軍事ドローンの生産工場である可能性が高いと推測されている。

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ドローンの生産能力を拡大させているロシア

ロシア・ウクライナ戦争で無人機・ドローンは安価で効果的な兵器として重要な役割を果しており、両国ともに生産を増やしている。ロシア軍は2023年に14万機のドローンを受領したとされているが、2024年にロシアのドローン年間生産能力は10倍の140万機に達したと発表している。ロシア公営メディアTASS通信の今年1月の報道によればロシアは今後10年以内に48のドローン生産施設を設立する計画を発表しており、そのうち15の施設はすでに稼働しており、生産能力を飛躍的に増やしている。

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これらの生産施設はロシア国内に集中しているわけだが、兵器工場であるドローン施設はウクライナ軍の攻撃の標的になっており、しばしば、ウクライナ軍の長距離自爆ドローンの標的になり、打撃を受けている。ドローン工場はモスクワ、サンクトペテルブルク、ノヴゴロド、リャザン、ペルミ、ウドムルト、タタールスタンとサプライチェーンの関係でロシアの西側に集中している。ウクライナ軍の攻撃が及ばない極東ロシアに建設すれば安全だが、ロシア軍への供給など距離的なタイムロスは大きいため、どうしても西側に集中させる必要がある。一応、サハリンにも生産拠点はあるとされているが、極東の部隊、北朝鮮への輸出向けとかだろう。日本にとっては脅威だが。その点でいうとベラルーシにドローン工場を建設する事は理にかなっている。まず、地理的メリットが高く、ロシア、ウクライナとの国境沿いに工場を建設すれば、ウクライナの前線までの距離はモスクワよりも近い。ロシアとは鉄道網でも繋がっており、供給も問題なく、直ぐにロシア軍にドローンを納入できる。

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そして、次にウクライナ軍の攻撃を受ける心配がない。ロシア・ウクライナ戦争では侵攻初期にキーウに侵攻するロシア軍部隊に出撃拠点を提供するなど協力したベラルーシだが、公式には参戦はしていない。そのため、ウクライナ軍はベラルーシ国内を直接攻撃する事はできない。攻撃すればベラルーシの参戦理由になる。現状、劣勢なウクライナ軍にベラルーシ軍を相手にする余裕はない。

ロシア国内のドローン工場の建設ペースを考えれば、早ければ年内に稼働する可能性は高い。仮に停戦になってもベラルーシにとってはウクライナでの実戦で証明されたロシア製ドローン兵器を大量配備できる。隣国のポーランドやリトアニア、欧州NATOにとっては脅威となる。とはいえ、全く攻撃の心配がないかと言われてるとそうではなく、ベラルーシ国内には反ルカシェンコ政権のパルチザンがおり、ロシアによるウクライナ侵攻以降、鉄道施設の破壊や、駐留していたロシア空軍のA-50早期警戒機がパルチザンのドローンによって損傷させられている。

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