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プーチンに懐柔されるトランプ、トランプに翻弄されるゼレンスキー:ウクライナ停戦交渉は混迷を極める

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Whitehouse

10月16日、アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン露大統領は約2時間半にわたってロシア・ウクライナ戦争の停戦に向けた電話会談を実施しました。そして、その翌日にはトランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、プーチン氏から提示された領土割譲案を突きつけ、停戦を迫ったとされます。トランプ氏は9月にウクライナがロシアから領土を奪還できると発言していましたが、180度、意見を変えた形です。

ロシア政府は、米露首脳の電話会談を「非常に率直で有益なもの」と評価しました。両首脳は、ウクライナ情勢だけでなく、二国間の経済協力、トマホークミサイルの供与問題、さらにはメラニア・トランプ氏によるウクライナの子どもたちの親との再会活動など、多岐にわたる議題について話し合ったと報じられています。会談後、トランプ大統領はハンガリーのブダペストで米露首脳会談の開催を発表し、ウクライナ戦争の終結に向けた進展を強調しました。しかし、この「進展」が何を意味するのか、その実態はより複雑な様相を呈しています。

ゼレンスキー大統領との会談とトランプ氏の姿勢転換

プーチン氏との会談の翌日、トランプ大統領はホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談しました。ゼレンスキー氏は、ウクライナへのトマホーク巡航ミサイルの供与を求めて訪米しましたが、トランプ氏はこれを拒否。その代わり、プーチン氏から提示された領土割譲案を突きつけ、停戦を迫ったとされます。このトランプ氏の態度は、わずか1ヶ月前の発言とは180度異なるものでした。9月には、ウクライナがロシアから領土を奪還できると発言していたトランプ氏の突然の意見変更は、ウクライナ、欧州NATOに大きな衝撃を与えました。

プーチン氏が提示した停戦条件

プーチン氏は、トランプ氏との電話会談で、ウクライナがドンバス地域全体(ルハンシク州とドネツク州)をロシアに譲渡することを停戦の前提条件として提示しました。現在、ロシア軍はルハンシク州の全域とドネツク州の7割を支配しています。その代わり、南部のザポリージャ州やヘルソン州の一部支配地域の返還を提示しました。

これに対し、トランプ氏は現行の戦線での戦闘停止、すなわち双方が現在の戦線を維持し、追加の領土譲渡を行わずに戦闘を停止することを提案しました。しかし、プーチン氏は現行の戦線ラインという案は支持しつつも、この提案を拒否し、ウクライナがドンバス地域全体を譲渡しない限り、停戦には応じないと表明しました。ドンバス地域の支配は、2022年のウクライナ侵攻におけるロシアの主要な戦略目標の一つでした。8月のアラスカでの直接会談でも同様の案が提示されており、今回の提案は一部地域返還の譲歩が見られたものの、基本的な条件は変わっていません。また、アメリカが検討していたウクライナへのトマホーク巡航ミサイルの供与についても、ロシア側は長射程ミサイルの供与を行わないよう警告を発しました。

トランプ・ゼレンスキーの会談

翌17日に行われたトランプ氏とゼレンスキー氏との会談は、緊迫した雰囲気の中で進められました。トランプ氏はゼレンスキー氏に、ドンバス全域をロシアに引き渡すよう迫り、南部のザポリージャ州やヘルソン州の一部支配地域の返還を提示したとされます。ゼレンスキー氏は、トマホーク巡航ミサイルの供与を求めて訪米しましたが、プーチン氏の警告に従ったのか、トランプ氏はこの要請を拒否しました。

ゼレンスキー氏は一貫して、領土割譲を含むロシアの停戦条件案を拒否。すると、両者は口論となり、トランプ氏が前線の情勢を示す地図を脇に投げ捨てる場面もあったと報じられています。トランプ氏はこれまで危機的と指摘してきたロシア経済についても「好調だ」という見立てを示し、現行の戦線ラインで停戦することが賢明だと促したとされます。

トランプ氏の言動の一貫性の欠如と欧州各国の反発

しかし、これらトランプ氏の言動は、先月9月の発言と真逆です。トランプ氏は9月の国連総会に合わせて行われたゼレンスキー氏との会談後、SNSに「ウクライナとロシアの軍事的・経済的状況を深く理解し、ロシアが被っている経済的困難を目の当たりにした結果、私はウクライナが欧州連合の支援を得て、元の領土をすべて奪還し、最終的な勝利を収める立場にあると確信しています。時間と忍耐、そして欧州、特にNATOからの継続的な財政的支援があれば、この戦争が始まった当時の国境を回復することは十分に可能です。なぜなら、ロシアは本来ならばわずか一週間以内にでも勝利できたはずの戦争を、3年半以上もの間、その目的を見失ったまま戦い続けているからです。」と投稿しています。この発言の一貫性の欠如は、トランプ氏がプーチン氏に翻弄され、停戦の時間稼ぎに利用されているのではないかという疑念を生んでいます。

8月のアラスカでの直接会談後、トランプ氏はゼレンスキー氏に同様の停戦条件を伝えていましたが、この時はフランスのマクロン大統領やドイツのショルツ首相など欧州NATO首脳が同席し、トランプ氏に対してロシアの停戦条件をそのまま受け入れることに反発しました。彼らは、停戦条件はゼレンスキー氏も交えて協議すべきだと促し、三者会談を行うことを決定しました。しかし、その後、プーチン氏は停戦交渉に応じず、トランプ氏も苛立ちを見せ、新たにウクライナへの武器供与を示唆するなど、強硬な姿勢を見せていましたが、今回の電話会談で意見を180度転換しました。

欧州各国からも、トランプ氏の姿勢に対する強い反発が出ています。ポーランド首相は「ウクライナに領土譲渡を迫ってはいけない」と述べ、欧州連合(EU)やフランスのマクロン大統領は、ウクライナと欧州が和平交渉に参加する必要性を強調し、ブダペストでの米露首脳会談にゼレンスキー氏を出席させるべきだと主張しています。

ブダペスト会談の不透明性とロシアの時間稼ぎの可能性

しかし、このブダペストでの会談が実際に開催されるかどうかも不透明です。プーチン氏は8月の会談で三者会談に合意していたにもかかわらず、結局、その後、ロシア側が様々な理由をつけて拒否しています。このことから、今回もまたロシアが時間稼ぎに利用する可能性は否めません。複雑に絡み合う思惑の中で、ウクライナ戦争の停戦は依然として遠い道のりのように見えます。

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