

ロシア連邦軍は、ウクライナによるドローン攻撃に対抗する目的で、1970年代に設計されたYak-52複座初等練習機に対し、散弾銃を装備させるという独自の改造を施している。
ロシア国営メディアであるRIAノーボスチは、昨年8月にソ連時代の1970年代に開発されたYak-52複座初等練習機が、無人航空機(ドローン)対策用途に近代化・改良される予定であると報じた。この改良を担当するロシアの航空機メーカー「アヴィアストロイテル設計局」のYak-52近代化プロジェクト責任者ドミトリー・モチン氏は、同メディアに対し、「現在、当設計局の優先プロジェクトの一つは、Yak-52練習機を”Yak-52B2無人機対抗機型”に近代化することです。現在、連邦航空輸送局からの耐空証明取得を目指しております」と述べた。同氏によれば、当該航空機の近代化コンセプトには、後部コックピットへの多機能ディスプレイを含む新型計器の設置が含まれ、情報筋は「航法・飛行装置、通信チャンネルを抑制する電子戦システム、レーダーが近代化される予定である」と述べた。
今回公開された改良型Yak-52B2の写真により、改修内容の一部が明らかになった。左翼下面には、ドローン検知・追跡用の小型レーダー、センサーポッド、コンピューターが搭載され、コックピットにはEFIS(電子情報システム)搭載の新型パネルが装備されるなど、最新の電子機器が追加された。ソ連時代の1970年代に練習機として開発・生産された同機には武装は施されていない。1982年にはUPK-23 23mm機関砲ポッド、UB-32 57mm無誘導ロケット弾ポッド、光学照準器を装備した攻撃機仕様のYak-52Bが開発されたものの、量産には至らなかった。今回の改修では、ドローン撃墜用の新たな兵器が追加された。機体の再設計や煩雑な工程を避けたのか、あるいは予算上の制約からか、機銃を翼や機首に内蔵するのではなく、右翼下に既存の銃を簡易的に取り付ける方式が採用された。取り付けられたのは12ゲージ半自動散弾銃「サイガ12」であり、写真からは、サイガがそのまま翼に取り付けられている様子が確認できる。
航空散弾銃でドローンを撃墜できるのか


サイガは、ロシアの銃器メーカーであるイズマッシュ社が開発・生産している、箱型弾倉式の12ゲージ半自動散弾銃である。この散弾銃は、AK-47ライフルを基に設計されており、その結果、高い耐久性と信頼性を有することで知られている。軍、法執行機関、民間向けに幅広く利用されており、そのモジュール性、半自動機構、そして多弾数による高い火力が特徴であり、近距離における制圧力は非常に高い。ただし、この制圧力はあくまで地上においてのみ有効である。
そもそも、散弾銃は空中での使用を想定したものではない。サイガは半自動式であり、拡張マガジンを使用することで最大12発と、一般的な散弾銃よりも装弾数が多い。ドラムマガジンを使用すれば20発となり、強力な火力を有する。しかし、Yak-52の翼に取り付けられたサイガは横向きに設置されているため、ドラムマガジンは使用できない。つまり、装弾数は最大12発と推測される。地上であれば弾切れしてもマガジンを交換すればよいが、飛行中のマガジン交換は不可能である。したがって、1回の飛行で僅か12発でドローンを仕留めなければならない。散弾はライフル弾よりも投影面積が大きいため標的に当たりやすく、搭載された射撃管制コンピューターが標的情報を生成するため、照準は自動化されているかもしれないが、航空機で飛行するドローンを12発で迎撃するのは容易ではない。散弾の有効射程はせいぜい50~100m程度であり、高速の航空機にとっては極端に短い。また、空気抵抗による減速が早く、風や速度の影響を受けやすく、航空射撃には不向きである。ドローンは軽装甲であるが、ウクライナの長距離ドローンはセスナほどの大きさのものもあり、空中で発射された散弾では威力が弱く、軽装甲であっても効果が薄いと思われる。


ウクライナ軍も対ドローン対策としてYak-52航空機を運用している。その手法は、後部座席の副操縦士が携行したライフルでドローンを攻撃するという古典的なのものであり、実際にこの方法でロシア軍の無人偵察機オルラン10の撃墜に成功している。Yak-52は失速速度が100~140km/hと低速であるため、低速で飛行するドローンの捕捉追跡が可能である。また、複座型であり、キャノピーがスライド式で手動開閉できる構造も、このような撃墜方法を可能にした要因である。これまでに、ウクライナ軍の1機のYak-52がこの手法により少なくとも8機のドローン撃墜に成功している。ロシア側は近代化改修と航空散弾銃の搭載という対抗策を講じているが、その効果については今後の検証が必要である。