

ジェラルド・R・フォード級原子力空母の二番艦であるジョン・F・ケネディ(CVN-79)はほぼ完成しているが、一番艦のジェラルド・R・フォード(CVN-78)の時と同様、昇降機(エレベーター)部分の課題に直面し、完成が遅れると見られている。
The US Navy is still grappling with elevator problems on its new Ford-class supercarriers
ビジネスインサイダーの報道によれば、米海軍のジェラルド・R・フォード級原子力空母の二番であるジョン・F・ケネディ(CVN-79)はほぼ完成しているが、昇降機(エレベーター)の問題で完成が遅れる可能性があると海軍の将校や当局者が今週明らかにした。同級の一番艦であるジェラルド・R・フォードでもエレベーター部分で躓き完成が遅れた経緯があり、同じ課題に直面した形だ。「ジョン・F・ケネディの建造はほぼ95%完了しており、契約に基づく納入日は2025年7月です」と海軍当局者は、8日火曜日に行われた上院軍事委員会海軍力小委員会の原子力艦建造状況に関する公聴会に先立つ共同声明で述べた。「しかしながら、その日までには相当のプレッシャーがかかると見ている」と述べ、当局者はケネディのいくつかの技術、具体的には先進的な兵器エレベーターや航空機発射・回収システムに課題があると指摘。納入予定日には間に合わない可能性に言及した。
電磁モーターを備えた「先進型兵器用エレベーター(AWE)」、「先進着艦拘束具 (AAG)」、「電磁カタパルト (EMALS)」は同級の一番艦ジェラルド・R・フォード(CVN-78)の開発と建造中にも発生した問題であり、主に新しいシステムと機能に関する統合問題が原因で遅延とコスト超過に直面した。特にAWEはフォードの配備遅延に大きな影響を与えた。電磁式はこれまでの油圧式よりも複雑で、制御ソフトウェアやセンサーの統合には多くの課題が生じ、ドアの開閉、重量制御、位置制御に関するバグや不具合が多く発生。当初、フォードの11基の兵器用エレベーターは2015年の納入を予定していたが遅延。2017年5月に同艦が海軍に引き渡された際はエレベーターは未搭載のままで、同年7月に就役している。11基の兵器用エレベーターのうち最初の1基が届いたのは就役から一年以上経った2018年12月だ。その後、他のエレベーターも段階的に納入されたが、11基全てが同じように機能する単一の設計ではなく、11基それぞれを個別に設計・プログラムする必要があった。完全な認証や安全確認が終わらないままでは、弾薬を扱う上で危険が伴うため、実戦配備や訓練での制限が出た。最後のエレベーターの認証が終わったのは2021年12月だ。最初の納入から実に3年を要した形だ。フォードは2022年10月に初めて実戦配備された。
この時の教訓を受けて、二番艦であるジョン・F・ケネディでは建造方法の見直しを行っていた。フォード級空母プログラムマネージャーのブライアン ・メトカーフ海軍大佐は2023年4月のフォーラムで「ケネディのエレベーターの建造はフォードより遥かに順調」と述べていた。さすがにフォードと同じような数年に及ぶ遅延はないと思われるが、ケネディも遅延は避けられそうにない。フォード同様、エレベーター未搭載のまま納入されるのだろうか。ジョン・F・ケネディ(CVN-79)はニミッツ級空母の一番艦ニミッツ(CVN-68)の代艦になる予定だ。1975年に就役したニミッツは現在、就役中の空母としては米国最古の航空母艦であり、世界でも最古の現役航空母艦となっている。ニミッツ級空母
の耐用年数は約50年。2025会計年度に戦力から外され、2027年に原子炉の撤去や核燃料棒の抜き取りが開始される予定だ。
先進型兵器用エレベーター(AWE)
ニミッツ級原子力空母の油圧式兵器用エレベーターは、毎分30mの速度で約4,500kgの貨物を運搬できる。一方、フォード級空母で採用されたは「先進型兵器用エレベーター(Advanced Weapons Elevators,AWE)」は毎分45.4mの速度で最大約11,000kgの貨物を運搬でき、これにより、より速く、効率的に兵器(弾薬やミサイルなど)を甲板上に運ぶことが可能になっている。