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米海兵隊が沖縄に配備した無人艇ALPVとは?

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USMC

沖縄防衛局は、これまで一時的に配備されていた米海兵隊の無人艇ALPV(Autonomous Low-Profile Vessel)を、無期限で常駐させる方針を地元自治体に通知しました。この決定は、インド太平洋地域における米海兵隊の「分散型海上作戦」(DMO)の強化、特に中国を念頭に置いた抑止力および偵察・監視能力の向上に貢献するとともに、有事における離島への補給支援といった物流配送の役割も期待されています。

米無人艇「ALPV」1隻を沖縄に無期限配備 5日に防衛省側が地元に伝達へ

防衛省沖縄防衛局は5日、米海兵隊が当初8月までとしていた試験計画日程を調整する方針を固め、昨年10月から沖合での運用試験を行うため地元に配備しているALPVを、沖縄の米軍那覇海軍基地に常駐させる方針を固めたと地元自治体に通知しました。米海兵隊は2024年10月に沖縄へ2隻のALPVを配備。翌年1月には第12沿海兵站大隊(12th MLR)に部隊教育を実施していました。

ALPVとは?

ALPVは、食料、水、燃料、弾薬、医療品、修理部品、その他の装備など、沿岸部での多様な物資輸送のために開発された自律型物流配送システムです。その高いペイロード能力は、さまざまな任務に対応できる拡張性を提供します。この技術は、第12海兵沿海連隊やその他の前方展開MEF部隊のような紛争地域で活動する即応部隊への継続的な支援に不可欠です。

ALPVの主要スペック

ALPVのスペックは以下の通りです。

  • 全長: 約19.75メートル(65フィート)
  • 幅: 2.41メートル
  • 喫水: 1.47メートル(満載時)
  • 貨物搭載量: 2,000~4,627キログラム(約2~4.6トン)
  • 貨物室サイズ: 長さ8.84メートル × 幅1.22メートル × 高さ1.22メートル
  • 航続距離: 最大2,000海里(約4,074キロメートル)を14.8キロメートル/hの巡航速度で航行可能

この喫水の浅さと、最大自由面0.61メートルの低い設計により、視覚、レーダー、赤外線からの検出が極めて困難となっています。小型ながらも4,000キロメートルを超える航続距離を持ち、グアムから沖縄を含む第一列島線内を広範囲に航行できます。衛星通信による遠隔操作はもちろんのこと、地点誘導によるウェイポイント型航法による自律航行も可能であり、将来的にはAIによる完全自律航行への対応も予定されています。

多岐にわたるALPVの用途

ALPVは、その高いペイロード能力により、多様な任務への拡張性を持っています。

  • ISR(情報・監視・偵察)活動: 光学/赤外線センサーや電子戦装備を搭載可能で、沖縄近海や東シナ海における中国艦艇の追尾・監視を、その低視認性を活かして秘密裏に行うことが想定されています。
  • 物資輸送: 離島に展開する部隊への食料、弾薬、医療品など、様々な物資の配送にも利用可能です。既に荷降ろし訓練も実施されています。
  • 将来的な武装化: 現状は武器を搭載していませんが、将来的な武装化も検討されており、対艦、対地、対空ミサイル(サイズによるが4~8発程度)の搭載が可能です。
  • 多機能化: 小型ドローンや無人艇の母艦機能、小型機雷の敷設機能、音響掃海装置、電子戦(EW)機能なども検討されています。将来的には米海兵隊の海兵沿岸連隊(MLR)の機動打撃能力と連携し、「分散型戦闘(Distributed Maritime Operations)」に貢献できるよう多機能化される予定です。

戦略的意義と今後の展望

現在、ALPVは2隻のみの配備ですが、比較的低コストかつ小型であるため多数配備しやすく、紛争時は使い捨ても想定しています。抵抗コストながら高い機動力とペイロードを有しています。同時に複数の任務を担える点で、従来の哨戒艦艇を補完する役割が期待されており、今後の運用実績次第では、その配備数は増加する可能性があります。

ALPVの沖縄常駐は、インド太平洋地域における米海兵隊のプレゼンスを強化し、有事の際の柔軟な対応能力を向上させるための重要な一歩と言えるでしょう。特に、中国の海洋進出が活発化する中で、その対中抑止力としての役割は極めて大きいと考えられます。同時に、離島防衛における補給支援能力の向上も、日本の安全保障に寄与する側面があります。無人艇ALPVの今後の運用とその戦略的展開は、地域の安全保障環境に大きな影響を与えることになるかもしれません。

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