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米軍がベネズエラ沖で麻薬密輸船を撃沈!国際法上の懸念も

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中南米の麻薬カルテルによる薬物密輸の取り締まりを強化するため、米海軍がカリブ海、特にベネズエラ沖の公海上で展開していた作戦において、麻薬密輸を行っていたとみられる船舶を攻撃し、撃沈する異例の事態が発生した。この攻撃により、乗員は全員死亡したと発表されている。密輸船の撃沈するのは国際的にも異例だ。

国防省とホワイトハウスの公式SNSは9月2日、米軍がカリブ海上(ベネズエラ沖)の公海上で、麻薬密輸に関与していた疑いのある船舶に対し、「キネティック攻撃」を実施し、乗員11人が死亡したと発表した。この船舶は、「Tren de Aragua(TDA)」という著名なギャング組織と関連があるとされている。

これに対し、トランプ大統領は自身のSNSを通じて詳細を公表した。「今朝早く、私の命令により、米軍はSOUTHCOM(アメリカ南方軍)の責任区域内で、確実に特定されたトレン・デ・アラグア(TDA)の麻薬テロリストに対して運動エネルギー攻撃を実施しました。TDAは、ニコラス・マドゥロの支配下で活動する指定外国テロ組織であり、米国および西半球全域で大量殺人、麻薬密売、人身売買、暴力行為およびテロ行為の責任を負っています。この攻撃は、テロリストらが国際水域で違法麻薬を輸送し、米国に向かっている最中に行われました。結果として、11名のテロリストが戦闘で死亡しました。米軍に被害はありません。この件を、米国に麻薬を持ち込もうと考える者への警告としてお受け取りください。注意せよ! この件にご注意いただきありがとうございます!!!」と述べ、今回の作戦が対テロ戦争の一環であることを強調した。

軍事行動の懸念も

今回の船舶撃沈については、賞賛の声が上がる一方で、国際社会からは多くの懸念の声も上がっている。特に問題視されているのは、「国際水域における軍事行動」と「攻撃対象が罪を犯した可能性のある民間人と見られる集団」であった点である。このため、「国際法上の問題」や「軍事的越権行為ではないか」といった批判が国際法学者や一部の国々から噴出している。

  • 公海上での「密輸船」攻撃(撃沈・撃墜)は、原則として国際法上グレー、あるいは強い違法性を帯びると見なされる。その根拠は以下の通りである。
  • 国連海洋法条約(UNCLOS): 公海上では「航行の自由」が原則であり、海賊船・奴隷貿易船・無国籍船を除いて、武力による拿捕や撃沈は原則として認められていない。
  • 麻薬取締り条項(国連麻薬条約、UNCLOS第108条): 麻薬取引に関与する船舶については「拿捕・臨検」は可能とされているが、いきなり撃沈するまでの権利は規定されていない。
  • 国際人道法(戦時法): 戦争状態でない限り、軍事的な攻撃(殺傷を目的とする武力行使)は通常違法とみなされる。

したがって、今回の米軍による撃沈は「通常の麻薬取締り」の範疇を超えており、国際法違反の疑いが強いと国際法学者や一部の国から厳しく批判されている。

紅海やオマーン湾を含む中東海域では、米軍をはじめとした有志連合が武器密輸船の取り締まりを行っているが、通常、密輸船の取り締まりは拿捕や停船を促すための警告射撃に留まり、撃沈に至った事例は皆無である。好戦的と見られがちなイスラエル軍でさえ、密輸船の摘発作戦で撃沈したという事例はほとんどないとされる。

米軍の説明によれば、今回の攻撃は事前の諜報活動によって麻薬密輸船であると特定され、警告に応じず、さらに武装している可能性があったため、これらを理由に「正当防衛的行動」として撃沈を正当化している。また、アメリカは麻薬カルテルを「テロ組織」と指定しており、今回の行動は麻薬取締りではなく、国家安全保障上の脅威に対処する対テロ作戦の一環であるという理屈で正当化を図っている。しかし、麻薬や武器を積んでいたという確証がないまま攻撃したとされており、その確認には残骸の調査が不可欠である。

一方、ベネズエラのマドゥロ政権は、この撃沈に関する映像を「合成映像ではないか」と非難し、今回の米軍の行動を「主権侵害」であると強く警告を発している。アメリカは現在、麻薬カルテルの取り締まりを名目に、カリブ海のベネズエラ沖にワスプ級強襲揚陸艦イオー・ジマ、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦3隻、攻撃型原子力潜水艦1隻など計9隻の艦艇と4000人規模の海兵隊を派遣している。これに対し、反米のマドゥロ大統領は激しく反発しており、今回の撃沈事件は両国間の対立を一層深める可能性を秘めている。

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