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米海軍特殊部隊チーム6、北朝鮮潜入作戦2019の概要

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2019年初頭、ドナルド・トランプ大統領(第一次政権)の直接承認のもと、米海軍特殊部隊SEAL Team 6の精鋭部隊であるレッド中隊が、北朝鮮への極秘潜入作戦を敢行したとニューヨーク・タイムズ紙が報じ、世界に衝撃を与えました。この作戦の目的は、北朝鮮の最高指導者である金正恩委員長(当時)の通信を傍受するための盗聴装置を設置し、緊迫した米朝核交渉において、米国が情報面で優位に立つことにありました。

How a Top Secret SEAL Team 6 Mission Into North Korea Fell Apart

この極秘作戦は、2018年6月のシンガポールでの史上初の米朝首脳会談を皮切りに、2019年2月のベトナム・ハノイ、そして同年6月の板門店での会談と、計3回にわたるトランプ大統領と金正恩委員長による朝鮮半島の非核化交渉が繰り広げられていた時期に行われました。特に、今回明るみに出た作戦は、2019年2月のハノイ会談の直前に行われたとされており、その重要性が浮き彫りになります。極めて機密性の高い任務であったため、作戦実行にはトランプ大統領の直接承認が不可欠であったと報じられています。

作戦概要

作戦に投入されたのは、米海軍特殊部隊の最精鋭部隊であるSEAL Team 6、通称「Devgru」のレッド中隊でした。SEAL Team 6は、一般的に知られるネイビーシールズとは異なる、ネイビーシールズの中から選抜された隊員で構成される別組織であり、米軍内の特殊部隊の中でも陸軍のデルタフォースと並ぶ最高ランクの部隊とされています。特筆すべきは、このレッド中隊が2011年5月2日に、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン殺害を実行した部隊であるという事実です。この歴史的任務を遂行した部隊が北朝鮮に派遣されたことからも、今回の作戦がいかに重要かつ困難なものであったかがうかがい知れます。

金正恩氏の所在する平壌近郊に盗聴装置を設置する必要があったため、SEAL Team 6は黄海側から北朝鮮への上陸を試みたと推測されています。原子力潜水艦で北朝鮮近海まで航行し、そこから2隻の「SEAL輸送潜水艇(SDV)」に乗り換え、夜間に北朝鮮沿岸に接近しました。具体的な潜入範囲は不明ですが、8名の隊員は北朝鮮の厳重な国境警備網を突破し、盗聴装置を設置した後、痕跡を残さずに撤退する計画でした。北朝鮮国内に協力者がいたかは不明ですが、部外者が民間人に偽装して北朝鮮国内を移動することは極めて困難です。

しかし、上陸の過程で予期せぬ事態が発生します。隊員たちは漁船に遭遇し、発覚を恐れた隊員は乗船していた民間人数名を射殺。遺体が浮上しないよう肺を刺して海に遺棄したと報じられています。

米軍の特殊作戦においては、通常、上空から無人機による支援が行われ、周囲の脅威や人の有無を監視するイメージが強いですが、これは中東やアフリカといった武装組織を相手にした非対称戦争であり、相手がレーダーなどの高度な防空システムを持たないことが前提となります。北朝鮮は最新鋭ではないものの高度な防空網を構築しており、また、黄海周辺は中国の防空監視網にもかかる恐れがあるため、無人機による支援は困難でした。

そのため、この作戦はリアルタイムの映像支援なし、そして通信傍受の懸念からか、通信遮断の状況下で実行されたと報じられています。事実上、ほぼ支援なしの上陸作戦であり、夜間と冬季という悪条件下であったことも重なり、隊員のナイトビジョンのサーモカメラは冷えた漁船の人影を検知できず漁船の接近を見過ごしてしまった可能性も指摘されています。想定外の事態に直面し、作戦は中止。部隊は撤退を余儀なくされました。

この作戦は、米議会の情報監視委員会への報告なしに実行されたとされており、その法的妥当性について問題が指摘されています。その後、バイデン政権下でこの作戦に関する調査が行われたとされていますが、その内容は依然として機密扱いのままです。また、作戦中に発生した民間人の死亡は「予期せぬ不幸な事故」として、交戦規定の範囲内で処理されたとされており、作戦は失敗に終わったにもかかわらず、関与した一部の隊員はその後昇進していることも明らかになっています。

もしこの作戦が成功していたならば、その後の北朝鮮の非核化や現在の国際情勢は大きく変わっていたかもしれません。また、この件について北朝鮮がどのような反応を示すのかも注目されますが、現時点では公式なコメントは出ていません。トランプ政権も公式なコメントは出しておらず、トランプ氏自身も報道に対し「何も知らない。今初めて聞いた」と述べ、作戦への認識や関与を公的に否定する姿勢を示しています。未だ多くの謎に包まれたこの極秘作戦は、米朝核交渉の陰に潜む諜報戦の過酷な実態を浮き彫りにするものであり、その全容解明が待たれます。

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