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台湾空軍、F-5シリーズ戦闘機が半世紀以上の運用を経て正式退役

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台湾国防部

台湾の防衛力に重要な節目が訪れました。台湾空軍は長きにわたり主力戦闘機として運用してきたF-5シリーズであるRF-5E偵察機とF-5F戦闘機を正式に退役させ、半世紀以上にわたる輝かしい歴史に幕を下ろしました。これは、現代の脅威に対応するための台湾空軍の近代化戦略における重要な一歩となります。

感動的な退役式典とF-5の最後の飛行

7月4日、花蓮空軍基地では、台湾空軍司令部主催のもと、F-5シリーズの退役式典が盛大に執り行われました。この式典では、第5空軍航空団所属のRF-5E偵察機3機とF-5F戦闘機2機が5機編隊を組み、基地上空を力強く飛行する最後の雄姿を披露しました。着陸後、機体は消防車の放水による「水門」をくぐり抜け、格納庫前へと滑空しながら帰還。これは、F-5シリーズ戦闘機が台湾における戦闘即応任務を正式に終え、栄誉ある退役を果たしたことを象徴する感動的な瞬間でした。この光景は、集まった多くの関係者や市民の心に深く刻まれ、F-5シリーズへの感謝と敬意が表されました。

冷戦が生んだ名機:F-5シリーズの歴史と台湾での役割

F-5シリーズは、冷戦期の1950年代にアメリカのノースロップ社が開発した第三世代の音速戦闘機です。初期モデルであるF-5A/Bフリーダムファイターは、レーダーを搭載しないなど高度な電子機器を排除した、小型・軽量かつ安価でシンプルな設計が特徴でした。この設計により、整備や訓練が容易であったため、アメリカの同盟国の中でも特に財政力に乏しい途上国に多くの機体が輸出され、西側諸国の防衛力強化に貢献しました。1970年代に入ると、レーダーを搭載した改良型のF-5E/FタイガーⅡが登場。この改良型は、韓国や台湾を含む複数国にライセンス生産が許諾され、全世界で2,000機以上が生産されるベストセラー機となりました。

台湾空軍では、1970年代からF-5シリーズを主力戦闘機として運用を開始。初期のF-5A/Bは1965年から運用が始まり、その後、台湾の航空機メーカーであるAIDC(漢翔航空工業)がライセンス生産のもと、F-5E/Fを1973年から1986年までの間に合計308機(F-5E型242機、F-5F型66機)製造しました。全盛期には5個飛行隊、最大336機のF-5シリーズが運用され、訓練機、偵察機、さらには囮機(デコイ)など、幅広い役割を担いました。その優れた機動性と高い信頼性から、長年にわたり台湾の領空防衛の要として活躍し、台湾海峡における複雑かつ緊迫した情勢の中で、その役割を十全に果たし、台湾の安全保障に多大な貢献をしてきました。

老朽化と近代化の必要性:F-5からF-16V、そして国産機へ

しかし、半世紀以上にわたる運用の結果、F-5シリーズは老朽化が進行し、近年では事故も多発するようになりました。これに伴い、より高性能な新型機への更新が喫緊の課題となっていました。台湾空軍は近年、防衛力の近代化を加速させており、その一環としてアメリカ製の最新鋭戦闘機F-16Vの導入を積極的に進めています。F-5E/Fは、2020年頃から戦闘即応任務から訓練・偵察・待機任務へと移行し、2024年には訓練部隊からもほぼ退役していました。残る現役機はRF-5E偵察機のみとなっていましたが、今回の退役をもって、全てのF-5シリーズがその任務を終えました。

F-5シリーズの退役は、現代の多様化する脅威、特に中国からの増大する軍事的圧力に対応するための近代化戦略の一環として位置づけられます。今後、偵察任務は、最新のMS-110ポッドを搭載したF-16Vや、無人航空機MQ-9Bが担うことになります。また、練習機としては、台湾が独自に開発した国産の高等ジェット練習機T-5ブレイブイーグルがその役割を引き継ぎます。台湾は、中国の軍事的脅威に対抗するため、既存の約141機のF-16A/BをF-16Vに改修する大規模なアップグレードプログラムを進めるとともに、新たに66機のF-16Vを追加購入しています。新型のF-16Vの最初のバッチは、2025年3月に納入されており、台湾空軍の戦闘能力は飛躍的に向上しています。

新たな時代へ:F-5の遺志を継ぐ台湾空軍

F-5シリーズの退役は、単なる旧型機の交代に留まらず、台湾空軍が新たな時代へと移行する象徴的な出来事です。これまでF-5シリーズが長きにわたり担ってきた領空防衛、訓練、偵察といった重要な任務は、F-16VやT-5ブレイブイーグル、MQ-9Bといった最新鋭の航空機に引き継がれます。これにより、台湾の防衛力はさらに強化され、地域における安定と平和の維持に貢献していくことになります。F-5シリーズの果たした功績は、台湾空軍の歴史に永遠に刻まれ、その遺志は次世代の航空機とパイロットたちによって受け継がれていくことでしょう。

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