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米海軍が新型のAIM-174B長距離空対空ミサイルを配備後初めて岩国で公開

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岩国基地で展示されたAIM-174Bミサイルを搭載したF/A-18スーパーホーネット(US Navy)

先日開催された岩国基地のフレンドシップデーにおいて、米海軍は配備後初となるAIM-174B長距離空対空ミサイルを一般公開した。このミサイルは、2024年7月のRIMPAC演習で初めて公にされた新型兵器である。

2025年5月4日に山口県の岩国で開催された「海上自衛隊/米海兵隊 岩国航空基地フレンドシップデー2025」。そこで、米海軍はAIM-174B長距離空対空ミサイルを配備後初めて一般公開した。第5空母航空団(CVW)第102戦闘攻撃飛行隊(VFA)所属のF/A-18Fスーパーホーネット戦闘機の翼下に2発搭載された状態で地上展示された。AIM-174Bは2024年6月にスーパーホーネットへの搭載試験が目撃され、翌7月の環太平洋合同演習RIMPAC2024で初の配備が確認された新型兵器である。今回の岩国基地での一般公開は初と見られ、軍事的緊張が高まるインド太平洋地域において、米軍の能力向上を周辺国に強調する意図的な動きと解釈されている。

AIM-174B

SM-6ミサイル(US Navy)

AIM-174Bは、2024年7月に初めて配備が確認されたアメリカ海軍の長距離空対空ミサイルである。レイセオン社が開発したこのミサイルは、完全な新兵器ではなく、主に米海軍艦艇で運用されている実績のあるスタンダードミサイル6(SM-6)艦対空ミサイルを航空機搭載用に改修したものである。SM-6は、米海軍のイージス戦闘システムに統合された艦艇発射型の長距離防空ミサイルで、固定翼機、ヘリコプター、ドローンに加え、対艦巡航ミサイルや終末弾道ミサイルに対する高い防空能力を持つ。艦載仕様では最大速度マッハ3.5、最大射程370kmを発揮する。高高度・高速の航空機から発射されるAIM-174B空対空ミサイル型では射程460kmとも言われるが、米海軍の公式発表では240kmである。

AIM-174Bは860kgと、従来の最長射程空対空ミサイルであったAIM-120D(152kg)を大幅に超える重量を持つ。海上発射型から固体燃料ロケットブースターを取り除き、戦闘機搭載用に軽量化されているもののこの重量である。岩国基地で展示されたスーパーホーネットでは2発の搭載が確認されており、少なくとも2発の搭載が可能と考えられる。参考までに、AIM-120であれば最大10発が搭載可能だ。F-35への搭載はサイズ的にウェポンベイには収まらず、運用にはステルス性能の低下が伴うため、可能かどうかは不明である。

AIM-174Bは、米軍戦闘機で使用されるAIM-120 AMRAAM中距離空対空ミサイルの射程を補完する目的で開発された。最新のAIM-120Dの最大射程は180kmであり、2004年にAIM-54Cが退役してから2024年にAIM-174が登場するまで米軍で最も長射程の空対空ミサイルであった。しかし、ロシアや中国をはじめとする各国は、早期警戒管制機(AWACS)や空中給油機といった戦略的に重要な航空資産の迎撃や、敵機に対する先制攻撃のため、射程200kmを超える長距離空対空ミサイルの開発・配備を進めていた。ロシアは射程200km超のR-37、さらに改良型の射程400kmのR-37Mを実戦配備し、ウクライナ戦線で200kmを超える距離からウクライナ軍機(Mig-29、Su-27)を空中戦で撃墜したと報告されている。中国は射程200km超のPL-15を開発配備している。先日インド・パキスタン間の紛争において、パキスタン空軍のJ-10CとJF-17がPL-15を使用しインド空軍機と交戦したとされる(戦果は不明だが、これがPL-15初の実戦使用)。中露は実戦データを基にミサイルをアップデートしていくと見られ、中国は射程400km以上のPL-17も開発中である。

米中ロの第5世代戦闘機に搭載されるAESAレーダーは探知距離が300kmを超えるなど、レーダー技術の進展に伴い探知距離が延伸している。そのため、航空戦においては、敵機を早期に探知し、先制攻撃をかけることが勝敗を左右する重要な要因となっている。この状況において、米国は中ロに対して遅れをとっていたものの、実績のあるSM-6を基盤とする新しい兵器により、ようやくその差を縮めた。さらに、ロッキード・マーティン社は射程200km、最高速度マッハ5以上の長射程空対空ミサイルAIM-260 JATMを開発しており、開発が順調に進めば2026年にはAMRAAMに代わって配備される見込みであり、これにより米国の航空戦力は一層強化されると予想される。

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