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中国の脅威に対抗するため鹿屋基地に6機のMQ-9Bシーガーディアン無人機配備へ

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©General Atomics

防衛省は2029年までに、鹿児島県の海上自衛隊鹿屋基地に6機のMQ-9Bシーガーディアン無人機を配備する計画を発表しました。これは、周辺海域の監視能力を大幅に強化し、南西諸島における中国軍の活動拡大という高まる脅威に対応するための重要な一歩となります。

防衛省発表:滞空型UAV(シーガーディアン)の鹿屋航空基地への配備について

防衛省の計画によれば、最初の2機のMQ-9B無人機は2027年度に配備が開始され、開発・生産元であるジェネラル・アトミックス社による試験運用が海上自衛隊の監視下で行われます。その後、2028年度にはさらに2機が追加配備され、2029年度までに合計6機体制が確立される予定です。将来的には、鹿屋基地は最大10機の無人機を運用する能力を持つとされています。

既存の試験運用と今後の展望

海上自衛隊はすでに、2023年5月から2024年9月にかけて青森県の八戸基地でMQ-9Bの飛行試験を実施しており、同基地では海上保安庁が先駆けてMQ-9Bの運用を開始しています。スケジュールは未定ですが、鹿屋基地での運用状況を基に海上自衛隊は八戸基地にも将来的に最大10機のMQ-9B無人機を配備する計画です

防衛省は、将来的には合計23機のMQ-9Bシーガーディアンを調達する計画であり、これは海上自衛隊の長時間・高高度無人偵察機(MALE-UAV)部隊の中核を成すことになります。MQ-9Bの配備は、南西諸島周辺海域を含む広範囲な海域における情報収集、監視、偵察(ISR)能力を劇的に強化し、中国人民解放軍の動向などの潜在的な脅威を監視するための重要な手段となります。

海上保安庁も現在、3機のMQ-9Bを運用しており、北九州基地にも運用拠点を設けています。今年10月以降には2機が追加され5機体制となり、さらに4機の追加も計画されており、2028年度以降は9機体制となる予定です。海上自衛隊の機体と合わせると、日本は合計32機のMQ-9Bを保有することになります。将来的には、海上自衛隊と海上保安庁の各MQ-9B飛行隊が連携を強化し、情報共有や兵站整備能力の拡充を図ることで、日本の海洋安全保障を維持・強化していくことが期待されています。

MQ-9Bシーガーディアンの能力

©General Atomics

MQ-9Bは、ジェネラル・アトミックス社が開発したMQ-9リーパーシリーズのUAVであり、海洋監視および沿岸警備に特化した設計が施されています。その主要な特徴と能力は以下の通りです。

  • 基本性能:
    • 全長:11.7m
    • 翼幅:24m
    • 最大速度:390km/h
    • 最高飛行高度:40,000フィート(約12,000m)
    • 連続飛行時間:40時間
    • 航続距離:9260km以上 ※一度の飛行で日本の排他的経済水域(EEZ)の外周を一周できる長距離飛行能力
    • 操縦方式:衛星通信を介した遠隔操作により、遠隔地の拠点からでも運用が可能
  • センサー能力:
    • 逆合成開口レーダー(ISAR)イメージングモード
    • 自動識別システム(AIS)
    • 高解像度の光学・赤外線カメラ
    • フルモーションビデオセンサー
    • マルチモード海面検索レーダー
      これらのセンサーにより、数千平方海里を超える海域における水上艦艇をリアルタイムで検出・識別し、昼夜を問わず、悪天候下でも上空からの海洋偵察・監視を可能にします。取得されたデータはデータリンクを介して、艦艇や有人機とリアルタイムで共有することができます。
  • ペイロード能力と多任務性:
    • 内部ペイロード:363kg
    • 外部ペイロード:ボディに1か所、翼に8か所のハードポイントを備え、合計1,814kgのペイロード能力。
      高度にモジュール化された機体設計により、ミッションに応じた様々な装備を搭載することが可能です。対艦兵器や対潜水艦戦用の装備を搭載し、無人攻撃機としても運用する能力も有しています。現在のところ、海上自衛隊と海上保安庁はMQ-9Bの武装化を計画していませんが、海上自衛隊の機体については今後の安全保障状況によっては将来的な武装搭載の可能性もあると思われます。

MQ-9Bの価格は1億ドル以上とされ、F-35ステルス戦闘機に匹敵する高額な投資となります。無人機とはいえ、消耗品として扱える機体ではないため、慎重な運用が求められます。2023年10月以降、イエメンのフーシ派によってアメリカ軍のMQ-9リーパーが20機以上撃墜されたと報告されており、高価な無人機の運用には、潜在的なリスクと対策が常に考慮される必要があります。

MQ-9Bシーガーディアンの導入は、日本の海洋防衛戦略における重要な転換点となります。南西諸島における中国の海洋進出が活発化する中、これらの高性能無人機は、日本の情報収集・監視能力を飛躍的に向上させ、抑止力としての役割を果たすことが期待されます。海上自衛隊と海上保安庁の連携強化も相まって、日本の海洋安全保障体制はより強固なものとなるでしょう。しかし、その高額なコストと運用上のリスクを考慮し、効果的かつ慎重な運用が求められます。

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